いっぱい可能性がある
子供たちが表情を引き締めた。中には泣いてる子もいる。
そりゃそうだろう。
私の中のリリアリスも泣いてる。
役立たずだと言われ続けた光属性魔法を持つ私たち。
役立たずなんかじゃないと、言い聞かせたって、やっぱり役立たずだという思いと揺れ動く。
私が教えたLEDだって結局は「明るくするだけ」の延長上でしかない。今まで暗くたって生活が成り立っていたのだから。必要がない。
それが、私たちにもできることが……役に立てることがあると知ったら。そりゃ……。
「いい、サラ、これだけは絶対に守って頂戴!」
ひときわ大きな声を出す。
「皆も、これだけは約束して。守れないのなら、やはり私たちは役立たずのままになるから」
びくりと皆が身を縮める。
「無理しちゃだめ。絶対に無理をしてはだめだからね」
私の言葉にサラがハッとする。
「役に立てると、張り切りすぎて周りが見えずに迷惑をかけてしまうかもしれない。無理をして危険な目にあい、誰かを傷つける結果になってしまうかもしれない」
子供たちの顔を真剣だ。
「……調子に乗ってはだめ。少しできるようになったころが一番危ない」
例えば車の運転とかね。よく言われるよね。慣れたころに事故るとか。
仕事も覚えたころ凡ミスをする。油断大敵だ。
「サラ、子供たちを頼みます」
サラがうんとうなづいた。
もう一度子供たちの顔を見て笑う。
「みんなはサラや大人たちが無理しないようにちゃんと見ててね」
子供たちが任せてとうなずいた。
「行きましょう」
さすがにカイをおいていくわけにはいかないと声をかけると、いつの間にかカイはいつもは身に着けていない防具を身につけていた。
「アリス様」
カイが私に胸当てを差し出す。おとなしく身に着けてから出発。
そう、文句なんてない。なんで男性用なのだ、女性の防具といえば、こういうんじゃなくてああいうんだよね!とか言わない。
でも、これだけは文句を言わせて!
急いでるからって、のろまな私の手を呼びに来た冒険者が、足をカイがつかんで二人で荷物のように持って走るのはさすがにないんじゃないかなぁぁぁぁぁ!
無だ。この恥ずかしい運び方をされている現実から逃避しよう。
くそっ!
「あ!」
空に、子供たちがLEDの紙を打ち上げてる。
なんで?まだ教えるべき大人が到着してないから、目印替わりなのかしら?
ギルドの場所を知らない人もいるし。「あの空のあれを目印に行け」とか。
あとは「光魔法であんなこともできるんだ、それを教えてもらえ」というためとか?
倉庫で作ったものより大きな大きな紙。
ずいぶん遠くから見えるだろうな。……これ、巨大モニターにドラゴンを映し出す計画の第一歩なのでは?
いやいや、さすがに三原色でテレビをは無理だから……。
あ、あれだ、あれ!色を教えれば、あれができる!
甲子園の観客席で、色のついたボードを手に持った人が次々と色を変えていき文字や色を表現するあれ。LPL学園の伝統的な応援の方法のあれ。マスゲームみたいなあれ。
子供たちで担当場所を決めて、タイミング合わせて色を変えていく。楽しそうだ。
娯楽の少ない世界だ。冬場のイルミネーションは無理でも、これ、夏のお祭りの出し物にならないかな?
夏なら雪で街道がふさがることもないだろうし。本当に火が魔物除けになるのであれば、街道の要所要所に火光魔法を設置するというのはどうだろう?うーん。でも観光客呼び込める自身はないなぁ。流刑地のイメージが強いだろうから。あんな場所に行ってどうするって……。
はぁ。まずはやっぱり観光地化よりも、産業……輸出……って、国内だから輸出とは言わないけど。とにかく、売れる物か。