★騎士団長視点★
騎士団長視点となります
アルフレッド様が王命により、妻を娶ることとなった。
王都のタウンハウスで育てられた都会の侯爵令嬢。
このような流刑地と呼ばれるような場所に、侯爵令嬢がなぜ?
「どうせあれですよ~。よくあるじゃないですか」
副団長はうわさ話が好きなお調子者だ。実力派確かだし、団員から親しみやすい性格と慕われている。私が厳しい分、副団長がガス抜きをしてくれるため必要な人材だが……。私に対してもこの調子で遠慮がない。
「悪役令嬢ってやつですよ。なんでも、妹は皇太子殿下の婚約者だそうですよ。嫉妬してひどいことして断罪されたに決まってますよ」
確かに、その可能性が一番高いだろう。
「かわいそうですよねーアルフレッド様。ただでさえ流刑地って呼ばれる場所に追いやられて苦労してるのに。そのうえ、どうしようもない我儘な妻を迎えないといけないなんて……はぁー」
同意したいところだが、まだどのような女性か分からないのに想像で何かを言うわけにもいかないと、返事もせずに黙っていた。
副団長は返事がないことなど気にせずに言葉を続ける。
「でもそんな我儘な侯爵令嬢は、すぐにここの生活に根を上げて王都に戻っていくかもしれませんね?なら実害は少ないのかな?……いや、でも王命が下ってすぐにこちらに向かって出発したってことは、追放扱いなんですかねぇ。王都には戻れない可能性もあるのか……あー、やだなぁ。もうそろそろ到着しますよねぇ?」
よく動く口だなぁと感心する。
だが、言っていることはもっともだ。
魔物の恐怖におびえ、冬は厳しく、娯楽の少ないここでの生活は、都会育ちの我儘な令嬢には厳しいだろう。
早々に王都に帰りたいというかもしれない。断罪されて王都を追放されたのであっても、ここよりはましな街はいくらでもある。屋敷から早々に出ていくことだろう。
「あ、でもアルフレッド様はどうせ屋敷にいないから、どうでもいいか?大変なのは屋敷で働く使用人ってことですよね」
「流石に、多少は屋敷にいてもらわなければ困るとは思うが……今は魔物が活性化しているし仕方がないだろうな……」
公爵だというのに。先頭だって冒険者を引き連れて魔物討伐に向かう。
小さな村や町の領民にとっては、領主に惨状を陳情するよりも冒険者ギルドに魔物討伐の依頼を出す方が早い。
迅速な対応をするにはギルドの方が都合がいいのだ。領民のことを思えばのアルフレッド様の判断。
領主が動く場合、書類に会議に予算組みに人員選抜に……大がかりな討伐と同じような手順を踏まなければいけない……たとえ10名程度の騎士の派遣だったとしても。その間に被害が広がってしまうだろう。
「うーん、悪妻を貰ったら、ますますアルフレッド様が屋敷に帰ってこない気がする!」
副団長の言葉に苦笑していると、慌ただしく部屋のドアが叩かれた。
「隊長、大変です!街道沿いに謎の現象が起きています」
「何?街道?魔物か?」
「いえ、魔物が出たかどうかも分かりません。ただ、まばゆい光が上がっていると」
「街道に?光魔法ということか?馬鹿な。夜は魔物が出るというのに、野宿でもするつもりか?急ぎ人を集めろ。第1隊と第2隊で向かう。他の部隊もいつでも出られるように準備をしておけ」
外に出ると、森の木々よりも高く光が上がっていた。
「なんだ、あれは……光魔法じゃないのか?」
高く上がった光が輝きを失うと、再び同じように高い位置に光が上がっていく。
日光魔法を火球のように飛ばしている?そんなことが可能なのか?
どれほどの魔力が必要になってくるんだ?それに、いったい何のためにそんなことをしている?
野宿のためにあたりを明るくしているわけじゃないよな。




