避難所へGOする
視点戻ります
避難所の準備をする。
スタンピードが起きた時のために。
それが私、公爵夫人リリアリスに課せられた重大な役割。
「くっ。任せて」
いざという時の備えはよくわかってる。
「マーサ、屋敷には何人くらいが何日避難してくるの?」
マーサがちょっと考える。
「だいたい領都の人口が1万人です。領都にはギルドの地下と広場の地下とこの屋敷の地下に大規模避難所があります」
へー、人口1万人って……。
もしかして多いよね?確か中世って最大の人口があった都市でも5万人~10万人。2万人超える都市はほぼなく、1万人規模でかなりな大きさ。「大都市」と言われる場所でもせいぜいが5千人ほどだと何かで読んだ気が……。
その理由が輸送が発達していないこと。
まぁぶっちゃければ食糧や薪など生活の物資が確保できないって話なんだよね。輸送が発達さえすれば、食糧も確保できるわけだし。
……あれ?
「ねぇ、人口1万人もいて、何を食べてるの?」
私の質問にマーサが青ざめた。
変なこと聞いたかな?
……そういえば、冬は雪が深くて作物がよく育たないと聞いた気が……。ということは、十分に食べれてない?そもそも塀に囲まれた外側の耕作地を広げようとしても魔物が出て危険なんだよね?
いったい1万人の食糧はどう支えているんだろう?
「や、山の……あの、森の……」
マーサの目が泳ぐ。
山の幸、森からとれる物……ってこと?魔物が出るのに危険を冒して採りに行ってる?そりゃ、畑がなければどこかから確保しないといけないのは確かだし……。
でも、それで1万人もの腹が満たせる?海があるわけでもない。……川があるのかな?湖とか?湖があれば冬は氷が張ってワカサギ釣りみたいな感じで魚を取っているとか?
まぁいいや。普通は食べ物がどこでどう作られてるとかあまり知らないよね。情報化社会でもないし。学校の授業で習うわけないし。
まぁいいや。
「ということは、とりあえず避難所は3か所に分かれて、3千人~5千人が集まるってことね?」
えーっと、避難所生活に必要な一人当たりの面積は4㎡って聞いたことがある。長期間になる場合は倍の8㎡。
まぁ、つまり大体一坪、二畳必要ってことよね。長期間なら4畳半。って、ここではどうやって広さを図るんだろう?
首をかしげる。
とりあえず、人数の多い小学校とか中学校とかの体育館の広さが8000㎡前後って聞いたことがるから、1000人~2000人、通路も考えれば1500人くらい?家族で利用するならまた違ってくるだろうし。
3000人~4000人が避難生活するなら体育館2~3つ分の広さが必要ってことだよね。
物資も大切だけれど、広さも大切。狭いところでひしめき合っているとストレスたまるもんね。
満員電車を思い出してげんなりする。
「避難する場所を見せてくれる?」
広さが足りなければ広くする必要がある。地下だと言っていたから、土属性魔法持ちに掘り広げてもらうとか?
魔法じゃ無理なら手の空いている者で少しずつでも掘ってもらわないと。
「はい。こちらです」」
マーサがクローゼットを開いた。
はい?
七ひきの子ヤギが狼から隠れるんじゃないから、クローゼットに避難してもねぇ……。
と、思ったらクローゼットの床の板を剥がした。その下には鉄格子。横にスライドさせると傾斜がきつい階段が見える。
「えっと……ここが入口?」
まさか、避難してきた領民たちは私の部屋に集まってくるってこと?
えー、やだぁ。




