ギルド長
「いや、知らないならいい」
すぐにカイに手を振る。この青年はカイから説明受けてないかの確認だけすると表情を緩めた。
「で、俺に文句を言うためじゃないなら、そんな恰好までして何しにここに来たんだ?」
「あなたが、誰と私を間違えているか知りませんし、何の文句をつけられるようなことをしでかしたかも知りませんけど、私は別にあなたに用事があるわけじゃないです。それからえーっと、カイは私の道案内を頼まれてしているだけです」
「は?あ……俺に用事がないって……じゃあ、どうしてここに来たんだ?冒険者みたいな恰好までして」
いやいや、だからさ。
「ここは冒険者ギルドでしょ?冒険者の服装をして来るのに理由が必要?何を言ってるのか全然わからないんですけど?」
私の言葉に、青年が大声で笑い出した。
「あはははっ、いや、マジか。当てつけでも何でもなく、お前は進んでズボンを履いてるってわけか。そりゃいい。気に入った」
青年が私の頭をポンポンと叩く。
ぐおー!萌え行動とるんじゃないっ!私は壁ドン派でも顎クイッ派でもなく、頭ポンポン派なんだ!ドキドキするじゃないか!
「触らないでっ!私はこう見えても人妻です。異性と必要以上に接触する気はありませんっ!」
ぴしっと青年の手を払いのける。これ以上ツボを刺激しないでほしい!
「あっ」
カイが驚きの声を発した。ちょっと強い言葉で言い過ぎたかな。
「ごめんなさい、ちょっと驚いて」
カイの恋人(推定)に失礼すぎたか。
「あー、あのさ……実はだな」
青年が口を開き、何かを言おうとしたら、女性の声が割って入った。。
「ギルド長!いったいその人達はなんですか?」
ギルド長?
「あー、いや。俺の……いや、まぁ、上品そうな服を着ていたので、来る場所を間違えたんじゃないかと尋ねていたところだ」
上品そうって、まぁ、アルフレッド様が子供のころの服だし。腐っても公爵様の服で、確かに回りにいる冒険者たちとは全然違うかも。
ギルド長?と呼ばれた青年も、私が商業ギルドだかどっか敵対する組織からクレームを言いに来たかと思ったのかな?カイと一緒にいるからにらまれたんじゃなかったのかな?いや、敵対する組織があるかも知らないけども。だって、冒険者ギルドがあるって知ったのもちょっと前だし。小説だと商業ギルドと冒険者ギルドがライバル関係にあるのは定番だよ?
それにしても、ギルド長と呼ばれる青年は若く見える。20代前半でギルド長?すごく優秀なんだ。
ギルドの女性職員が私とカイを見てからギルド長に尋ねた。
「それで、間違いでしたか?」
「ああ、間違いだったようだ」
「いえ、来る場所を間違いじゃないです!私、冒険者ギルドに用があって来たんですっ!」
ふんすっと鼻息あらく答える。
「え?いや、そういえば、俺に用があるんじゃなきゃ何しに来たんだ?」
ギルド長がうろたえた。
ってか、なんでギルド長に用があると思って……あれ?
「私、冒険者ギルドに登録しに来たんですけど……もしかして、登録業務はギルド長の仕事?だったら、ギルド長に用があるということに……」
「は?冒険者登録?嘘だろ?そんな不自由な生活じゃないだろう?俺は受付ないぞ!」
ギルド長が驚いている。自分の服装を見る。お金に不自由しているようには確かに見えないかも。でも、離婚後の生活も考えないといけないし。