もったいない、もったいない。
っていうか、ワーウルフを討伐してから、何日経ったんだっけ。腐ってはなくても、えっとですね……。
臭くなった肉は……。
「料理長、水は十分にある?塩は?」
「水は料理人のほとんどが水属性で魔力もそれなりにありますので、塩もいくらでもあります」
ならば、やることは一つ。
「まず水でしっかり肉を洗って!表面についてる菌を落とす、それだけで臭いが減ります。それから塩水に2時間つける。塩水の濃度は10%」
「10%?」
「重さで、塩1の重さに対し、9の重さの水を入れて溶かせばいい……のだけど」
できるのかと思ったら、秤があった。そりゃそうか。砂糖とか胡椒とか重さで取引してるんだろうし。
「水が赤く濁ってきたら水を変えて。あ、2時間もかかるから、差し入れに間に合わないわよね?実際においしくなるか分からないから、1頭分だけでいいわ。じゃ、2時間後に来るから」
手を振って調理場を後にする。
さぁ、2時間後、臭みが少しはとれるだろうから、どう料理してもらおうかな。
……ってぇ!ってぇ!ちがーう!
部屋に戻って両手をテーブルについた。
ワーウルフのおいしい食べ方を考えてる場合じゃない!
くっ。
スタンピードが起きて避難した時のための準備を進めてたんだった。
どうして、こうなった。
避難する地下を確認したら黴臭かったから紫外線で殺菌中。寒そうだから暖をとれるように温石の用意をマーサに頼んだ。
紫外線で殺菌が終わるまでは地下室に戻れない。いや、まてよ?紫外線、あれちゃんと紫外線なのかな?もし、あれ失敗ならば日光に頼る必要があって、日光だと私もあまり長時間出せないから、あの広い地下室を殺菌するには結構日数がかかるよね。紫外線が出ているか確認するにはバナナがあれば……。
って、考えても仕方がない。黴臭さが軽減されればそれで正解ということで?
他の準備を考えよう。
災害用の備蓄と言えば、まずは水。一人一日二リットルは必要で、ペットボトルなんてないから、樽とか?
でも水は腐るからお酒を飲んでいたって話もあるよね。どうしたらいいんだろう?樽を消毒して……。
って、ちがーう!水属性魔法が使える人がいるから、水の備蓄はいらないんだった。
水はオッケー、暖もとれるようにして、あとは食事。これは今までどうしてたかを確認して同じように準備してもらえばいいのかな。あとは寝るための……。硬そうだったもんなぁ地面。
とはいえ、貴族でもない限り、庶民は普段からほとんど板みたいな硬いベッドに寝てるんだよね。私も伯爵家では板のように硬いベッドに寝てたわ。石畳じゃないだけマシってレベルで。まぁ、慣れちゃえば……というよりも、疲れてどこででも寝れたけどさ。
とはいえ、子供と年寄りと病人とけが人が寝るのはもう少しましにしてあげたい。
そういえば、ワーウルフの肉を食べるということは、毛皮はどうしてるんだろう?
あれ?毛皮もたくさんとれるなら、領地の産業として成り立つんじゃないの?さすがに命の危険を冒してまで狩るようなことはしなくても、あまり危険がない魔物を狩って毛皮を加工して売るとか?っていうか、もしそれが可能ならとっくにやってるか。
王都でも魔物の毛皮とか見なかったけど、素材として魔物は使われないのかな?肉は食べなくとも素材なら……。