69 花畑の記憶
お久しぶりです。
誤字報告とても助かっておりますm(__)m
今後ともよろしくお願いします^ ^
さて、と私は遅れを取り戻すべく森の中へと足を進めていた。今日は頭痛もしないし、目眩もしない。せっかく広々とした場所に来たのだからどうせならファルたちにも自由に足を伸ばさせてあげたい。そう思い私はずんずん森の深部へと歩いて行った。
この森は初めてではない。4度は訪れた場所だ。が、しかし前の人生では従魔の扱いをうまく練習するどころか私は従魔すら召喚できないへっぽこぶりだ。森の探検などできるわけもなく、私が頭痛に見舞われた広場で先生とつきっきりで訓練していた。結局召喚はできないまま肩を落として帰路につき、いたたまれない気持ちでまた毎日を過ごす日々。
できればもうあんな経験はしたくないと思いつつ、実質探検は初めてとなる森を見渡す。先ほどまではちらちらと訓練している学生の様子も見られたが、どうやらここまでは皆入ってきていないらしい。生徒の姿は消え、川のせせらぎが聞こえる静かな空気に身を委ねる。ファルたちも心なしかいつもより元気に見える。しかし不思議だ。こんな深部までは初めてのはずだがどこか懐かしいような気がする。離れの森とよく似ているからだろうか。
そんなことを考えながらぼんやりと歩いていた時だった。
眩しい光が私を照らした。今までずっと森の木々に日が隠され、薄暗い空間だったのも相まり、眩しくて目を細める。
目が慣れ、少しずつ周りの様子が見れるようになり、あたりを見渡した。
花畑だった。白や黄色、ピンク、青といった色とりどりの花が咲き誇る。季節なんてバラバラだ。冬に見られる花もあれば夏に見られる花もある。どの花ものびのびと咲き誇り、統一感はないのにとても美しい。
こんなところあったんだ……と呆気に取られていると、ファルたちが元気よく走り出した。3匹が楽しそうに駆け回る姿を見た時、頭に稲妻が落ちたような衝撃が走った感覚に襲われた。
◇◆◇
『今日はいつもより上手に作れたんだ』
そう言いながら私は黒髪の青年に花冠を乗せられていた。主に白色の花で作られたそれは少し不格好で、とても愛おしく感じられた。
ここは……さっきまでいた花畑?
まだ頭が混乱しているのをよそに、私の口は勝手に動く。
『ほんと、今日はとっても上手にできてる!いつもは頭にも乗せられないもの』
ふふ、と笑みが溢れる。とても、とても幸せな気持ちで満たされていた。この目の前にいる青年はそんな私がまるで世界で1番愛しい存在だとでも言うような優しい笑みを私に向ける。しかしどうしてか、青年の顔だけは靄がかかったようにうまく認識できない
こんな時間が永遠に続けば良いのに。でも私は心のどこかでこの時間がいつか崩れることを知っている。
その瞬間まるで夢から覚めたかのような感覚に襲われ、自分が先ほど夢に見ていたのと同じ花畑で横たわっていることに気づいた。どうやら倒れ込んだらしい。
夢から覚めてしまったことが酷く悲しく、また酷く切ない気持ちで胸がいっぱいになった。
先ほどの青年は誰だったのか。ここと私、そしてあの青年とどのような関係があるのか。
なんだかこの合宿に来てから少しおかしい。ずっと頭全体に靄がかかっている感覚が消えない。思い出さなければいけない、でも思い出すことができない。
もどかしい思いを抱えたまま起きあがろうとした時、息を切らして走ってくるレオの姿が目に入った。私が倒れた事をリー達がレオに伝えに行っていたらしい。この合宿ではよくレオの焦っている姿を見るな、と他人事のように考えてしまった。
「大丈夫?!」
よほど焦ってきたのか、はたまた大魔術師しか使えない魔術を使ってきたのかわからないが、いつものレオン・ファーネストの姿ではなく、私がよく見慣れたレオトール・サザルクの姿でレオは現れた。
「大丈夫。……ごめんね、何度も倒れちゃって。忙しいところ邪魔しちゃったかな。リー達もありがとう」
レオの手を借りて体を起こす。
ありがとう、とレオの顔を見た時、あの青年が頭をよぎった。黒髪の、私の愛しい人。
でも……思い出せない。あの人のような気がするし、違うような気もする。
そんな私を不思議に思ったのか、レオが再び大丈夫かと声をかけてくる前に、私の言葉が先に出ていた。
「あなたと私、そしてこの場所に何か関係があるの……?」
レオの目が見開かれ、何か言おうとした時だ。まるで返事を聞いてはいけないとでも言うかのように、レオの初めの言葉を聞く事なく私は意識を手放した。
◇◇◇
目を覚ます。この場所は……よく知っている。私の寮の自室だ。
どうして自室にいるのか、合宿はどうなったのか、目を覚まし数分して入ってきたライラが全て教えてくれた。
どうやら私の体調不良が目立ち、今回の合宿で私は合格ラインを達成しているとのことで返されたらしい。ゆっくり休むと良いと書いた学園長のメッセージカードがサイドテーブルに置いてあった。
わからない。わからない事だらけだ。でも何故か、目を背けてはいけないことのような気がして胸がざわざわする。消化不良のような感覚がずっと続く。
自分なりにモヤモヤを晴らそうと図書室へと行こうとする私をライラが強制的にベッドへ寝かす。どうやら熱が出ていたらしい。仕方ない、と諦めベッドで寝る生活を3日ほど続け、ソフィアナとミモザが見舞いにきてくれた日にはベッド生活も終わり、普段の日常へと戻っていった。




