内臓はモツだけでなくですな
唐辛子の粉出てきた。冬のスープにちょっと落として飲むんだってさ。
人によって辛さへの耐性が違うから、茹で卵に振る塩やラーメンに振る胡椒みたいに個人個人で使うのが普通らしい。
なるほど。料理の味付けの位置づけではないのか。薬味みたいな位置づけか。
料理長にお願いしてまた肉を切ってもらい特性ハーブと唐辛子を肉に塗り込んで焼いてもらった。
「これは、いけますね」
うん、臭みは気にならなくなった。って、筋切り頼むの忘れてたから食べにくいのと、やっぱり硬いんだよな。肉。
口の中でほろほろ崩れるとか、口の中で溶けちゃいましたみたいなのが誉め言葉になる日本の肉基準からすると、噛み応えがあって、顎が付かれるくらい硬い肉ってのは……。
酒が、欲しくなるよね!
酒飲みながらかじるには、濃い味ぐらいがいいのだよ。
って、おつまみ作ってるんじゃなかったわ。
「これ、チキンナゲットみたいに細かく切って混ぜたら食べやすくなるんじゃないですかね?」
料理人の一人がひらめいたとばかりに口を開いた。
えー、この硬さが酒のつまみに……って、訓練の合間に騎士が食べる差し入れだったっけ。濃い味はおかず代わりになってパンにはさんで食べたらいいでしょ。あと水を一杯飲む。辛すぎるとだめだから辛みは抑え気味で。
チキンナゲットじゃなくて、ミンチにすればハンバーグ……。
「そうね、とりあえずミンチにしてハーブを混ぜて、辛みは控えめで、お願いします」
とすると、ミンチ担当は腕の筋肉の発達した料理人。大量の肉を次々切り刻んでいく。
出来上がったミンチに特性ハーブミックスと唐辛子を混ぜる料理人。塩水につけてあったから塩は足さなくても練っていると粘りが出てくるようだ。
しかし、ミンチにした肉でハンバーグか。他に何かミンチで出来なかったかな?レンコンにはさむとか。シイタケにはさむとか。うん、レンコンもしいたけもないよね。
っていうか、ハーブ風味だから和風ではないよな。ハンバーグも……ちょっと違う?ハーブが香るハンバーグってあんまり聞かないよなぁ。ってことはこれに玉ねぎとか混ぜて焼いてもいまいちってこと?
うーむ。
む?
むむ?
「そうだ、あれだ!ちょっと、さっきの、さっきの頂戴!」
さぁ、あとは、粘りが出るまで練ったワーウルフのひき肉で詰めて上手に形を作って蒸す。
「え?こ、これは一体……?」
うん、知らないよねー。知ってる知ってる。ミンチ文化がないんだから、知らないよねー。
「さぁ、実食してみましょう!」
出来たてほやほや。アツアツを、一つずつ調理人が目の前にしてごくりと唾を飲み込む。
これはおいしそうで思わず唾を飲み込むそれじゃなくて、これを食べるのかとちょっと覚悟する方だよ。
なんで、そんな覚悟がいる顔するかな?
はっ!
まさか、ワーウルフの肉の臭さが苦手とか?まぁ、そういうのはあるか。
でもかなり臭み抜けたし。ハーブ多めに混ぜてあるから、それほど気にならないはず……。はず……なんだけどな。いや、保障はできないので。
「いただきます」
まずは私が味見しないとね。
パリッ。
うおお、いい音!
「うん、うん」
ハーブにプラスしてちょっとピリ辛になってるから、臭みは全く気にならないかな。意識して臭みを探さないとわからない感じ。
私が食べたのを見て、料理長が口に入れた。
パリッといい音を立てている。
ふふふ、この音もおいしいよね。
「こ、これは……臭みはないですね……!」
驚いた顔してる。
でも塩水につけてある程度臭みが取れたの知ってるのに、そこまで驚くこと?
「え?本当ですか?内臓を使っているのに?」
ん?
「洗えばいいと言われましたが、本当に大丈夫ですか?内臓ですよ?」
料理人が恐る恐る、腸詰めを口にする。
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