マントは部屋着じゃなかったか!
「あ!そうだ!奥様!」
使用人の一人が部屋にある棚から布を取り出してきた。
「こちらで巾着を縫ってはいかがでしょう」
手渡されたのは、厚手の緋色のハンカチが2、3枚作れそうな大きさの布だ。まぁ、こんな厚手の布でハンカチを作るようなことはしないけど。
「これは?」
布を出してくれた女性がうなづいた。
「アルフレッド様のマントを作った布の切れ端です。穴が開いたときなどの補修用にとってるのですが、アルフレッド様はマントを着用することがほとんどないので」
「え?」
会ったときに全身を隠すようにマントを身に着けていたけどな?
あれは、私に会うために普段は身に着けないマントを特別に身に着けていた?……屋敷の中なのに?マントなんてコートみたいな位置づけだよね?
何のために?体形を隠すため?ぽっちゃり体形を見られたくなかった?
それってどうして?普通は、見られたくないのは見せたくない、見せたくないのは醜いと思われたくない、醜いと思われたくないのは好かれたい……?
「え?まさか、まさか……」
アルフレッド様は、少しは私に良く思われたいってこと?だから、私がドレスをマーサたちに着せられてオシャレさせられたように、マントでオシャレをしたってこと?
「いえ、あの、そうじゃないですっ!」
使用人が否定の言葉を口にした。
ひぃっ!まさか、私、無意識に口に出してた?
「穴が開いたときの補修というのは、その、マントを新調できないほど貧しいということではなくて……」
「そ、そうです、奥様のドレスも穴が開いても繕って着てくださいということでもなく……」
あ、なんだ。そうじゃないって、そういうこと?
私が声をあげたのが、繕ってまで使い続けるってところにびっくりしたと思われたのか。
穴ふさいだら使えるなら使えばいいし、共布で繕えるなんて贅沢だよ?
というか……。私、新しいドレスを欲しがるような感じに見えてるの?
「私、普段はドレスを着ないのよ。アルフレッド様がマントをつけないのと同じ」
今日はマーサたちにドレスを着せられ化粧をされ、髪を結われたけれど。
……まずいぞ。浪費妻だとか悪いうわさが経ったら困る。
「そ、それから、ほら、私、縫物得意だから、ドレスに穴が開いたら自分で直しちゃうのよ?」
まぁ侯爵家にいるときはドレスじゃなくてぼろ布のようなかろうじて服の形をしていたワンピースとかだったけども。
「え?あの……」
使用人が疑いの目を向けてきたけれど、私がすいすいと巾着を縫う手元を見て首をかしげながらも納得してくれたかな?
いや、もう話題を変えよう。
「マントと同じ布で巾着を作れば確かにいいかもしれませんね。アルフレッド様の温石入れって分かりやすいでしょうし。ああ、そうだ、少しだけ刺繍もしてみましょうか。では、必要な分の布をいただいていくわ」
ハンカチ1枚分ほどの布を切って、立ち上がる。
「刺繍は部屋でするわね。巾着づくり、根を詰めすぎないように休憩を取りながらね。無理は禁物よ?」
ふへへとごまかすように笑って部屋から逃げ出す。
はぁー。浪費妻だと思われる危険がある。ドレス脱いで着替えよう。化粧も落とそう。話はそれからだ!うん。




