誤解する
「本当に女はいない。囲っている女という意味ではないぞ?女に今まで興味を持ったことがない」
は?
女に興味がないということは……お、男に……。カイに続いて、お前もか!そっちの人か!
まさか愛せない理由がそんな楽しい話だったとは!いや、楽しんではいけないんだけど。応援するよ。お、う、え、ん!相手は誰?
まさか、カイとレッドと旦那様の三角関係とかじゃないよね?
だとしたら……私は……。
「レッド?」
応援するとしたら誰だろうと思わずレッドの名前が口から出る。旦那様の応援はごめん。やっぱりより親しい人を応援したいんだ。
「あ、いや、俺はその、だますつもりは、っていうか、どうしてわかった、俺がギルド長のレッド」
「え?何?まさか、旦那様の思い人はレッドなの?え?それって両想い?片思い?片思いなら大変だよね。ギルドと公爵家の関係もあるし、下手に動いて関係を壊しちゃいけないって考えても仕方がないよね。ああ、でも、共闘する間に愛が芽生えるとかそういう話?バディとか、いいよね!ううううっ、ああ、分かりました。私、カイには悪いけど、旦那様とレッドの仲を応援することに」
と、声高らかに旦那様に宣言すると、はぁーと仮面越しにもわかるような大きなため息を旦那様がついた。
「そうじゃない……まぁ、ばれたわけじゃないから良しとするべきか……。ああ、だが、誤解だ、誤解っ!俺は今まで女に興味はなかったが、お前のことは……」
誤解?レッドじゃないの?誰?
まさか、筋肉神の前ギルド長のガルド様?……可能性はゼロではない。男でも絶対ほれぼれする完璧な筋肉の持ち主。尊敬や憧れからいつか恋に……。いい、それもまた、いい!
「なんか、また違う方向に考えてるだろう?俺……いや私は男色家ではないからな」
一人称が僕から私に変わってますけど?やっぱり普段は俺なわけだ。
「なんかがっかりしてないか?普通は夫が女を囲ったり男に走ったりしていないと聞けば喜ぶところだろう?」
……そんな当たり前のことを喜んでどうするんだろうね?何様のつもり。いや、俺様なのか?
「どうして、俺をそんな蔑んだ目で見るんだ?嫌わないでほしい」
どの口が言う?
「撤回しに来たとおっしゃっていましたが、何を撤回なさるおつもりですか?」
もう用事は終えてさっさと帰ってもらおう。
「その、届けさせた手紙の内容を……」
「え?届けさせた手紙って……」
マーサに視線を送ると、マーサは気まずそうな表情をしながらも、机の引き出しに入れてあった手紙を取ってくれた。
「この手紙のこと……ですよね」
書いてある内容は、要約すると、「愛することはない、3年後に白い結婚で離婚する、予算はそれほど出せないが好き過ごしてくれ」だったはずだ。
「ああ、そうだ……一部、撤回させてほしい」
ま、まさか……!
「愛さないと言ったことを撤回するってことですか?顔も合わせたことがないから、それは感情的な問題ではなく、肉体的な交わりを持つということですよね?」
「あ、あ、ああのな、に、肉体的って……」
仮面をかぶっているのに、なぜかその同様っぷりから赤面しているような気がする。
まさか、女性との付き合い方がわからない、女性の扱い方がわからないから愛することはないと言った純情青年?そのパターンもあったか!