お目覚め
視点戻ります
★視点もどりリリアリス★
目を開けたら知らない天井……ではなく、知っている天井だった。
お前を愛するつもりはないと言われて一人で寝ている寝室の天井だ。
「まぁ!リリアリス様お目覚めになられたのですね!」
少しやつれた顔のマーサが涙を浮かべている。
「まさか!カイの身に何か?」
マーサがこんな顔をしているなんて、息子のカイに何かあったに違いない!
ワーウルフの群れが塀の向こうにあふれていたのを思い出す。
レッドが駆けつけてくれて、助かったと思って意識を失ってしまったけれど……。
あの後、何があったの?
カイを……領民を私は助けられなかった?
すっと背中が冷たくなる。
「いいえ、カイは無事です。街の皆も。怪我人はいますが、死者は一人も……」
そう言って、マーサが顔を両手でふさいで泣き出した。
あれ?
誰も死んでないのに、どうして泣くの?
「えっと、怪我……は深刻なのかしら?」
擦り傷切り傷打撲裂傷骨折……そんなものではない怪我だって考えられる。命は助かっても、生活に支障をきたすような怪我だって……。
リリアリスの心がずきりと痛む。
役立たずの光属性魔法……。
光魔法だって役に立つんだ!と、何度だって私は口にできるけれど。それでも、もし聖属性魔法が使えたらと。
癒しの力、回復魔法が使えたらと思ってしまう。
「いいえ、リリアリス様、カイに聞きました。リリアリス様が光魔法を使ってくれたおかげでワーウルフを倒すことができたと。もし、リリアリス様がいなければ、何十何百という人が犠牲になっていただろうと……下手すれば、領都は壊滅していた可能性もあると……」
私が領都の壊滅を防いだ?
大げさすぎる!話を盛りすぎだろう!
でも……。
「私の、光魔法が……役に立ったんだ」
ふっと痛んでいた気持ちが軽くなった。
マーサの言うことは大げさだとは分かっている。実際にワーウルフを倒したのはレッドたち冒険者や公爵家の騎士や兵だろう。
ワーウルフの強さを思い出して身震いする。
咆哮で死をも恐れず突っ込んでくるワーウルフたち。あれを倒すのだから、皆すごい。
きっと、鍛え上げた筋肉で美しく剣を振るっていたのだろう。
くっ、見たかった!
「なんで私は、倒れてしまったのだろう……」
悔やまれる!
思わず漏れたつぶやきに、マーサが顔を覆っていた手を下ろしてた。
「リリアリス様は、魔力切れでお倒れになったのです。魔力が切れても魔法を使おうとすると生命を削ることもあると……」
あー、魔法って、魔力切れたらそういう設定になってるのも確かにあった。
やばい。死なないにしても寿命がちょっと縮んじゃったりするってことよね。
ふと、顔も見たこともない夫を思い出す。
アルフレッド様は火魔法を使い戦闘に立って魔物討伐を行っているんだよね。領地を守るために……と、無理して何度も魔法を使って命を縮めていたりするかもしれない。1度や2度ではなく、何十回、何百回と限界を超えて魔法を使えば、どれだけ寿命を縮めてしまうのか。
愛するつもりはない……って、もしかしたら「残り寿命は少ない」からなんて理由があったりしないよね?
別に、愛してるわけではないけれど、誰かが死ぬのを喜ぶ趣味もない。
「ねぇマーサ、アルフレッド様も私のように倒れることがよくあるの?」
マーサが首を横に振った。
間が空きました。