探る
「大丈夫です、えっと、お世継ぎとかも必要でしょうし、お任せくださいっ」
私も男性経験はない。だが、立派な耳年増だ。知識だけはたくさんある。この世界にはない方法まで知ってるかもしれない。経験はゼロだけども。
覚悟はしてたから大丈夫。公爵夫人として出来ることはしようって。世継ぎが必要なことは理解している。
特に……流刑地と呼ばれたこの地には、立派な領主が必要なことは。
アルフレッド様は、使用人にも領民にも慕われている。ずいぶんこの地もよくなったと……。
この城の窓にはめ込まれた鉄格子が魔物を侵入させないようにだと私が気が付かないくらい魔物から街が守られるように、アルフレッド様が頑張ったのだと。
また、この地を顧みないような領主に代わってしまうのは領民のためにいいことではない。
観光地にして人を呼んで豊かな領地にして皆で幸せに暮らしたいと言うのを頑張ろうという気持ちもあるけど。
公爵夫人として世継ぎを生み、アルフレッド様のようなよい領主へと育てることも大切なんだと分かっている。
でも、やっぱり……。
好きでもない相手と体を重ねて、子供を産むのかぁ……。まだ、16歳だよ?中身は年増でも。
初めての相手はできれば……好きな筋肉に包まれたい。
脳裏にレッドの姿が思い浮かぶ。
いやいや、いやいやいや、ない、ない、ないからっ!
そう、アルフレッド様だって、マントの下に隠された立派な筋肉があるかもしれないじゃない?
ざっと立ち上がる。
「ああ、立ち眩みが……」
嘘ついちゃった。
でも、優しい旦那様なら……。
「アリスっ」
ん?
「リリアリス、大丈夫か!」
あ、びっくりした。冒険者の時の名前を呼ばれたのかと一瞬思っちゃった。そうだよね。旦那様が知るわけないよね?いや、もしかしてカイとか誰かが報告してる?
倒れそうになった私を旦那様が支えてくれた。
もむもむ。
旦那様の腕を確認。
期待していたような三角筋も棘上筋も小円筋も大円筋も……ない……。
とういうか、腕がぷにゅぷにゅしてる……。
この腕で、剣を振れるの?強いの?……あれれ?
見下ろすと、いつの間にかはだけたマントの中に、メタボリックなおなかが見える。
「すまない。病み上がりだと分かっていたのに……話の続きは日を改めよう」
「ひゃっ」
こ、こ、これは、お姫様抱っこ!
旦那様に軽々と持ち上げられてベッドに運ばれる。
うお、おなかはメタボだけど力はある。もしかしたら、お相撲取りさんのような筋肉の持ち主?うん、強そうだ。
くぐもった声なのも、ほっぺの肉のせいだったりするのかなぁ?
……盲点。盲点かもしれない。
お相撲取り系筋肉。筋肉を覆う脂肪でボディビルダーのように形よく見えないけれど、横綱ともなれば筋肉だけで100キロはあると聞いたことがある。筋肉が100キロ……!どういうことだよ!
でも、どうやって愛でればいいんだろう?そのうち愛で方が分かる?贅肉の内側に秘められた筋肉を想像して楽しむ?……高等すぎてその域に行くには何年もかかりそうだ。
でも……。
気遣ってくれる優しい旦那様だ。
……本当の夫婦として過ごしていくうちに。
黒い仮面に視線を向ける。
ごくりと唾を飲み込む。きっと、この旦那様なら大丈夫……。