終着3
レッドも私を殺そうとしていたのではということに思い当たったのか、真っ青な顔をしている。
「まぁ、とにかく、ゴミを捨てるように公爵領に嫁がされたなんて、みんなが知ったらアシュラーン公爵領はゴミ箱じゃないって思うでしょ?せっかく侯爵令嬢が嫁いできた、高位貴族の娘、しかも皇太子の婚約者の姉で、この地は見捨てられてないと思ってる人の気持ちに水を差すようなことはできないわ。だから黙ってたの」
レッドが小さくああと口にする。しかし、二の句が継げないようだ。
「だから、離婚されても私は王都に帰らない。いいえ帰りたくなんかないの」
レッドが驚いたように目を見開いている。
「本当に……王都に、帰りたくないのか?」
首を横に振る。
「王都に帰りたくないんじゃない……ここに……アシュラーン公爵領にいたいの。ずっと、ここで生きていきたい」
レッドが、信じられないという顔をして、それから私の目を見た。
嘘などついていないのが分かったようだ。
泣きそうな顔をちょっとだけすると、すぐにくすぐったそうな笑顔を見せ、それから、きゅっと口元を引き結んだ。
「アリス……今さらこんなこと言うのもおかしいが……」
今さら?なんだろう。
レッドが唐突に跪き、片手を差し出した。
「俺と、結婚して欲しい」
はっ?
まさか、これって……、これって……!
「プ、プロポーズ?なんで、どうして……あ、そうだ、帰る場所がない私を憐れんで同情したの?」
「いや、違う、そうじゃない、す…す……好きなんだ」
え?うそ、嘘でしょう、嘘だよね?
「レッドが、私を、好き?え?嘘だ、嘘だ、そんな、そんな……私みたいな筋肉馬鹿を好きだなんてっ!」
「……筋肉馬鹿の自覚があったのか……あー、そうだ、俺は、お前の理想の筋肉に慣れるよう努力し続けるからな、結婚してくれ」
ぎゅううーーーんっ!
「すごい……殺し文句、殺し文句がひどいっ!」
そんなの、結婚するしかないじゃない!
いや、もう、違う、そうじゃない。
例え、レッドがひょろひょろで筋肉なんてこれっぽっちもなかったとしても……。
みんなのためにいろいろと頑張っていて、光属性の子供たちのことも気にかけてくれていて、街を守ろうと必死で……。
「……ひどいって……。すまん、俺は気の利いた言葉は知らないから」
「そうじゃないわ!私、今すぐにでもレッドの手を取りたくなっちゃうけど、でも、流石にそれはできない」
レッドが私に伸ばしていた手を引っ込めた。
「そうか……俺のことは、好きじゃないってこ」
「ち、違う、好き、大好きっ!」
と、大声で否定してから、真っ赤になった。
ひぃー、私ってば、何を言っているんだ。
「本当か?じゃあ」
レッドが立ち上がり、私を抱きしめた。
ひぃー、えええ、急展開。
「キス、していいか?」
レッドの顔が近づいてきた。
「だ、だ、だ、だ、だめ!だめーっ!」
レッドの体を押しのける。