65 少女の行方は〈マリアナ視点〉
皆さまお久しぶりです。
本当に長い間投稿期間を空けてしまい、申し訳ありませんでした。私生活の方でもひと段落つき、これから活動を再開させていこうと思います。
長い間待っていてくれて方、本当にありがとうございます(_ _)
この物語を初めから少し訂正させていただいたので、気になる方は読んでみてください。(2026/2/3)内容はあまり変わっておりません。
これからもどうぞよろしくお願いします。
イリス・ラナンスキュラに部屋を追い出されて私はぎりっと奥歯を噛み締めた。何故私がこんな思いをしなければいけないのか。何故こんなにもうまくいかないのか。ヴィラクスの申し訳なさそうな顔を見て余計に腹が立った。
◇◆◇
前世の私、笹井陽菜は17歳でトラックにはねられて死んだ。学校の一部で話題になっていた乙女ゲーム、『君といる世界でいつまでも』通称『君セカ』にのめり込み、スマホに夢中になっていたら横からドーン。たぶんその後の記憶はないから即死だったんだと思う。
気づくとあたり一面真っ暗になってどこからか声が聞こえた。
『ハルナ、ハルナ、私の声が聞こえるかしら?』
「聞こえ……るけど、あなたは誰なの……?」
混乱する頭で今私はどういった状況に置かれているのか考える。どこを向いても闇。声も闇の向こうから聞こえてくる。正直怖くて怖くて仕方がなかった。
『よかった、聞こえるわね。私はアンナ。あなたにお願いしたいことがあるの』
これは……もしかして今よくある異世界転生……?
私の考えは当たっていたようで、声の主、アンナが続けた言葉にさほど驚くことはなかった。
『あなたにはこれからある世界に行って欲しいの。『君セカ』……といえばわかるかしら。あのゲームは今から行ってもらう世界の概念があなたがいた世界で乙女ゲームとなったもの。世界観はゲームの世界のままよ。だからあなたなら大丈夫だと思うわ』
なるほど。これは私が選ばれた、という考え方でいいようね。最近ラノベなんかでよく見る異世界転生系はみんなそうだもん。
「わかったわ。私は何をすればいいの?」
『そうね……。イリス・ラナンスキュラ。彼女を絶望のどん底へ落として欲しいわ』
イリス・ラナンスキュラ。ヴィラクス殿下とアルベルト公爵子息、隠しキャラのルートを選ぶと邪魔をしてくる悪役令嬢。他の攻略対象者、ルドフィル・リディやテオリス・エルアティナはまた違う悪役令嬢が出てくるのだけど……、私はあまりやりこんでなかったからよく覚えていない。彼女のクリア直前の妨害はそれもとても腹が立つものだった。
「要するに私がハッピーエンドを目指してイリス・ラナンスキュラを断罪すればいいということね。わかったわ。任せて」
『……引き受けてくれて嬉しいわ。あなたみたいな元気な子を探していたのよ。それじゃあ……検討を祈っているわ』
アンナの声は闇へ吸い込まれるように、そして私は何かに引っ張られるような感覚に気持ち悪くなり、思わず目を瞑る。そして目が覚めた時には『君セカ』の主人公マリアナ・ラスケルへと転生していた。
◇◆◇
学園へ入学し、入学式前にヴィラクスとぶつかったまでは良かった。それからヴィラクスは私によく話しかけてくれるようになり、今では恋仲と言っても過言ではいくらい私達の仲は深まっていった。元々私の最推しはヴィラクスだったし、ヴィラクスと結婚することでこの国で1番位の高い女性になれるのだ。誰が嫌というのだろうか。この国の女の子なら一度は憧れるものだ。
ただ何かがおかしい。まず目を疑ったのはイリス・ラナンスキュラが兄であるアルベルトにエスコートされながら入学式のホールへと入ってきたこと。設定ではアルベルトはイリスを毛嫌いしていたはずだ。兄だからと近寄ってくるイリスを虫を見るような目で見下ろしていたスチルを思い出す。
あの場面はあの場面でMっ気がある人達には人気があったのだけれど……今はその話はいいや。
それに続いて私の親友になるはずだったミモザ・ライラックやソフィアナ・キティリスがイリスの友人になっているし、アルベルトはイリスを溺愛している。それに極め付けは学問ではどれもパッとしなかったイリスがヴィラクスを差し置いてテストでは毎回満点1位。ゲームと一緒なのはヴィラクスだけ。
あまりにもシナリオと違いすぎたからイリスも転生者なんじゃないかって疑っているけれど、今のところそんな様子も見られない。
何もかもがうまくいかない。イリスを絶望のどん底へ落とすどころか、私が幸せにならないと意味ないじゃない!あーあ、こんな思いするんだったら逆ハーエンドにすれば良かったかな、とまで思う始末。
ヴィラクスは相変わらず私に愛を囁いてくれるけれど、それじゃ物足りない。私はヴィラクスが最推しだけど、それと同じくらい隠しキャラだって好きだし、アルベルトも勿論好きだ。アルベルトはイリス溺愛で卒業しちゃったし、隠しキャラはまだ出てきていないし……。
これからあるイベントもうまく乗り越えられるかな……。いや、でも何て言ったって私は主人公だ。この世界はきっと私が死んだ後に出た追加ダウンロードみたいなものですハードモードの世界を生きているに違いない。
まだゲーム終了まで3年もある。まだまだイベントだっていっぱいあるし、2年生になると隠しキャラにも出会えるルートだって出てくる。
再び希望を膨らませながら、私はそのまま別室でヴィラクスを待つのだった。




