ギルド長視点5
「アルフレッド様、それではだめです!」
「どうしてだ。顔を隠せば、俺だってわからないだろう?」
リリアリスを屋敷に連れていくと、マーサが大騒ぎで他の使用人とともにアリスの身なりを整え体が温まるように準備をしベッドに寝かせた。
医者の見立てで問題がないと診断されてからはあとは目が覚めるのを待つだけとなったのだが……。
目が覚めた時に、公爵としてリリアリスの前に立とうと決めた。
レッドだとばれないように。
顔全体を覆う仮面があったので顔を隠した。
「声もそのまま、髪の色もそのままじゃ、すぐにばれます」
マーサがどこからかかつらを持ってきた。それから、口の中に布を詰めるようにと小さな布を丸めて手渡される。
口の中に詰めると、しゃべりにくく、いつものように言葉が出てこない。
「これでいいか?」
もごもごとくぐもった声が出て驚いた。
「はい。これで、大丈夫でしょう」
マーサがうなづくと、包帯をあちこちに巻いたカイが待ったをかけた。
……今回、希少な回復魔法使いは重傷者の治癒に当たっているため、命に別状がない者は医者に包帯を巻かれて終わりだ。
「ばれますよ、絶対」
カイがきっぱりと言う。
「いや、声も違うし髪の色も違う、さらに顔は全く見えないだろう?ばれるわけが……」
カイの視線が俺の体に向く。
「体?体付きでばれると?」
まさかとはとても言えなかった。
アリスなら、筋肉の付き具合で人を見分けるくらいはできそうだ。
いや、できそうじゃない、絶対できる。
「よし、マントだ。マントで体を覆うことにしよう!」
準備万端、アリスの目が覚めるのを待っていると、サラが部屋に来た。
「リリアリス様が目を覚ましました!」
びくりと肩が揺れる。
初めて、アルフレッドとしてアリス……いや、妻となったリリアリスと対面するのだ。
そう。もうギルドに行くなと伝えるために。
どんな顔をするのだろう。俺を……公爵を恨むだろうか。いや、恨まれたほうがいい。公爵領に未練を残さず、令嬢として王都に戻っていったほうが幸せだろう。
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書籍が発売されます。アース・スタールナより10月1日です。
書き下ろしが追加されております。
イラストはriritto先生です。とてもかわいい絵を描かれる方で、なんていうか……見ただけでほんわりと幸せになれます!よろしくお願いいたします!