★騎士団長視点★
引き続き騎士団長視点となります
急ぎ駆け付ければ、崖下に馬車が転落していた。
「隊長、まだ息があります!」
「急いで助け出すんだ。回復魔法が使える者を屋敷に呼んでおけ」
ドレスを着た若い女性。すでに意識を失っていた。
何とか身元が分かるものはないかと荷を探せば手紙が出てきた。
「……侯爵令嬢リリアリス様……」
光属性だったのか。だから、流刑地に追いやられたのか?
それにしても、このような状態になって、位置を知らせ助かるために魔法を使ったのか。
光魔法に辺りを照らすだけではなく、狼煙のようなる使い方があったとは。発想もすごいが、それをこんな状況になって思いつきすぐに実行できるのがすごい。
それにしても……暗くなってからの連絡手段として非常に有効なのではないか?
光魔法を使った連絡方法は今までもあった。点滅させ位置や暗号を伝えるものだ。だが、木々の間から光を見ようとするとあまり離れていては障害物が多くて難しくなる。
打ち上げれば相当遠くからも見える。……緊急時に応援を頼みたい時など、非常に有効な手段なのでは?
光魔法ならではだ。火魔法では火球が落下し森が焼ける心配があって使うことはできないだろう。
いろいろな場面を想像してみる。早急に連絡さえ取れれば状況が変わっていただろう経験もしてきた。
本当にこれはすごいことだ。
確か団員に光属性の者もいたはずだ。本来は攻撃魔法を使える者を騎士に迎えるのだが、剣術が優れていたため登用した。
一度、使えるか試してみるか。
考えている間に、騎士たちがリリアリス様を崖から引き揚げ、屋敷に運んだ。回復魔法使いが駆け付け治療を行う。血で汚れた服を侍女が着替えさせ、ベッドに寝かせたところでアルフレッド様が到着した。
「リリアリス嬢は大丈夫なのか?」
「はい。回復魔法で傷の手当は終わりました。ただ、体力が失われておりますので、目が覚めるまでにはもう少しかかるだろうということです」
「そうか……」
アルフレッド様がベッドに近づいた。
「魔物に襲われたのだろうか。申し訳ないことをした……王命でこのような場所に嫁がされて……」
小さくため息をつくアルフレッド様の背を見ながら、副団長の言葉を思い出していた。
嫁がされるほどの悪事を働いた悪役令嬢……。かわいそうなのはアルフレッド様の方だという、副団長の言葉を。
アルフレッド様が、ベッドサイドに立つと息をのんだ。
「……か……かわいい……」
ごくりと唾を飲み込む音も聞こえる。
確かに、見た目はとても可憐でかわいらしい女性だ。
大けがをして衰弱しているため、やつれてはいるが、健康を取り戻したらどれほど美しく輝くことか。
「……こんなにかわいいのに……かわいそうに。はぁー……」
アルフレッド様がベッドサイドに膝まづいて、手を伸ばしてリリアリス様の前髪をそっと撫でた。
あれ?
もしかして、気に入っちゃいましたか?