かびかびるんるん
「はい。すぐに避難できるように屋敷にはこうした入口が10か所ほど設けられています。城門をくぐらなくても避難できるように塀の外、護衛の立っている足元にもあります。それから屋敷の庭にも何か所か」
あ、そうなんだ。うん。皆私の部屋に集まるわけじゃないのね……安心したわ。
いわゆる城の王族が逃げる秘密の通路みたいな……鉄格子は魔物対策でもあり暗殺者対策でもあるのかな?
地下に降り……る前に。
「【LED】」
暗い地下を照らす。
「あれ?」
牢屋のような場所を想像したけれど、ベッドも本棚も机も……簡素なものではあるけれど、それなりに家具や調度品が整えられている。
6畳くらいだろうか。扉が2か所設置されてる。
しっかり手すりを持ちながら後ろ向きに急な階段を下りていく。
「こちらが廊下に続く扉で、こちらが公爵様の部屋に続く扉となっております」
……なるほど。避難所でも一応公爵夫人と公爵の部屋は確保されてるってことか。しかも、調度品を見ると、それなりに使い込まれている。
……幾度となく使われたのだというのがすぐに分かった。
……それにしても……。
「【日光!】」
耐えきれずに呪文を唱える。
「え?リリアリス様、LEDで十分明るいですが……」
「明るけりゃいいってもんじゃないのよっ!臭いの、臭いっ!」
ぷるぷると震える。
「失礼いたしました……空気をすぐに入れ替えますね。風属性の者を呼んでまいります」
マーサが階段を登ろうとしたので止めた。
「違う、風ではこのカビ臭さは根本的に解決はできないのっ。呼ぶなら光属性の者を!」
「え?えーっと……?光属性ですか?」
そう。
地下室で日の光は入らないし窓はないし壁は石だし、とにかくじめっとしててカビ臭いっ!こんなところに避難したら魔物から身を護れても別の病気になっちゃうよっ!
マーサが光属性の使用人を呼びに部屋を出ていく。
「布団も、天日干ししたいとこだけど……」
とりあえず魔法で出した日光で天日干し替わりだ。
隣の部屋……公爵様が避難する部屋のドアを開いて、こちらにも【日光】
どちらも2時間くらいはもつはずだ。2時間あれば、カビは死ぬって聞いたことある。……とはいえ、光が当たらない部分もあるだろうから、掃除もして物理的にカビも排除しなくちゃ。
マーサが3人の光属性の使用人を連れてきた。その中にサラの姿がないのは、ギルドに行ったからだろうか。
「避難所を殺菌消毒します。日光を出してください」
「殺菌消毒とは?」
「えーっと」
菌の概念ってないんだっけ?
「見えないものを綺麗にする?」
「掃除ですか?でしたらLEDで明るくすればよろしいのですね!」
「違う、そうじゃなくて、日光消毒っ!紫外線を当てると……」
ん?
「紫外線……」
そうだ。日光がカビを死滅させるのは2つの理由がある。1つは日光で乾燥させること。生きていられない乾燥した環境に変える効果。もう一つが、紫外線により殺す効果だ。……乾燥させても湿度は戻るだろうから、必要なのは紫外線での殺菌。カビ以外の有害な菌とかもついでに殺せちゃうじゃない?
ってことはよ?日光じゃなくても紫外線でいいんじゃない?
紫外線ならば、弱いものならトイレで手を洗った後に乾かすやつとか、病院のスリッパ入れとか……それどころかネイルに当てて硬化させるUVライトとかもあるよね。100円均一で売ってて電池で動く……。
消費電力がそこまで多くないってことだよね。ってことはよ、魔力も日光に比べたらずっと押えられるってことでしょ?
よし。
「【紫外線】」
唱えてみた。




