セーフ?だったのか?まだまだ続く
「レッド?レッドがいるの?」
マーサの後をついて上がっていく。
「アルフレッド様に会いに来たの?」
背中を見せているレッドの後ろから声をかける。
「えっと、あの、この方は」
マーサが焦ったようにレッドの前に出て私を引き離そうとする。
「何?見つかっちゃったみたいな態度。でも、ごまかそうたってそうは行かないんだから!背中見せたって、その服の下の僧帽筋や棘下筋肉に背広筋肉でバレバレなのよっ!レッドでしょう?」
もうバレてるんだからって言ったのに、レッドは後ろを向いたままだ。
何こそこそしてるんだか。
「あ、あの、ア、アリス様、何も見なかった、誰にも会わなかった……と」
マーサが小声で私の耳元でつぶやいた。
しまった~!
私、今日はアルフレッド様に会うためにドレスに化粧してめちゃくちゃお嬢様な装いじゃんっ!
冒険者のアリスは一体何者なのか?ってレッドに思われちゃうっ。
「マ、マ、マ、マーサさん、ではあの、ギルドで仕事を請け負っているサラさんの代わりに、私はどこを照らす仕事をすればいいんですか?え、えっと、ギルド長、私は今日はこの屋敷で仕事中なの。ぐ、偶然ね、じゃあ、えっと、あはははは」
レッドが背中を見せている間に、姿を見られないように急いで部屋を出ていく。
「うわー、やばかった。マーサ!」
部屋に戻ると疲れ切って椅子に腰かけた。
「なんでギルド長のレッドがアルフレッド様の部屋にいるのよっ!って、打合せ?って私が聞いたんだった。あー、そうよねぇ。スタンピードの危機にのんきに間に人を介してやり取りなんてしてられないわよねぇ……。でも……」
はっとして恐る恐るマーサに尋ねる。
「ねぇ、ギルド長が何日も屋敷にとどまるようなことって今まであったのかしら?屋敷で鉢合わせするようなことがあると、困るんだけど……鉢合わせしてもいいように、やっぱりズボン……いえ、そうなると今度はアルフレッド様と会ったときに困る?うーん、うーん」
ガチャリと隣の部屋の扉が開閉する音が聞こえ、マーサが廊下の様子を確認してくれた。
「大丈夫ですよ、リリアリス様。ギルド長はギルドへ戻るみたいです」
ほーっ。よかった。
「じゃあ、早速……」
適当な布を手に調理場へと足を踏み入れる。
「リ、リリアリス様、どうなさいましたか?もしかして、アルフレッド様とお昼を召し上がることになったので、特別な料理の指示でも?」
は?
「アルフレッド様と昼?」
聞いてないと、マーサに顔を向ける。
「確かにアルフレッド様はお戻りになっておりますが、いろいろな事情で奥様とはお食事を召し上がりません」
いろいろな事情……。そう、お前を愛することはない妻なので、放置が基本です。一緒に食事なんて、距離を縮めようとしてるなんて誤解させちゃう愚かな行為ですし。
でも、ちょっと気になるなぁ。あの筋肉に見えないメタボ系筋肉とでもいうか、お相撲取り筋肉とでもいうか、何を食べてあの体系になってるのか?ちゃんこ鍋なんてないだろうし……。
「ねぇ、アルフレッド様って立派なおなかしてたけど、何をどれくらい食べているか知ってる?」
料理長なら知っているだろうと尋ねる。
「は?立派なおなか?」
「そうよ、こう、こうね?」
デブだとか太ってるとかいうと失礼だし、メタボじゃ伝わらないだろうから、ジェスチャーしてみる。
料理長には伝わらない。あれれ?
それから、目についたメタボ調理人に視線を向けた。
「ほら、彼みたいな立派なおなか」
「ああ、確かに彼のような立派なおなかになるようにもっと食べていただきたいと思っているのですが、食べても食べても太れないとアルフレッド様はおっしゃって」
はい?
次回、ついに、アリスはアルフレッド様に疑問を覚えるのか?「あ、うん、知ってた」
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