光魔法で、守る
「でもっ」
「私は、こ……」
公爵夫人というのは言わないほうがいいんだっけ?
「光魔法研究者です。専門家です。責任は、私が取ります」
「ですが……」
受付のお姉さんがちょっと考えてから、うなずいた。
「わかりました。指示をお願いします」
「火が魔除けになるのであれば、街の中では火を準備させてください。それから、街にいる光属性の人たちに声掛けをしてください。子供たちに火光魔法を教えさせましょう」
私の言葉に呼びに来た冒険者が口を開く。
「待ってくれ、今から教えてたら時間が。一刻も早く西の向かってほしいんだ」
「わかっています。子供たちは万が一魔物が街に入り込んだ時のための防衛に。様子がおかしいのでしょう?もしかしたら……」
私が何を言おうとしたのか伝わったようだ。
一瞬皆が黙り込んだ。
スタンピード……。街に向かって無数の魔物が押し寄せてくるかもしれない。備えないと。備える方法がほかにもあるならすべきだろう。
「西へは私が行きます」
私の言葉に、大露機の声が上がった。
振り返ると、いつの間にかカイとサラが私の後ろに立っていた。
「私も行きます!」
サラの言葉に、どうするべきか一瞬悩む。
「どれくらいの数の火光が必要?」
「30。できればもっとだ。その間にほかのやつが火光を使えるようになれば……」
「あら、たったの30でいいの?だったら私一人で問題ないわね。サラ、あなたは子供たちと一緒に街の光属性魔法の大人に火光を教えてあげて」
サラが首を横にふった。
「いえ、私が西に向かいます」
そう言うと思った。そりゃそうよね。
でも……。
「いいえ。サラ、あなたには屋敷との連絡係もかねてギルドにいてちょうだい。それからもし、西だけではなくほかの場所で必要になった時にはお願い
。子供たちのことも」
サラが渋々といった様子でうなずいた。
ほっとする。
屋敷との連絡係は私には無理だから。
だって、ギルドで公爵夫人だってばれたくないし。
そもそも、騎士団の人たちの話からすると、使用人の何割かは私の顔知らないみたいだし。あ、騎士団の人も知らない人多そうだったよね。
だったら、冒険者の服着てる私が公爵夫人なんてわかんないよね?
お仕着せ着てて、いろんな仕事を屋敷でしてたサラなら私より顔が知られているだろう。
街の人たちに対しても「公爵夫人の指示」だってその姿ならわかってもらえるでしょう。
いわゆる、このもんどころがめにはいらぬかー、ははー作戦第二弾。
それから、子供たちに向けて笑顔を向ける。
「皆で、街を守りましょう。光属性魔法で……守るの」