金がほしいっ
「料理長っ!チキンナゲット増量で!」
調理室に戻ると、大きなバスケットに大量のチキンナゲットが詰められていた。
「え?一人20個ありますが、やはり一人30個に増やすということですか?」
料理長が、なぜか、そうでしょうそうでしょうと頷く。
「足りないと悲しいですから、早速作りましょう」
ちっがーう!
流石にチキンナゲット20個もあれば……いや、まてよ?子供だからそんなに食べられないと思ったけど、むしろ成長期の子供は大人以上に食べる生き物じゃなかろうか?
2キロの唐揚げがパンと共に姿を消すという怪異がおきたとSNSで見た気がする。
残ったものは持って帰ってもらう予定だし、もうひとつバスケットが増えてもいいくらいなのでは?
料理長の作ったハーブ塩を混ぜこんだチキンナゲットすごくおいしいし!
って、そうじゃない。
「持っていく分の追加は好きにして。そうじゃなくて、騎士たちがゴブリンの巣の討伐に向かったみたいなの。体を動かして戻ってきたらお腹が空いているでしょうから。肉と違って、ミンチにしてから作るチキンナゲットは冷めても柔らかく食べやすいのよ。だから戻ってきてすぐ小腹を満たせるように作り置きをしてあげてもらえない?」
筋肉にもよいタンパク質だからね!これ、大事!
油で揚げるけど、そこは討伐で体を動かしてエネルギー消費してるはずだから気にしない。
「お、おお、なんという気遣い!」
「騎士団へ公爵夫人からの差し入れですね!」
「チキンナゲットは喜ばれるでしょう!」
公爵夫人からの差し入れ?そういうことになるの?
気遣いっていうか。何もできない自分がいやだっていう、私の自己満足。
「いいえ、皆さまが作ってくださるんです。大変だと思いますがよろしくお願いします」
軽く頭を下げてから逃げるようにして調理場を後にする。
仕事を増やしている。屋敷の料理人は給料制だろう。食堂なら売り上げが上がると喜べるかもしれないが、屋敷の人は仕事が増えるだけだ。申し訳ない……。そういえば、マーサがサラが屋敷中を照らしたから仕事が増えたと使用人に言われたって冗談ながらに言っていたけど。中には本当に仕事を増やされたと不満に思っていた人もいるかもしれない……。
……困ったな。給料を増やすとかボーナスを出すとかできたらいいんだけど、何かするたびにそんなことしてたら公爵家の財政を圧迫しかねないし、もしより財政が圧迫して、給料を下げなくちゃいけないとか突然今まで出ていたボーナスが出なくなったときにさらに困るだろうし……。
「あー、金ぇ!金儲けをしたいざますっ!」
異世界知識チートであれやこれを作って店を作って売る!っていうのは、王都とか買う人がいる街限定の夢物語なのだぁ!
貧しい街の人たちに何を売れというのだ!何をかわせるのだ!貧しい領地の中では経済回そうにも限界がある。やっぱり外貨……外国ではないけど、他の領地、王都、富めるところからお金を引っ張ってこなきゃ豊かにならないよっ!
交通の便が悪くともなんとかなる特産品を考えないと。交通の便が悪いんだから、軽くて小さくて高価なものを運んで売るのが一番理想的だ。
宝石が代表的なものだよね!
海沿いなら真珠養殖って手もあっただろうけど!真珠の作り方は知ってるよ。貝に真珠の元になる丸くカットした核を埋め込むんだよ。淡水パールは貝紐みたいなの埋め込むんらしいんだよね。だから丸く核を加工する必要もないし、1つの貝から20個とか30個とか真珠が取れるらしい。……って、むしろ海がないなら淡水パールを作ればいいんじゃない?
……うん。湖もないわ。いや、あったとしても魔物が……って話なんだよね?
ああ!もう!魔物を何とかできないの?いや、今も街は襲われないようにできるようになったんだよね。それだけでも何とかしてるうちなんだよ。これ以上なんとかしたかったら、魔物を倒す人を増やす。増やすにはお金で雇う……。