終着 最終話
「なろう版」はここでおしまいです。
コミカライズが始まっております。お楽しみいただければ嬉しいです。
「あのさ、レッド、確かに私はレッドのこと好きだけど、レッドは今さらこんなこと言うとか言ってたけど、そうじゃないよね?今さらじゃなくて、まだ言うべきじゃないけどだよね?だって、私、離婚前でアルフレッド様の妻だよ?あと2年、いや、1年と数カ月は別の人と結婚できないし、それに、離婚前にキ、キスとかしたら、それ不倫。不貞行為、倫理的に無理っ!」
いくら貴族の間では愛人を持つのはありふれたことだと言ってもね。
現代日本人の感覚的に、不倫はあかん。仮面夫婦でも不倫はダメ。きっちり離婚してからじゃないと。
「あー、いや、だから、俺がアルフレッド……」
「レッドがアルフレッド様に許可をもらってもダメ!」
「そうじゃなくて……」
「あ、そうだ。内緒だからね?今の話は全部。その、私がアシュラーン公爵領に嫁いできたのが邪魔者を排除しようとしたからとか、あと、虐げられてたとか、全部内緒」
レッドが頷いた。
「分かった」
「それから、レッドが私のこと好きだとか、わたしがレッドのこと好きだとかも、内緒だからっ!」
レッドが不満そうな顔をした。
「いや、俺がお前のこと好きなのは隠すつもりはない」
「え?」
「なんの問題もないだろう?」
「問題ある、あるでしょ?ねぇ、問題あるよね?」
領主の妻が好きとか……。
「あれ?アリスとして街にいるときは、誰も私を公爵夫人だって知らないんだっけ?」
なら、ただの冒険者の小娘アリスのことを、ギルド長が好きだと言っても何ら問題がない?
あれ?アリスもギルド長が好きだと言っても、問題がな……。
いやいや、それはバレたときに大問題っ!
ぶんぶんと首を横に振る。
「じゃ、これならどう?」
レッドがいったん外した仮面を顔にはめる。
「アルフレッドなら、いい?好きだよ、リリアリス。我が妻」
レッドが再び私を抱きしめた。
うん、これなら誰も不倫していると思わないから、問題な……。
「だめでしょ、なんか、もっとだめっ!仮面夫婦爆誕!とかじゃないのよ、アルフレッド様に頼まれてアルフレッド様の身代わりをしているかもしれないけど、そういう話じゃないんだよね?身代わりってっ!」
レッドがぶはっと笑い出した。
「もういいや、いいか、離婚したら、もう一度結婚しよう。今度はちゃんと式も挙げて、領民に祝福してもらって……王都のような盛大な式はできないけど、街を上げてのお祭りをしよう」
もう一度?今度は?
私が寝てる間に結婚してたこととかも全部知ってるのかな。
レッドの体に手を回す。
一度だけ。離婚前にこんなことは許されないけど……。
「レッド、好き。……離婚するまでもう少し待っててね。それから……離婚するまでに、公爵夫人でいられる間にできること、いっぱい頑張る。それで……、お祭りはみんながアシュラーン公爵領を誇れるように……頑張るよ」
まずは、お祭りを暗くなってからも楽しめるように光魔法で照らそう。
王都でさえ祭りは火が落ちたらお開きだ。
それを、日本の祭りのように、暗くなっても楽しめるようにしよう。花火も打ち上げよう。光魔法で。
当日楽しめることばかりじゃない。
いろいろと考えていることがある。
光魔法を使えば、地下でも食料が栽培できるんじゃないかなって。
栽培用LEDなるものもあった。植物の生育を早める波長の光とかもあったはずだ。
光合成ができればいいんだから、太陽光じゃなくても育つ。
地下なら、雪が積もる冬だって栽培できる。水やりだって、水魔法の人に頼めばいいんだよね。土魔法の人に耕してもらえるし。
紫外線で殺菌して地下の黴臭さを取って、赤外線で温めれば、温室栽培までできちゃんじゃない?
赤外線がどれくらいの魔力消費かも確かめないと。
ああそうだ、卵はたくさんあるんだから、卵の殻だってたくさんあるよね?卵の殻は肥料になる。
栽培するものは、北海道では盛んに栽培されていたようなものが向いてるのかな?ならジャガイモにコーンに種を手に入れて……。
あ、そうだ、北海道って、確か……甜菜栽培も盛んだったのでは?
