掃除はしちゃダメダメ、光魔法も自制自制
「うわー、すごい、きれいになったね」
埃っぽさがなくなり、部屋の空気がすっきりとしている。
ん?
もしかして、さっきの使用人の咳……喘息の原因は埃?アレルギー持ちだったり?埃やダニ……アレルギーの、可能性……?
……。
ひいぃっ。
ダニとか嫌かもぉ。撲滅は無理なのはわかってるけど、ダニだらけなの想像してぞっとする。
暗いだけで掃除が行き届かないは仕方がない。けど、明るくする方法があるのだから、掃除の間だけ明るくしたらいいよね。
「ありがとうございます」
掃除を誉められたサラちゃんがにこりと笑った。
すかさずサラちゃんの手を取る。
「この調子で、ほかの部屋も廊下も明るくして全部掃除しましょう!」
「「え?」」
サラとマーサの声が重なる。
「リリアリア様、今からですか?掃除をしろとおっしゃるのでしたら、掃除婦を集めて道具も準備しませんと」
そうなの?
「光魔法で明るい間に手際よく掃除を済ませるのですよね?でしたら事前に担当わけも必要となりますし」
小学校の掃除当番みたいなもの?箒係、雑巾係とかあったなぁ。いや、それとも廊下係、教室係とか場所の担当わけ?
「マーサ、屋敷を全部一度にというわけじゃなく、今日はこの部屋とこの部屋とか順番にしていけばいいわよ?」
なぜかサラが申し訳なさそうに頭を下げる。
「申し訳ありません。私の光魔法では、リリアリス様ほどの長時間明るくしていられませんので……」
そんなの、私が明るくするから大丈夫だと言おうとして、口を閉じる。
またやらかすところだ。
使用人の仕事は使用人の仕事。
いくら侯爵家では私の仕事にされていたからと言って、ここでも同じように過ごしてはダメなんだ。
掃除を手伝おうとして部屋を追い出された。それもすごい剣幕で。怒ってはいないけど、半分泣かれた。マーサとサラを戸惑わせ困らせた。
おかしな話で、実家ではこき使われて。ここでは何もするなと言われて。何もしないということのほうが苦痛だなんて。
違う、何もするなと言われたのではない。使用人の仕事は使用人がするということで、私は私にしかできない、公爵夫人としての仕事をするべきなんだろう。
でも、3年間の仮の夫人にできることって何?
って、3年後の生活のための準備くらいか。あとは邪魔しないのが一番の仕事なのかも。うーん、義母って何してたっけ?侯爵夫人の仕事って何だった?着飾って舞踏会に行き……社交!社交が仕事なら、することないじゃーん!
「しかし、本当にすごいですねリリアリス様の光魔法は。こんなに長時間明るい日光魔法初めて見ました」
サラが昼光色のLEDランプを見上げて感心している。
あ、そうだ。できることあったわ。光魔法の研究。そのためにサラにも協力してもらおうと思ったんだった。
「ねぇ、サラはどれくらいの光魔法が使えるの?」
基準がわからない。