いうなりにはなれない
「どこに顔を出して何をしているというのは、知らない。全然知らないからな!簡単にしか報告は受けていないから」
私に興味はないって、そういうことか。
っていうことは、ギルドに顔を出してるのも知らない?……ほっと息を吐く。って、ホッとしてる場合じゃなかったわ。
「どうして街に出てはだめなんですか?」
「危険だからだ」
「危険?大丈夫です!ギルドでは危険な目にあったりしたことないですっ!」
「ギルドでは?」
しまった!ギルドに行っていることが知られてないのに自分でばらすようなこと言ってどうするっ!
「ギ、ギルドにいる冒険者たちはとても頼りになるので、街で危険な目に合うことはありません」
「まぁ、そうだな。ギルドを信じてくれるのは嬉しい」
アルフレッド様の声がに少し高くなる。ふむ。よろこんでる?
「だから、街は安全なので」
「いや、危険だ。この屋敷以上に安全な場所は他にないんだ。だから、屋敷から出るな」
……愛されないのはかまわない。
でも……。自由を奪われるのは嫌だ。
「大丈夫です。もし何かあっても、旦那様を責めるようなことはしません。実家にも私がわがままを言ったと伝えてください」
私はどうせ実家では嫌われているんだから。死んだって聞いても悲しむことはないだろうし。
ベッドから立ち上がって、ドアに向かって足を進める。
「どこへ行くっ!」
腕をつかまれた。
「離して。どうせ3年後に離婚するんですし、世継ぎを作る必要もないんですよね?だったら、私が屋敷にいる必要なんてないんじゃないですか?外聞が悪いなら影武者でも置いておけばいい。私は屋敷に閉じ込められるくらいなら、この屋敷にはもう二度と足を踏み入れずに今すぐ出ていきます」
「アルフレッド様っ!ちゃんと説明してくださいっ!そんなんじゃ本当にリリアリス様は出て行ってしまいますよ!」
ものすごく大きな声が響いた。
マーサだ。
「本当に、全く、いいですか、いきなり屋敷から出るなと理由も説明せず命じるなんて誰だって反発したくまります」
「いや、危険だと理由は説明」
「言葉が、た、り、ま、せ、ん。なぜ危険なのかまで説明してください。リリアリス様はこちらでお育ちになったわけじゃないんですよ?」
マーサが、人差し指を立ててアルフレッド様の仮面の前に突き出す。
つ、強い。雇い主の公爵をここまでしかりつけるなんて。
マーサ、かっこいい!
「あー、すまん。街に魔物が侵入しそうになった。いつ、魔物が街に現れるかもしれなくて危険な状態だ」
危険って、魔物か!
「ワーウルフがまだいるんですか?」
「いや。それはもう大丈夫だが、森ではスタンピードの兆候が散見されるんだ。いつ起きるかわからない」
スタンピード……って。
「魔物の群れの暴走……?」
「ああ。本来は共生することのない魔物が一緒にいるところが目撃されている。それにワーウルフがあれほどの数集まるのも、いくらワーウルフロードがいたからと言って普段では考えにくい。いくつかの群れに別れて過ごしているはずなんだ。……ほかにも、森の場所によっては全く魔物の姿が見られない。どこかへ集まるために移動したと考えられる」
そうなんだ。危険って……婦女子が襲われる類の対人間じゃなく魔物。
「だったら、私も戦うわ!アルフレッド様は知らないかもしれないけれど、光魔法も役に立つのよ?信じられないなら、レッドに聞いてみたらいいわ!火球なんて夜間の魔物除けになるかもしれないし」
「レッドに聞けだと……?」
あっ。ギルドに足を運んでいることも隠してるのにギルド長の名前出してどうするの、私。
「あー、ほら、サラ、サラから聞いたのよ。なんかギルドの人に光魔法を教えてほしいって。それって、ギルド長が光魔法の有用性を認めているということで……。ね、サラ」
サラの顔を見る。
「ソウデス」
サラが片言で答える。