特技です!違うって、別に筋肉の名前を言うことができるって話じゃないよっ!
◆◆視点戻る◆◆
「奥様に手伝っていただくわけにはっ!」
使用人たちが作業部屋にこもって温石を入れるための巾着を縫っているところに突入!
「緊急事態ですし、人の手はいくらあっても邪魔になりませんでしょう?」
うん。
さすがに使用人の仕事を取るのはよくないというのは学んだ。
でも今回は別だよ。緊急時。
そういううと、使用人たちは顔を見合わせてそれ以上何も言わない。
てなわけで、4人が縫物をしているテーブルに私も腰かけて、早速巾着縫いをスタート。
ふぅ。やっと見つけた。私ができる仕事。
はっきり言って……ギルドに行かずにじっと屋敷にいても、やることがなくてすごく退屈なの!
侯爵家にいたときは使用人以下の扱いだから、4時間睡眠が日常。24時間戦えますか状態で働いてたからね。
いや、4時間睡眠はたくさん寝れたほうなんだよ?嘘みたいでしょ?子供虐待もいいとこだよ。
生まれたばかりの新生児が寝てばかりだとか幼児が昼寝が必要とかは常識かもしれないけど、小学生も中学生も大人よりも睡眠時間は長く必要なんだよっ!10歳で10時から12時間は必要。15歳でも8時間から10時間は必要なわけよ。それなのに!寝かせないのは、虐待!大人と同じ睡眠時間じゃ中学生や高校生だって足りない!
のに、4時間って……もうあれ、殺人未遂罪でいいんじゃないかな?うん。現代日本なら訴えるのにな。
それはさておき、そんな社畜も真っ青な暮らしをしてたからね、いざ時間ができて自由にしていいよと言われても。
のんびり過ごせばいいよと言われても。
……はっきり言おう。
退屈すぎる!
筋肉鑑賞以外の娯楽がこの世界なさすぎなのよ!テレビも無ぇ、電話も無ぇ……ゲームもそれほど種類が無ぇ。
ん?そうだ、ゲームだよ、ゲーム。何か避難生活で必要って、特に子供とかは恐怖心からトラウマになるといけないから、娯楽を用意する必要もあるんじゃない?
大人は、まぁこういうちょっとした縫物の内職とかしていれば時間は過ぎていくだろうけど。
そういえば、雑貨屋のご主人も冬の家の中にこもっている間は退屈しのぎに木彫りの人形を作っているといったよね。
あ、逆に奥さんは暗いと細かい縫物ができなくなるから婚礼に使う衣装は冬場はできないと言っていたなぁ。
暗いとできないってことは、これからはLEDで明るくできるはずだから問題ないでしょう。
生産性が高まるんじゃない?ご主人は仕事用の小物づくりに戻れるよね。……とはいえ、あの木彫りの技術ももったいないよなぁ。王都で売れそうだし。
「すごいですね、奥様」
「手慣れていますね……!」
「私が1つ縫う間に、3つも……!」
「しかも縫い目がそろってます」
使用人たちの言葉にハッと意識を現実に戻す。
いけないいけない。考え事してた。いや、考え事しながらも、単純作業って手は動くんだよね。
耐久性とかデザインとか考えなくていい、巾着の形になればいいだけの単純な直線縫いだけなら、考え事しながらでも縫える。
なんなら、目をつぶっていても縫えるんじゃないかな。どれだけ侯爵家で縫わされてきたか。そして、どれだけ自分の服を繕ってきたか。破れても破れても新しい服が支給されるようなこともなかったしね。さすがにこれ以上は無理!って時は、縫わされていた大量の縫物からそっと拝借させていただいたけれど、全く気が付かれなかった。本当は縫わなくてもよかったものを縫わされてただけなんじゃないかな?と思わなくもなかったけど……。こうして身について今役に立っているなら、良しとしよう。
「奥様、どうしてそれほどまでに早く綺麗に縫うことができるのですか?」
使用人の問いに、うっと口ごもる。
私は、侯爵家でひどい扱いを受けていたことを隠すことにしたんだ。
アルフレッド様の元に不要な令嬢を押し付けたなんて知られないために。
いくら、流刑地だと呼ばれていると皆が知っていたとしても……。本当に流刑地扱いされているという具体的な話を聞けば傷つくだろうから。




