64 イリス的七不思議の1と2と3と
読んでくださっている皆様、お久しぶりです。
無言で長らく期間を空けてしまい大変申し訳ありません。
これからも今年度中は投稿、感想への返信が難しく、また最新話を更新できない状態になると思います( ´Д`)
活動復活までお待ちいただけると幸いです。
これからもどうぞよろしくお願いしますm(__)m
さて、どうしたものか。
今日こそはと意気込んでいた王妃様とのお茶会はあっけなく失敗の終わり、今目の前にいるのは私の婚約者、ヴィラクス殿下。
後はお若い2人で〜と笑顔で退出された王妃様の目には私達がどう映っているのだろうか。少なくとも私は使用人のヒヤヒヤした視線は感じることができる。それにいつも以上に使用人達は視線が定まってないから……もしかしたらこれはマリアナ子爵令嬢来てるな。
なんとも言えない空気が私達の間を流れる。いつもは私が話を提供してその話が膨らむわけではなく沈黙の時間が過ぎるのを待つばかり。それを7年+α続けてきた私を褒めてあげたい。
今回もいつものようにと口を開こうとしたところ、珍しくヴィラクス殿下が言葉を発した。
「この前の従魔召喚で……何やら見慣れぬ従魔召喚したようだな」
びっくりしたのも束の間、話の内容が今1番私の中でタブーな話だったので違う意味で冷や汗が出る。どう転んでもファル達のことについて話さなければいけない。どう言おうか、どうするべきなのだろうか。学園長、レオ、助けてほしい。
「お前は私に恥を欠かせたいのか?」
……は? 彼は何を言いたいのだろうか。私は王妃教育で少なからず会話術を身につけさせられるが、これは想定外。何がどうなってそんな思考回路に落ち着くのだろう。
「……仰っている意味がよくわかりません」
正直に言うと、きつく睨まれた。疑問しか浮かばないのだが。私の返答に睨む要素、あったかな。
「お前はいつもそうだ。学園の皆がいつも注目するのはお前で俺の事を鼻で笑っている。まるで腐っているな!!」
??? チョトオッシャッテイルイミガヨクワカリマセン。
なんだって? 私が殿下を鼻で笑っているって? おかしな事を言うものだ。私殿下に対して何もしていないし、逆にマリアナ子爵令嬢のせいで私とヴィラクス殿下との仲を心配する者、面白おかしく吹聴する者など様々だが、迷惑を被っているのはこちらだと声を大にして言いたい。
だがどうやらヴィラクス殿下は現在頭に血が昇っている様子で私の話をまともに聞ける状況ではない。それにヴィラクス殿下だって黄金のトラを召喚していたじゃないか。私からしたら十分だと思うけど……。
「私は一度もヴィラクス殿下のことを鼻で笑ったこともありませんし、馬鹿にしたこともありません」
ひとまず私だけでも冷静に。だがその言葉は余計にヴィラクス殿下に油を注いだようで、彼は顔を真っ赤にして言い返してきた。
「お前は出会った時からそうだ。顔色も一切変えないで俺の言葉全てに興味がないように振る舞う。毎度毎度俺がどういった気持ちでお前とお茶をしてやっているか知らないだろう。お前は王妃の座におさまりたいかもしれないが、残念ながらそううまくはいかないからな」
勝手に話し始めたと思ったら何やらおかしな方向性に思考回路がいっており、挙げ句の果てにはヴィラクス殿下には私は何がなんでも王妃の座におさまりたい女に見えているらしい。
どうやったらそういった考えになるのだろうかと不思議に思い答えを探す。正解はいつまで経っても見えてはこないけれど。
するとそんな私を見て余計に腹が立ったのか、ヴィラクス殿下は使用人に何かを言いつけて満足したような顔でこちらを見ていた。
使用人は真っ青な顔をして去って行ったが……もしかしてマリアナ子爵令嬢を呼びに行った……?
いやいやいや、そんな馬鹿なことはしないだろう。なんていったってここは学園内ではなく王城だ。流石の殿下でもそこまで馬鹿ではないだろう。
……と、みくびっていた私が悪かった。そうだ、ヴィラクス殿下は一度頭に血が上ると何も考えられなくなる人だった。
目の前に現れたマリアナ子爵令嬢を見て私は大きくため息をついた。
「……殿下。ここは学園内ではありません。すぐにマリアナ様を別の場所へ」
私達がお茶をしている場所は王妃様や王様も使用する場所、すなわち一介の子爵令嬢が入ってはいけない場所である。ヴィラクス殿下はただお前以外に俺は好きな人がいるからお前の王妃になる未来はないぞ、とかなんとか言いたいのだろうけど今はそういう場合じゃない。今すぐ彼女をここから連れ去らないと彼女が危険である。
「はっ、お前は私に愛されているとでも思っているのか? しかし残念だったな。私には——」
ヴィラクス殿下が何やら言っているが、どうせ分かりきったことなので無視。近くにいた使用人に声をかけてすぐさまマリアナ子爵令嬢をこの場から立ち去るように言う。だがしかし私は忘れていた。マリアナ子爵令嬢も頭のネジが少し外れていると言うことを。
「イリス様は私が邪魔でそんなことを言うのですね!? 私が子爵令嬢だからと嘲笑っているのですわ……」
「イリス!? お前には幻滅したぞ! 公爵令嬢だからと調子に、」
「マリアナ様、今はそう言う状況ではありません。この場にいると立場が危うくなるのはあなたですよ? 殿下もよくお考えくださいませ。今この場にマリアナ様を連れてくるのは得策でしょうか?」
ぐっと殿下は言葉に詰まり、マリアナ子爵令嬢と部屋から立ち去って行ってしまった。2人とも鋭い睨みを効かせながら。
ふう、と大きな息をつく。正直それどころではなかったためヴィラクス殿下が何を言っていたのかあまりよく覚えていないが、どうせいつものことだろう。使用人には申し訳ないことをした。後で胃薬あげようかな。
それにしても、何故ヴィラクス殿下はあんななのに王太子でいるのだろうか。テオリス様派の貴族が動き出してもいい頃だと思うが一向にそういった話は聞かない。
私の婚約ももうみんながわかっていることなのに解消されないのもイリス的七不思議の1つ。
もう一度大きなため息をついて、私は王城を去ることにした。




