役立たずな光魔法だけど!
「【雷光!】」
私は光属性だ!
どんなに人を羨んだって変えることはできない。もし聖属性だったらなんて思ったって変われないんだ。
落ち込んで、嘆いて、羨ましがって、嫉妬したって……変わらない!無駄だ、無駄だ。
ワーウルフロードの咆哮が止まるのは一瞬のこと。
そうか。そうだ。本能で怖がっている。むしろ反射だろうか。雷に対して何かトラウマでもあったのか。
どちらにしても、スキル咆哮でワーウルフの本能を奪ってしまうとしても、スキルを使うワーウルフロードは本能をどうにもできないってことだろう。
一瞬ひるむなら。
「【雷光】」
ガラガラピシャーンと大きな音が響き渡った。
本物の雷の音だ。私が今光らせた光の音ではない。だけど、そんなの他の人……ワーウルフロードにはわからないだろう。
怯えればいい。
咆哮が止まるとワーウルフの動きが鈍る。激しい雨に撃たれながら冒険者たちは扉の前に立ちお互いをかばいあうようにワーウルフを倒していく。
「応援が来たわ」
お姉さんが塀の内側を見て歓喜の声を上げた。
振り返ってみると街を突っ切ってこちらに近づいてくる騎士の姿が見える。
「あと少し持ちこたえれば」
お姉さんが弓を引く。
「だめね、雨で滑ってうまく弾けない……下に向かうわ」
扉の内側から矢を放ちだした。あの場所なら塀が雨除けになっている。激しい雨で声がかき消されていく。
けれど、カイたちの様子を見ると、お姉さんが応援がもうすぐ来るということを伝えたのだろう。
ほっとしたような様子に、あと少しだ。耐えるぞ!と気合を入れなおす様子が見られる。
「ヴォォォォーー」
気合を入れなおしたのは冒険者たちだけではなかった。
そんな。
ワーウルフロードがひときわ大きな声で咆哮スキルを使った。
ワーフウルフの 目が薄く赤く光っている。
何?まるで……怒りの色。
いろいろな創作物を思い出して背中がぞっとする。
森の中からはさらに多くのワーウルフが突進してきた。どこにそんなにいたのか。
もう、1000を超えるのではないだろうか。
ワーウルフの大群が目を真っ赤にして同じ方向を向いてかけてくる姿。
「ワーウルフが怒っている……」
違う、興奮しているだけかもしれないし、咆哮スキルで完全に操られただけかもしれない……そんなことはどうでもいい。
あと少し持ちこたえればいいのに。
「ああっ!」
目が赤くなる前のワーウルフよりも、動きが鋭くなったように見える。もしかして咆哮スキルに身体強化バフが?
同時に何体もの動きが速くなったワーウルフが塀の外の冒険者たちを襲う。
「危ないっ!」
って、見てる場合じゃない。
カイの腕にかみついたワーフウルフを別の冒険者が剣で薙ぎ払う。その冒険者の足にワーウルフがかみつき、今度はカイが剣でつく。
二人を別のワーウルフが……!
やめて!やめて!やめてー!
「【雷光っ】」
ひるめ!
「【雷光!】」
怖がれ!
「【雷光っ!】」
怯えろ!
「【雷光ぉっ!】」