甜菜って、砂糖の原料だよ。砂糖なんて高級品が特産品になれば領地は豊かになるね!
甜菜は砂糖を取った後、飼料になるんだよね。あとキノコの菌床にも利用できるんだっけ。キノコ栽培もいいねぇ。
この世界きのこは栽培するものじゃなく採取するもののはず。エノキシメジマイタケシイタケマッシュルームエリンギ……何が作れるか分からないけど、いろいろ挑戦してみよう。湿度温度管理をしなくちゃいけないから地下栽培は最適だよ。
ああ、夢が広がる。
光魔法があればこその、地下での栽培技術発展。
きっと、もう誰も光魔法はハズレなんて言わなくなるよね。
「レッド、幸せになろうね」
「ああ、もちろん」
レッドが私を抱きしめる手に力がこもる。
「領民がみんな幸せだって言えるようにしようね」
「……ありがとう……アリス……」
お礼を言うのは……私のほうだ……。
「おい、アリス?寝たのか?」
力が抜けるとレッドがあわてて私をベッドに運んでくれた。
「ああ、無理をさせて悪かった……。だが、気持ちが聞けて嬉しかった。アリス、リリアリス、好きだ。愛してる。もし、侯爵家が……いいや、王がアリスの力に気が付いて取り返そうとするなら全力で追い返してやる、誰もに渡さない」
ぼわわと眠気に支配されてぼんやりする頭でレッドの声が聞こえる。
何を言ってるのか……。
アシュラーン領が豊かになったら……王が欲しがる?そんな話?
……腹黒い妹が王妃になったら確かに欲しがるかもしれない。
ならもう、独立したらいい。
どうせ見捨てられた土地なのだ。何かあっても国の援助もない。
歴史書に、アシュラーン王国初代国王”レッド”と王妃”アリス”の名が記されるのは少し先のお話。
130話で分岐したなろう版はここで終わり(完結)。この先おまけとしてカクヨム版を更新していこうかなと思っています。130話でアルフレッド様が部屋から出ていこうとして正体がばれた流れではなく、部屋から正体ばれずに出て行ったパターンです。(まだ正体明かさないのかよwwww方向です)
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最後まで、ご覧いただきありがとうございました!
*他に、カクヨム版、書籍版、コミカライズ版がございます*
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いや、もっともーーーーっと続けたいのはやまやま。
いつになったらかけるんだ?というんを考えたら、連載中にずっとしておくよりは、駆け足でもなんでも完結にした方がいいのかな?
と、考えた末の、駆け足完結です。とりあえず二人が結ばれるところで終わり。
それにしても、書いてた楽しい二人のやり取りいつまでもかけます。
だからこそ、終わらないの。だから、心を鬼にして終わらせました( ノД`)シクシク…
注*カクヨムでは別ルートでのんびり継続……
駆け足にこの先考えていたネタぶっこみました。
地下や洞窟でいろいろ栽培していきます。
光魔法の出番です!
冬場雪が降ろうがなにしようが光と水と土。問題なく栽培できます。魔物の脅威におびえることもありません。
書籍版では「地下街作ろう!」まで言い出してます。ええ、名古屋の民なので、地下街あれば天候に左右されずにうろうろできるよね!って感じです。
ナーロッパに地下街がないのは
「掘る」と「光」の問題かなーって。
「掘る」は土魔法「光」は光魔法で解決できればわざわざ危険な地上で暮らす必要ないよね?
実際地球でもカッパドキアの洞窟住居やクーバーピディの採掘跡居住やヤオトンの地下都市など、穴を掘って暮らしてる人達は昔からいるわけで。
それはさておき、卵の殻では蛍光チョークも作りたかった。
色々と心残りはありますが、無事に完結させることができました。ありがとうございます。
時間ができたら、何年か先に突然続きを書くかもしれません。
ああ、あと、蛇足なのですが、あえて歴史書には「アルフレッド」でなく「レッド」、「リリアリス」ではなく「アリス」となっております。
その間にいろいろあるのも書けたら楽しそうなんだけどなー。
独立までに、侯爵家や王家がぎゃふーんとなるとこも書きたかったなー。
ああ、そう。きのこも調べました。トリュフはマツタケと同じで栽培できないので高級だったのが、ここ数年で栽培に成功したという話がぽつぽつ出てきて、もしかするともう少ししたら、身近なキノコになrかもしれませんね。
ありがとうございました!




