冒険者登録の受難
っていうか俺は受け付けないってどういうこと?だいたい、本当にギルド長が受付業務するの?読んだ小説や漫画では受付業務をギルド長がするなんてないよ?やたらとスタイルのいいかわいい受付のお姉さんがしてくれるよ?目の前にいるこのお姉さんみたいな人が……。
「まあ!女性の冒険者は大歓迎よ!登録受付ね!おいで、いらっしゃい」
優しい笑顔に吸い込まれるようにしてお姉さんとカウンターへと向かう。
護衛のカイが私の後ろについてくるのはわかる。
なぜギルド長が受付のお姉さんの後ろについてくるのか。そんなに私が冒険者登録するのが気に入らないの?
「登録は簡単。こちらの用紙に名前と属性魔法を書くだけです。ランクはFからスタートして、依頼をこなしていくとランクアップします」
それからお姉さんは簡単にギルドの説明をしてくれた。Bランクから強制依頼があるだとか、依頼達成の条件だとか。漫画みたいだなぁと思いながら、右耳から左耳に聞き流す。
だって、魔物討伐系は私には関係なさそうだし。
登録用紙に名前を書く。
「えーっと、り、り、……」
待てよリリアリスなんて珍しい名前、すぐに公爵夫人だってバレちゃうんじゃない?
そうそう、カイに言ったように、アリスでいいか。
アリスと書いたら、ギルド長がぷっと笑った。なぜ笑う!顔を上げると、目が合った。
「アリスか。俺はレッドだ」
なんか、笑いをこらえている表情で名乗られてもね。失礼しちゃう。っていうか、この世界もアリスって名前は女児のイメージあるのかな?似合わないと思われてる?くっ。もう少しひねった名前にすればよかった。
「はい。アリスさんですね。魔法属性は、光……」
あ。
お姉さんの笑顔が固まった。
「あの子光属性みたいだぞ」
「冒険者としてやってくのは厳しいだろう
後ろで囁かれる人の声……。
なんと!光属性魔法は冒険者ギルドでも歓迎されないとは。
って、当たり前か。もし歓迎されるなら「お前は冒険者になれ!」とか言うよね。
でも、別に私は冒険者として大成する野望もないんだよね。
離婚したあとに生活できるだけの収入が得られればそれでいいんだ。冒険者では稼げないなら別の方法を考えるだけだ。
貴族令嬢としてのマナー教育などは8歳までの基本しか学んでないけれど、読み書きができる。前世知識で計算はこの世界の誰よりも得意なはず。となれば家庭教師の道もある。
ただ、家庭教師を必要とする人々は貴族だったり貴族との繋がりがある大商人だったりするから。リリアリスを知ってる人に見つかってめんどくさいことになりたくないから、最終手段だと思ってる。
他には計算が得意だからどこぞの商会で雇ってもらえないかな。ギルドの依頼をこなす間に伝手ができるといいなぁ。
とはいえ……。