仲間、増えた
「そう、共生はスタンピードの前兆であることがあるの。だから迅速に対処しなければならないわ」
街が一つスタンピードで壊滅した……なんて表現が小説で出てきたのを思い出す。
前世ではフィクションの世界だったからまるで実感がなかった。
公爵領は魔物が多いって言う話を聞いても、魔物は街に出ないから大丈夫だと言われて安心してしまっていた。
それはもちろんアルフレッド様や騎士や冒険者や多くの人のおかげなのに。いつまでも安心できるとは限らないし、街の安全のために怪我をしたり、もしかして命を落とす人だって……。
「大丈夫よ。街からは距離がある場所だし、領都の南側の塀は二重になっているから。それに、もしもの時も、ギルドの倉庫の中は安全だから」
私が顔を青くしたのを見て、お姉さんは優しく声をかけてくれた。
サラちゃんが私の耳元に声をかける。
「大丈夫ですよ。まだゴブリンとオークが共生していただけなら。4種類のモンスターの共生が確認されたらまずいって話です」
なるほど。そういう判断基準があるのか。少し安心して息を吐き出す。だから、まだパニックになっていないってことなのかな?
「皆お腹を空かせてますよ。行きましょうアリス様」
サラちゃんに言われてハッとする。
「そうだよね、皆を待たせてたんだ!」
大量になったチキンナゲットとサンドイッチは、バスケット3個分。カイが先に倉庫へ行って、バスケットを2個置いて出てきた。
「もう少し情報収集してきます」
カイに頷いて見せる。
「お待たせ!今日はチキンナゲットだよ!一人……えーっと、一人結局何個なんだっけ?」
サラを振り返る。
「あの、アリス様……今日は食べる分以外はギルドに差し入れで回してはいかがでしょうか?」
サラの言葉に、子供たちに聞こえないように声を潜めてサラに伝える。
「あ!そうよね!サラ、申し訳ないけれど屋敷に帰って追加で料理長に作ってもらって?他のメニューでも構わないけれど、手でつまんでぱっと食べられる物の方がいいでしょう。そうね、ジャガイモもついでにぺらっぺらに薄く切ったのと、ペンのように細長く切ったのを油で揚げてもらって。塩を振りかけて。あ、ジャガイモはハーブ塩じゃなくて普通の塩でいいから」
サラははいと返事をして小走りで出て行った。
マヨネーズに続いて、異世界転生の定番、ポテトフライとポテトチップスうめぇー!をどさくさ紛れで実行。
いや、だから、片手で食べられて、エネルギーになるもの。あと、好き嫌いが少なそうなもの。あとは大量に簡単に作れるだろう物ということで。最適解じゃない?
「今日は、家へのお土産はサンドイッチね。このチキンナゲットはお腹がいっぱいになったら残りはギルドの人たちに食べてもらうの。ごめんね」
子供たちが首を横に振った。
「謝ることないよ!」
「魔物に街が襲われないように働いてくれてるんだもんね!」
やっぱりこの子たち優しいわ。
と、食事を開始したところで、後ろから声がする。
「さぁ、大丈夫だから」
受付のお姉さんが、2人の子供を連れてきた。
子供2人は、もじもじと居心地悪そうな様子だ。
「この子たちもいいかしら?」
「ええ!もちろん!まだ冒険者登録してない子もいるのよ!光属性なら誰でも歓迎よ!」
と、笑顔を向けると、さらに2人が申し訳なさそうな顔をする。中学生くらいの男の子だ。
「あやしいって疑ってごめんなさいっ」
「俺たちも、LEDとか火光とか使えるようになりたいですっ」
うん?
ああ、もしかして最初に光属性の依頼を受けてる子が12人いるって聞いてたけど、2人は参加しなかったその2人か!