勘違い
「あのっ、もう本当にいつでも大丈夫ですから!」
ベッドに丁寧に下ろされる。
「いつでも?」
「よ、手紙の内容を撤回して、世継ぎを作るというなら……」
うぐ、なんか私から誘ってるみたいな言葉になってしまって、急に恥ずかしくなって顔が赤くなる。
「そうじゃない、勘違いだ、君に手を出すようなことはしない。安心してくれっ!」
へ?
「私を愛することはないというのは継続ですか?」
勘違いしちゃった。恥ずかしい。
旦那様の後ろでなぜかマーサとサラが黒いオーラを出している。
「では、内容を撤回するというのは……」
ハッと口をふさいで青ざめる。
「も、もしかして、3年後に離婚するということですか?今すぐにでも離婚したいと……!ああ、ああ、どうしましょう。私ったら、とんでもない勘違いを!ごめんなさい、あの、どうか、その……もう少しだけお時間いただけませんか?急に離婚と言われてもこの先どうしていいのか……!せめて3日の猶予を……!」
世継ぎを生む覚悟をなんて、勘違いも甚だしい!旦那様は私を愛するつもりはまったくないどころか、今すぐにでも追い出したいくらいに嫌っているというのに……!
アルフレッド様がぴきりと固まってしまった。
「も、申し訳ありません、あの、3日も私を屋敷においておきたくないですよね……。あの、ではせめてあと1日……。すぐに出ていく準備を始めますから……」
立ち上がろうとした私を、アルフレッド様が肩をつかんで止めた。
「違う、そうじゃない。逆だ。ずっと屋敷にいてくれ」
「え?」
慌ててアルフレッド様が首を横に振った。
「いや、そうじゃなくて、もちろん白い結婚が成立したらリリアリスを自由にする約束はたがえない。ずっとというのは」
あれ?愛することはなくて、3年後には離婚するって、手紙の内容を撤回してないよね?
「自由に過ごしてくれと手紙に書いたが撤回させてくれ」
「え?」
私、なんかやらかしちゃいました?迷惑かけちゃいました?
「屋敷から出るのを禁止する」
「は?」
アルフレッド様の言葉の意味が理解できない。
「屋敷の中でならば自由に過ごしてもらってかまわない。ただ、外に出ずにずっと屋敷にいてくれ」
「それって、ギル……」
ギルドに行くなってことですかと言おうとして、口をつぐむ。
どこまでアルフレッド様は知っているんだろう。私がギルドに行っていることは、サラやカイから話を聞いている?
そういえば口留めしてなかったし、伝わっているのかもしれない。
ギルド長とアルフレッド様は交流もあるみたいだから、もしかして、アリスという偽名を使っている私が公爵夫人のリリアリスだってばれてる?いや、そんな感じもなかったよね?公爵夫人に対する態度とは思えない接し方されてたと思うし。
「ギル?」
「あ、いえ、あの、街に出てはだめということですか?」
「そうだ。カイを護衛につけて街に出ているということは聞いている」
「聞いてるのはそれだけ?」
黒い仮面がびくりと揺れる。なぜか、アルフレッド様がマーサとサラの顔を見た。
マーサとサラは首を横に振っている。
このやり取りは何?




