ギルド長視点1
■■ギルド長視点■■
ゴブリンとオークの共生している群れの討伐に、冒険者だけではなく念のため騎士も向かわせた。
周りに警戒しつつ討伐を開始すると、懸念していたスタンピードの兆候はなかった。
群れをつぶすだけで問題なさそうだ。
「ギルド長、あれを!」
ほっと一息ついたところで冒険者の一人が空を指さした。
「あれは……!」
領都の空に浮かぶ光の紙。
急いでポケットから暗号解読紙を取り出す。
まだ、内容は検討中で仮のものだ。光属性の受付嬢とよりよい形を検討してから運用するはずだった。
見る角度によってよく見えないという課題が解決していないのと、光の数と伝える内容を精査しようということになっていた。
緊急時にはなるべく少ない数でたくさんの情報を伝えられるようにと。
「まだ、実用化前のはずなのに……」
使用せざる得ない何があったんだ?
紙が完成すると、光がいくつか消えていく。
ポケットから出した紙に書かれた文字と、消えた光の場所を照らし合わせる。
「街の西側に……ワーウルフの群れ」
群れが街に近づくことなどないはずが、どういうことだ?
そう、わざわざ殺されに来るようなものだ。ワーウルフは街に近づかず、森や草原にいる人間を狙う。
……例外を除き。
「スタンピード……」
スタンピードを疑い、ここに来たが。別の場所から起きるのか?
「冒険者にこの場は任せる。騎士たちは領都に向けて移動。ワーウルフの群れが出た。急げ!」
俺の指示に、すぐに騎士団長のソウがうなずき騎士たちに現在の状況確認をしつつ伝達を飛ばしている。
人数の確認と隊列を作ることを同時に行い、あっという間に移動を開始する。
「ここは俺に任せて行け!後始末と周りの状況調査、終わってから向かう」
ガルダは元ギルド長だ。俺なんかよりも経験豊富だ。あれこれ言わずともすべて任せておけば大丈夫だろう。
しかし、一瞬言葉を切ると、空を見上げた。
「いや……終わらなくとも、必要なら、すぐに向かう」
ガルダが見たのは空に浮かぶ連絡用の光だ。
紙を取り出し、そこに書かれた文字を示す。
「一番下の段だ。警戒レベル右から順に1から8まで並んでいる。5を超えたら頼む」
ガルダがパンっと俺の背をたたく。
「ほら、行ってこい」
ガルダがいるから大丈夫。素直にそう思う俺は、まだまだだなと苦笑しながら領都へと急ぐ。
「まずいな……急がないと」
重い雲が空を覆い始めている。
ワーウルフはとても動きが速い。1体を倒すためには3人以上で回りを囲むのが有効だ。
もしくは、火魔法での攻撃。
群れであれば、1体ずつ3人で囲んで始末するのがむつかしくなる。
そして、雨が降れば……。火魔法の威力が下がる。威力が下がるだけならいい。
火魔法に雨粒が当たれば蒸気となる。あたりに蒸気が広がれば視界が悪くなる。
……視界が悪くなれば鼻が利くワーウルフが有利となってしまうのだ。
だから、雨が降れば火魔法は使えない。