口出し
「さっさとやめちまえよ!」
「そうだそうだ。いくら剣の腕がたったって、攻撃魔法の一つも使えないんじゃ、足手まといなんだよ!」
んん?
これは……いじめというやつなのでは……?
建物の陰から様子をうかがうと、3人の騎士が一人の騎士を取り囲んでいた。全員私と同じくらいの若い子だ。
「ほら、やめるって言えよ!」
「悔しかったら、攻撃してみるか?」
「剣がなきゃ何もできないだろ?光属性の役立たずが!」
いじめ、だめ!
それだけじゃない。
「何をしているの、あなたたち!」
思わず声を上げる。
「なんだ?女がどうしてこんなところに?」
女?
公爵夫人だって知らない?騎士団長が知っていたのは私を救出したからなのかな?
確かに、今私が来ているのは、カイと町にでて買ってきたありふれたワンピースだ。とても貴族女性が身に着けるものではないから、分からないのも仕方がない。
「3人で寄ってたかって、恥ずかしいとは思わないの?」
私の言葉に、3人がイラついたような顔になった。
「はっ。恥ずかしい?何がだ?恥知らずはこいつのほうだ!」
3人の一人、赤髪の騎士が、いじめていた背の高い騎士の胸をどついた。
「そうそう、光属性の役立たずのくせに、騎士を続けるっていうんだからな!攻撃魔法も使えないクズのくせして!」
「バカなの?」
何を言ってるんだろうね。
「はぁ?バカだ?バカはどっちだ。何も知らないんだろう、どうせ!」
あきれてものも言えないとはこのことか。
いや、言うけどさ。
「あのさ、さっき、この子に剣の腕がたつって言ってたわよね?騎士団長は剣術の稽古をしているのも見たわ。ということは、騎士には剣の腕が必要ってことでしょう?剣もだめ魔法もだめなら役立たずだといわれても仕方がないかもしれないけれど、全然役立たずじゃないんじゃないの?」
ぐっと赤髪の男が口を閉じた。
「違うな!騎士なら剣も攻撃魔法も使えるのが当たり前だ!剣だけなんて落ちこぼれ必要ないんだよ!」
別の騎士があざ笑う。
「ふぅーん。ばかばかしい」
剣だけだって十分な戦力になるなら、騎士になったっていいじゃない。
っていうかさ、鍛え上げられた筋肉をバカにするな!
見ただけでも光属性の背の高い騎士の筋肉はすごい。攻撃魔法が使えない分、めちゃくちゃ努力してるのが一目でわかるくらいに。
それに引き換え、周りを取り囲んでいた3人はどれほど剣の腕を磨いているというのだ。筋肉が制服の上から見ても、見当たらないわ!
っていうかさ、そもそも素人の私でさえ、必要を感じてどうしたら戦力増強できるか、騎士たちの力の底上げができるかなと考えてたくらいだよ?
それなのに、騎士同士で足の引っ張り合いしてるとか。それも、優秀な騎士を追い出そうとする輩がいるなんて。
優秀な筋肉を追い出そうとするなど、許さんっ!
「ばかばかしいだと?俺たちは騎士だぞ?ばかにするなら女だからと容赦しないぞ!」
だめだ。こいつ。




