君を愛することは無い
「美味しい。ありがとう」
コップを返すと、マーサが嬉しそうに笑った。
「奥様、旦那さまからお手紙が届いております」
マーサはポケットから手紙を取り出して私に渡した。
「えっと……」
貴族……仮にも公爵であれば、手紙ってもう少しこう、綺麗な封筒に入れて、ちゃんと印とかするものじゃないかな?
4つに折りたたまれただけの紙を手渡された。
旦那様にも……歓迎されてないってことかな?
開いて見ると、とても乱暴な字で書かれている。
紙にペンが引っかかったのかところどころダマになっていたりインクが飛び散ったりしているし、変な染みまでついてる。
嫌がらせ?
読みにくい文字を目で追っていく。
えーっと……。
「君を愛することはない」
思わず声に出して読んでしまい、それを聞いたマーサが驚いた顔をしている。
しまった。
私よりも驚いている。
『この結婚は、王命で断ることができなかったものだ』
ですね。私の方もそうですよ……たぶん。親が勝手に決めたんだけど。
『君には申し訳ない』
ん?
私に申し訳ない?
『3年耐えてほしい』
3年?
耐える?
あ……。
3年白い結婚であれば貴族と言えども離婚ができるってそんなルールがあったっけ。そうする気なの?
アルフレッド様は20歳。3年後離婚してからも十分世継ぎを世残せる年齢だよね。
16歳の私は……。3年後離婚されたら、家には戻れないだろう。いや、戻りたくないよね。あんなところ。
となると、平民になって生活するわけだけど。就職できるのかな?
アルフレッド様が働き口をあっせんしてくれるといいけど。
……いや、それには、私が働けるということを証明しないと駄目か。侯爵令嬢で公爵夫人だった私が働けるなんて誰も思わないよね。
「あ、あの、奥様……その……それは何か、間違いで……魔物と戦う中、奥様が目を覚ましたと急使を送り持って帰った手紙にまさかそのようなことが……」
マーサが震えている。
「え……この手紙……」
魔物がいるような危険な場所で慌てて書いたの?
筆記具も十分にない場所。急ぎしたためた手紙。もしかしたらこの染みも魔物の体液だとか草木の汁だとか……?
ひぃー!それを、私は嫌がらせだとか一瞬でも考えてしまったなんて!
申し訳なくて今すぐ土下座して謝りたい!心の中でまだ見ぬアルフレッド様にスライディング土下座!
「あのね、マーサ、アルフレッド様は、3年の白い結婚ののち私と離婚するそうですっ!」
ってことはだ。3年が1日でも早く過ぎ去るようにと、意識が戻らない私と結婚式を強引に執り行った可能性が出てきた。単に忙しいだけではなかったのかもしれない。
使用人にも慕われてたみたいだし……。いい人だ(確定)!
('◇')ゞ言わせてみたいセリフトップ10のうちの一つ
君を愛することはない
出ましたwww