63 後の始末は……知らないもん
あのあと学園長からも特にこれといった話はなかった。とりあえず私をあの場から離さないと、先生方が正気に戻った時に私が質問攻めに合っていただろうとのこと。
質問されても答えられないし、尚且つファル、フィン、レイクは私の魔術で作られた従魔ではないため、どういう括りになるのか私にもわからない。だから答えることはできない。
しかしイレギュラーである事は確かだが、とりあえず召喚で出てきた子達であることに変わりはないためひとまずはファル達は従魔として私のそばにいることとなった。
従魔と言っても四六時中そばにいるわけではなく、呼べば来てくれるとそう言った関係である。元々ファル達は頼めば私の元へと駆けつけてくれることが多かったから、次回からもなぜか従魔が現れない現象は起きないだろう。
それにしても、だ。あの場で質問攻めには合わなかったとはいえ私が何やらおかしなものを召喚してしまったという噂はすぐに広がるもので……。
みんなの従魔との共通点が獣型であるという点しかないのだ。薄目で見たら私の髪色と一緒に見えるファルとフィン。だがしかしレイクは真っ黒な従魔。またここでいくつもの質問が来る。しかも3匹とも心なしか光っているし、比較的他の従魔よりもでかい。極めつけには3匹ときた。
とりあえず噂が落ち着くまではノーコメントといかせて頂こう。
そう心に決めた私は学園長の部屋を出てソフィアナとミモザの元へと向かった。
◇◇◇
「お疲れ様、イリス。大変だったわね。学園長からは何か言われたの?」
私の部屋でライラが入れた紅茶を飲み、一息ついた頃ソフィアナが訪ねてきた。
「学園長からは怪我はないかっていうのと、先生達には言及しないようにって言ってくれるっていうことしか言われていないかな。学園長も元々ファル達のことは知っていたし、質問攻めに会うなんてことはなかったよ」
「私達も3匹のことは知っていたが、実際にいきなり出てくると言葉を失うものだな」
ミモザが苦笑する。
確かにね。部屋で寝ていた時は部屋の大きさが軽くバグっている事もあるが、なかなかわかりずらいものだ。
「そうそう。それに3匹に囲まれるイリスはいつも以上に神々しくてまるで女神が地上へ降りて来られたのかと思うほどに美しかったわ」
大袈裟な、とソフィアナにツッコミを入れると至極真っ当な意見だと返された。
「あのねイリス。イリスは自己価値が低いって思いがちだけど、イリスは自分が思っている以上に凄いの。座学のテストで満点なんて取れないし、あんなに素晴らしい従魔を召喚したし。だからもっと自信を持ったほうがいいと思うわ」
「ソフィアナと同じ意見だ。それに今回の従魔召喚を知らない学生はいないと思うからもっと胸を張ってもいいと思うぞ」
ソフィアナに次いでミモザまでにそんなことを言われるとむず痒くなり思わず顔が火照る。
助けを求めるようにライラの方を見るが、もっと言ってやってくださいとでもいうかのように大きく頷いていた。そういえばライラはいつもそんな感じだった。
「これを機にヴィラクス殿下とも分かれてしまえばいいじゃない。彼、ここ最近さらにピンク頭との関係が深くなっていっているそうよ。こんなに素晴らしいイリスを国母にしたいっていうことは大いに賛成だけど、あの人が夫なんだったら私はデモを起こすわね」
確かにヴィラクス殿下と婚約して幸せかと言われればそうではないのかも知れないけれど、私からはなかなか婚約破棄を言い出せないものだ。それに政略婚なんて愛がないのは普通である。だがしかし浮気するのは少し違うという話も……。
今の私に出来るのはそれとなく王妃様伝えることくらいで、それも見事失敗に終わっているのだけれど……。
それに今世では16歳を超えても生きられるという保証はない。
歴代の前世以上にやれることは全てやっているつもりだし、今世前世と違うことがたくさんあるため可能性はゼロではないと思うのだけど、やはり心配なものは心配だ。
「今はヴィラクス殿下も遊びたいお年なのよ。それにマリアナ子爵令嬢はやはり子爵令嬢だもの。王妃になるにはもっと上位貴族に養子入りするか側室かという選択肢しかないわ」
でも私は知っている。前世までのマリアナ子爵令嬢はどういうわけか王妃の座に収まり、しっかりと国民に慕われる国母となっているのだ。私は追放されてからすぐに死んでしまうため詳しくは知らないけれど、知っている限りでは高位貴族に養子入りしたという話も、側室として迎えられたという話も聞いていない。つまり彼女は子爵令嬢のまま王妃となっている。
私が何度も生まれ変わっては死んでいく世界だ。何かおかしな事もつきものだろう。もう腰が抜けるほど驚くなんてことは無くなった。
「イリスもせっかく気になる相手が見つかったっていうのに、王子は許されてその婚約者は許されないなんておかしな話よね」
ソフィアナの言葉にそうだなと頷くミモザ。
いや、いやいや、ちょっと待ってよ。
「私、気になる相手なんていないよ?」
その言葉にええ……という顔を向けられる私。
え、私が間違えているのかな。いやいや、でもどう思い出してもそんな相手いないし……。
「まあ、だってイリスだもの。仕方ないわ」
「そうだな」
勝手に始まって勝手に終わってしまった話題についていけないまま、私はモヤモヤとして気持ちを抱えて他の話題へと移って行った。




