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68 私の常識は何処へ

「イリス!もうっ、心配したんだから!!」


 部屋へ戻るとソフィアナとミモザが出迎えてくれ、ソフィアナは私に抱きつく。

 持ってきている荷物を整理し、自分のスペースへと置いた。さすがほとんど貴族ばかりが使う部屋というのもあり、とても広々としている。一部屋しかないがそれでもベットを3台とソファ、簡易キッチンなどが設備され、まだ十分な広さを誇っていた。

 この合宿には侍女達や使用人は連れてくることができない。朝食と夕食は全員が食堂へ集まって食べる形となっており、昼食は基本自由行動であるため、サンドイッチなどが入ったバスケットを渡される。食の心配をする必要はない。それにさすがウィステリア学園というのもあり、どのご飯もレベルが高い。おそらく一流シェフを雇っている。

 私はあいにく意図せず1日目は保健室生活となってしまったため、ご飯は保健室で頂くこととなった。若干病人食のようだった気もしなくはないが、美味しかったのでなんでもOKだ。



「私が倒れたとき、どんな様子だった?」


 恥ずかしいことに大勢の前で倒れてしまったため、ほとんどの人が私が倒れた事実を知っているだろう。あまり大事にはなっていなければ良いが。そう思い2人を見ると何故か2人はにやにやと笑いながらこちらを見ていた。


「うふふ、イリス。うふふ」


 少し嫌な予感がする。


「ファーネス様がね、イリスが倒れたすぐに駆けつけてくれたのよ。私たちよりも早かったわ」


 レオが!?

 確かに倒れる前に誰か走ってくるような影が見えた気がしたけど、あの人影はレオだったのか。だからレオがお見舞いに来てくれたのか。


「その後イリスを横抱きにしてイリスをどこかへ連れていってしまったんだ。だから私たちは結局この時間までイリスに出会えなかった」


 お姫様抱っこね、と横からソフィアナの訂正が入る。

 確かに、ソフィアナとミモザならお見舞いに来てくれそうな気もする。もしかしてあの保健室のような場所、あまり人が入らないところ……?


「あまりパッとしない見た目のファーネス様だけど、今回はかっこよかったわ!どこぞの誰かさんよりもよっぽどイリスのこと思ってるわ」


 ヴィラクス殿下は……考えるまでもない。きっと私が倒れようと無視だ。それにしてもレオはヴィラクス殿下がいる中で私を横抱きしたのか。なかなか勇気がいる事ではないのだろうか。仮にも婚約者だし。体調不良という非常事態だからいいのか。



「そういえばイリス。あなたずっと何処にいたの?」


「保健室のようなところ?かな。この建物の一階の1番端にある部屋よ」


 レオが去って数時間するとドリトル先生が夕食を持ってきてくれた。その後、今いる部屋の場所について説明されて、体調が良くなったら自分の部屋へ戻るように指示されたのだ。


「私てっきり馬車から降りてきた時に見えた神殿の中だと思ったの。だからちょっと拍子抜けしちゃった」


 保健室の中の作りが神殿のよう(・・・・・)だったからそう思ったのだろうか。ん?何か違和感を感じる。


「あら、イリス。神殿は私たち入れないわよ。あそこは貴族であってもごく少数の人しか入れないの」


 そうだった、と先生の説明を思い出す。あの神殿に立ち入らないようきつく言われていた。でもじゃあ何故私は保健室のことを神殿のような場所と思ったのだろうか。外観からそう判断したのだろうか。


「どうして神殿の立ち入りは禁止されているのかしらね」


 どうやら王太子であるヴィラクス殿下も入ることができないらしい。神殿の管理はこの土地の所有者であるサザルク家が行っているようだが、私の知る限りサザルク家の当主と現王様しか入ることができる人を知らない。

 うーん、と考えているとソフィアナが驚いたように私の疑問に答えた。


「イリス、もしかして神殿がどんな場所なのか知らないの!?」


 えっ、そんなに驚くこと?もしかして……常識……?

 恥ずかしながら知らない、と返すと親切にもソフィアナは教えてくれた。


「神殿はね、三柱様と私たち国民の架け橋となる場所なの。国中探してもここにしかないわ」


 架け橋、とはどういう事だろうか。三柱に直接会うことのできる場所ということだろうか。今や彼らはどこにでも現れるけど、昔は神殿だけだった、とか?じゃあなんで多くの人が立ち入りを禁じられているのだろう。


「もちろん、三柱様とお会いするのは私たちではないわ。使徒と呼ばれる人たちが三柱様と私たちを繋いでくれるの」


「使徒?」


 聞いたことがない単語が出てきた。三柱はまだしも、使徒?


「そう、使徒様。数百年前に途切れてしまって以来、もういなくなってしまったけど。だから今は私たちと三柱様を繋ぐものがいなくなってしまったの。そんな状態がもう長い間続いているから、三柱様も使徒も御伽話のような存在になってしまっているけれど……私はどちらも存在していたと確信しているわ」


 な、なるほど。ソフィアナの熱弁に圧倒されながらも、使徒については理解できた……と思う。教えてもらったことを整理していると、ミモザがソフィアナの言葉に付け足した。


「その使徒が住まわれていた場所とされるのがあの神殿だ。私たちは泊まっているこの場所は使徒様や三柱様に会いにきた人たちのために作られたら建物らしい」


 ここは昔から一般開放していた場所というわけだ。ふむふむ、少しずつわかってきたぞ。


「三柱様や使徒様との関わりが深い場所だからこそ、従魔の扱いがすごく楽なのよね。空気中に魔力が漂っているみたい。だからここを合宿場所にしているのね」


 ソフィアナが付け足す。だからわざわざこのような遠いところまで来て合宿なのか。少しずつ今までの謎が解けておくような気がした。


 それからミモザたちと今日は何をしていたのか、明日の課題はどうだ、などあれこれ話しているうちに夜は更け、私たちは眠りについた。

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