刺繍は筋肉にあう。(は?)
いや、でも愛さないと言われてるしなぁ。
とはいえ、私は相撲取り系筋肉を愛でていこうと決めたからなぁ。
……。頭の中には、力士が土俵入りの時に使用している化粧まわしが浮かんだ。
立派な刺繍がしてあるあれ。
うん、きっとあの体系なら似合う。ん。なんか力士の筋肉も素敵に思えてきた私としては、どうしてもっと相撲中継とか見なかったのか後悔しかない。これじゃあ、立派な化粧回しが作れない。どんなデザインがあったんだろう?虎?龍?富士とか?
どれも捨てがたいな。……でも、この世界ではだめなのでは?龍の代わりにドラゴン?虎の代わりに……?
魔物のこと知らなさすぎだなぁ。って、違う違う、魔物の刺繍は喜ばれる?逆にだめなのでは?あれ?
だめだ、全然わからないぞ。
「何を刺繍したらいいのか、分からなくて。アルフレッド様は何がお好きなのかしら?」
分からなければ聞けばいいかなと。
「アルフレッド様は……えーっと」
使用人たちは顔を見合わせて動きを止めてしまった。
「そ、そうですわ!カイなら知っているんじゃないでしょうか?」
「あと、そう、騎士団長がご存じかもしれません!」
「ギルドで聞き取りをしたほうが分かるかも!」
あ、そうだった。そうだった。
いくら私が愛でようと思っていても、恋路の邪魔になってはいけない。
そうか、カイと騎士団長とギルドっていうのはギルド長のレッドのことかな?いろいろ複雑な恋愛模様が。……妄想だけど。
え?元ギルド長のガルダ様?妄想に入れるわけないでしょうが!恐れおおくも筋肉神様なるぞ!ふんすっ!
と、いうわけで。
何もアルフレッド様のことに関して私に話ができなかった使用人たちが申し訳なさそうな顔をしているのを見ながら微笑む。
「刺繍した小物を贈るのはやめておきますわ、こうして必要なものを縫う時間のほうがはるかに私には大切ですもの」
と、いいつつ化粧まわしは作ってみたいと思っている……いや、プロレスラーが入場の時に羽織っているガウンのほうが……。ガウンから見える胸筋。ぐふっ。それなら刺繍だけではなく羽を飾ったり、石を縫い付けたり……。
「も、申し訳ありません。私たちの手が遅いばかりに……」
あああ、もう、私はまた言葉選びを間違えた?
「手伝わせていただいて感謝しているのよ?先ほど、アルフレッド様は何が好きか尋ねたでしょう?気が付いたのです」
いやぁ、私のばかぁ!そりゃ私が使用人よりてきぱきと縫物したら嫌味っぽいよぉ!
「アルフレッド様が好きなのはこの領地であり、領地に住む皆ではないかと。ということは、アルフレッド様が大切にしている領地のためにこうして縫物をすることは、刺繍をしたハンカチを贈るよりも価値があるのではないかと……」
口にしてみて気が付いたけどさ、綺麗に刺繍したハンカチなんてくその役にも立たないよね。
妹に頼まれて王太子に贈るためのハンカチに刺繍してたけど、20センチ四方の布の、8割が刺繍よ?ワンポイントとかじゃないのよ?もう、手も拭けない、口も拭けない、いや、拭けないことはないけど刺繍糸で拭うようなものだよね……。そんな実用性のないハンカチいる?何に使うの?
刺繍の腕を見せ合うコンテストじゃないんだから。
いや、もしかしたらコンテストみたいなものだったのかな?見せびらかしてたとしたら、作風が変わったって気が付かれる可能性が高まるのでは?
まぁ、とにかくハンカチ1枚刺繍する時間があれば、何枚巾着が縫えることか!時間を無駄にするようなことはできないよ。
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コミックス1巻発売からしばらく経ちました。
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