ついに旦那様の寝室にぃ!
「ここは公爵様が使う部屋ですね」
大きな机は執務用か。そりゃ避難しててもやるべきことはやらないといけないし。
もう一つの扉から出てると廊下というか通路だ。3も進むと、広い場所に出た。LEDをともしながら進むけど、どこも黴臭い。
広い場所にもLEDをつける。
今度こそ地下牢のような簡素な場所だ。広さは地下牢の何倍もあるけれど……。
寒々としている。日の光が届かない地下。 周りは天井も床も壁も石。
いくつも太い石の柱が天井を支えている。その柱以外は何もない。
「避難って、どれくらいの期間、ここで過ごすの?」
私なら、何日耐えられるだろう。
底冷えがするはずだし、硬い場所で寝なければならないだろう。
たくさんの人が避難すれば気温はもう少し上がるのだろうか?
「火を炊いて暖を取るの?」
冬場に避難することもあるはずだ。
「火は、四隅で。調理もします。煙を外に出す場所が四隅にしかないので」
四隅……。
これ、近くにいる人は暖かいけど、離れた場所は絶対寒いじゃんっ。
学校の体育館3~4個分の広さはあるよ?
とはいえ、いくら風魔法で空気の流れを作れるからって、火を不用意に炊いて一酸化中毒になるのも怖いから、仕方がないんだろうなぁ……。
せめて、石を焼いて布でくるんで懐炉。湯たんぽみたいなのは無理だよねぇ。水がこぼれない器を数用意するのは……。
「懐炉……カイロは使っている?」
「カイロ……?」
「温めた石を布でくるんで暖を取ったりとか……」
そういえば、侯爵家で寒いときも、誰も使ってなかったな。
マーサが首を傾げた。
うん、なさそう。……冬が厳しい地域でも存在しないって……。平安時代とかにはすでに日本ではあったはず……って、温石っていうんだっけ?なんでないんだろう。
「石を温めてから暖を取るのですか?火で石を温めるなら、火で温まればよいのでは?」
ん?小さな石を布に包んで当てるというのが伝わってない?大きな石を温めて焚火のように周りを囲むと思われた?
でも、わかった。この世界は火が身近だから、火で温まればいいっていう発想なんだ。
火魔法があるから。寒いから火を起そうっていう時間がいらない。寒いから火魔法でさっと火をつけられる。
光魔法だってそうだ。光魔法があるから、松明や油を燃やすことはかろうじてあるものの、蝋燭やキャンドルやランプなどは発達してない。だから、暖を取るといえば火を燃やすだけなのかも。あとはせいぜい着込むくらいか?
「わざわざ温めるわけじゃないよ。ついでに温めるの。料理のついでや、部屋を暖めるついでで……」
これは、実際作って見せたほうがいいかもしれない。
「ちょっと石を拾って調理場に行きましょう!」
「え?あの、リリアリス様?」
「あ、その前に……【紫外線】【紫外線】【紫外線】……」
カビ退治っ!つっても、光が当たりにくい細部はまた今度。広い範囲から。
「わわーっ!日焼け、逃げよう、マーサ!」
しまった。また考えもなく紫外線っ。日焼けに弱い肌なんだよ。へちま水パックとかしたい。
「あっ」
廊下に戻って気が付いた。
「どっから戻るの?」
私の部屋のクローゼットの床から来たよね。でも、その部屋、超強力紫外線殺菌消毒中。細部までがんがん紫外線出してある。
……。戻れない。
「ああ、こちらから屋敷に戻れますよ」
マーサがすたすたと歩いていく。
私の部屋の地下の避難部屋の隣はアルフレッド様の避難部屋だった。そこから上に上がろうというのだ。
あれ?ってことは……?
がこんと出入り口の板を外して頭を出す。
「誰だ!」
「あああ、申し訳ありません、その、地下の避難所の確認から戻って……!」
マーサさんが慌てて私の横をすり抜けて部屋に入っていった。
あれ?
今の声……。
「レッド?レッドがいるの?」
正体がばれるか?!次回「ああ、うん、知ってた」w




