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★ギルド長視点★

引き続きギルド長視点です

「【火炎】」

 火球魔法を飛ばすしか能がなかった俺は、その時初めて別の火魔法を使った。腕に火魔法をまとわせ黒い獣を殴り続けた。

 牙で傷つけられ、鋭い爪で切りつけられ、後ろ足でけり倒されても。

 痛みなどすっかり忘れ、何度も何度も殴りつけた。

「うわああああ!」

 弱くて、弱くて、いくら殴りつけても黒い獣は倒れない。

 ただ、火魔法はきいているようで注意が俺に向いた。そのすきに、騎士たちが黒い獣を倒してくれた。

 俺は意識を失い、気が付けば回復魔法で傷は治され公爵家のベッドの上にいた。

 目を開くと、涙が落ちる。

「俺は……弱い……」

 目を覚ました俺のもとに騎士団長が来て頭を下げた。

「アルフレッド様を危険にさらして申し訳ありません」

「いや、謝るのは俺のほうだ……」

 騎士団長は首を横に振った。

「頼む、俺を鍛えてほしい」

 騎士団長に3か月みっちり鍛えてもらいギルドに向かった。

「ふぅん、多少はましな顔つきになったな」

 ギルド長に頭を下げた。

「冒険者として、一緒に魔物討伐に行かせてほしい」

「いくら公爵とはいえ、命の保証はできないぞ」

「ああ。だが、ギルド長は冒険者をできる限り守ってくれるんだろう?」

 ギルド長が俺の頭を乱暴に撫でた。

 俺は、それまでの人生で頭を撫でられることがなかったから、心底驚いた。

「なぜ、頭を撫でるんだ?」

 わからなくて思わずつぶやくと、ギルド長が俺の頭を今度は軽くたたいた。

「今更、公爵の頭を撫でるなど不敬だとか言うつもりか?残念だな。冒険者になった限りは、全員俺の子供みたいなもんだ。子供の頭を撫でるのは当たり前だろう」

 もうすぐ14歳になる俺を子ども扱いするのか?

 俺は……この地で……家族と呼べる人たちを手に入れられたのか?

「俺も……守りたい」

 公爵領のすべての人たちを。俺を受け入れてくれた屋敷の人たち。俺を守ろうとしてくれた騎士たちに、子ども扱いするギルド長も。

「力が……ほしい……」

「おう、鍛えてやるさ」

 ギルド長は俺を連れてギルドにいた冒険者たちに声をかけた。

「こいつはレッドだ。今日から冒険者になるっつうが、強くなりたいんだと。誰か鍛えてやってくれ」

 レッド?

「ふぅん。レッド、ひょろっちぃな。得物はなんだ?魔法だけってことはないだろ?剣か?弓か?」

「まずはもっと食って肉をつけろ。それから走れ。足腰が弱くちゃいざって時逃げることもできねぇぞ」

 ギルド長の言葉に、次々に冒険者たちに声をかけられ、背中や肩をたたかれる。

 それから5年。18歳になった時だ。

「参った。俺よりもあっという間に強くなっちまうんだもんなぁ。5年かぁ、早いもんだ」

 俺は、ギルド長を超えた。

「俺も年かな」

「まだ35だろ?」

「35か。よし、引退、引退」

「は?」

「レッド、今日からお前がギルド長だ」

「はぁ?な、何を言ってるんだ、俺なんかまだまだだ。俺がギルド長じゃ冒険者の皆も納得しないよ」

「ははは。何言ってんだ。俺より強いお前がギルド長になるんだ。誰も文句は言わないさ。冒険者たちをギルド長としてお前が守ってやれ。お前は守りたいから強くなったんだろう?」

 そうだ。確かにそうだけど……。ガルダがギルド長を引退するのが悲しくて、その原因を作ったのが自分だということがやるせなくて、引き留めたいけどできないし、もっと一緒にいてほしいなんて子供みたいなわがままなんて余計に言えなくて。

 俺はどんな表情をしていたのか。ギルド長がニヤッと笑って背中をばんっと強くたたいた。

「ま、レッドのことは俺が守ってやる。お前が俺よりは強くなったとはいえ、子を守るのはいつだって親の役目だ」

 ボロボロと、不覚にも泣いてしまった。

「老いては子に従えっていうだろ、俺が守ってやるよ」

 恥ずかしくなって憎まれ口をたたくと、大きな手で、頭をガシガシと乱暴に撫でられた。

 その日から、アシュラーン公爵アルフレッドは、ギルド長レッドとの二重生活が始まった。

 とはいえ、すでに冒険者と公爵と二重生活をしていたので、さほど何かが大きく変わることはなかったのだが。


 俺の生活が、大きく変わるのはそれから2年がたち、20歳になった時だ。

 結婚することになった。

 まさか、望まない結婚が、あんなことになるなんて……。

 公爵が冒険者になってギルド長やってるのもたいがいだが、どこの侯爵令嬢が冒険者になるなんて思う?




('◇')ゞもうお分かりでしょうが、ギルド長はあの人です。

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「研ぎ師ミチェは頑丈です~転生幼女の大冒険~」 こちらの作品もよろしくお願いします。てとてと歩いてぽてっと転びすぴぴと寝ます。
― 新着の感想 ―
[一言] ギルド長ギルド長! 貴方が王家の忌み児なら、光魔法しか使えない侯爵家の令嬢で、王家から睨まれている僻地に住む公爵家へ嫁がされる娘の立場なんて想像に難く無いでしょ(苦笑)
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