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59 もはや別人

一年。私がウィステリア学園へ入学してはや一年が過ぎた。早かったようで遅かったようで……。ひとまず色々な出来事があり過ぎたような気がする。一つ確かに言えるのは、もう前世までのことはほぼ通用しないと言うことだろうか。

アル兄様やミモザ、ソフィアナ、その他諸々。変わっていないと言えばヴィラクス殿下とマリアナ子爵令嬢くらいじゃないかな。


入学式の準備も終わり、最終チェックを行う。去年はアル兄様が私をエスコートしてくれるために生徒会長の仕事をほったらかしてリディ様に叱られていたのが懐かしい。兄様が生徒会長だってこともびっくりだったけど。だって前世は違うかったし。


今年は私は第二王子、テオリス様のお相手を任されている。一応私、ウィステリア学園の女子生徒の中だったら1番家の位が高いから。



テオリス様も今世では結構いい関係を築けていると思っている。嫌われては……ないと思うけど。そういえば前世までのテオリス様はマリアナ子爵令嬢に思いを寄せていた1人だったけど、今世ではどうなのだろう。ヴィラクス殿下という強敵がいるからねえ……。私としては姉のような気持ちなので、弟のようなテオリス様の幸せを願いたいが、正直にいうとマリアナ子爵令嬢はあまりお勧めできないのは事実……。



ミモザは親戚の男の子が入学してくるためその子のパートナーとして、ソフィアナはそもそもこういったことをあまり好まないため、もうすでに入学式の会場であるホールで座っていると思う。

私もそろそろ時間であるため行こうと、男子寮へと向かった。



◇◇◇



「久しぶりだね、イリス姉。王城にいるのになかなか会う機会がなかったから」


「そうですねえ。私もほとんど王妃教育終わっているから昔よりもいく頻度は少なくなりましたし、行ったらいったで大抵は王妃様お茶をしているので、、」


テオリス様の少し見ない間にとても大きくなられた。少し前まで私とほぼ同じか、もしくは少し小さいくらいだったのに今では頭ひとつ分ほど違うのではないかというくらい背が高い。それにきっと鍛錬を毎日しているのだろう。そっと腕に手を乗せただけでもよく鍛えているのがわかった。テオリス様は第二王子であるから第一王子であるヴィラクス殿下に何かない限りは騎士団へ入団されるそうだ。

アル兄様が昔、テオリス様は素質が悪くないため良い騎士になるだろうといっていたことを思い出す。剣の天才であるアル兄様が言うんだ。きっと間違いないだろう。


「それにしてもイリス姉が快く引き受けてくれてよかったよ。断られてらどうしようかと考えていたんだ」


「断るわけないじゃありませんか!テオリス様は幼い頃からお世話になっていますし、まだウィステリア学園に来て慣れないことも多いでしょうから、一年だけ先輩である私が力になるのは当然の事ですよ」


ならよかったとまるで背景に真っ赤な薔薇が咲きそうな笑顔で微笑む。

テオリス様はヴィラクス殿下とは少し違って、動物で表すとするならば獅子のような方だ。ヴィラクス殿下はどちらかと言えば優男……と表すのが適切であるのだろうか。マリアナ子爵令嬢に微笑みかける様子はまるで王子様が運命の相手を見つけたときのような笑みである。実際に王子様だから間違いではないのだけれど……やはり婚約者がいる手前それはちょっとどうかなと思ってしまう自分がいる。


テオリス様もモテると聞いたんだけどな。まだ一度も婚約者を作ったことがない。第二王子であるためヴィラクス殿下よりは婚約者作りが急がれることはないが、仮にも王子であるため「結構焦っているのよ〜」と王妃殿下が言っていた。

何か理由があるのかもしれないし、これからの学園生活で見つけるかもしれないからそこは静かに見守っておこう。



そうこう雑談している間にホールへ着く。さすがテオリス様。私はこのホールを初めて見た時はバカみたいに驚いたけど、さも当たり前であるかのように中へと入っていった。きっと慣れているんだろうか。いつまで経っても慣れない自分が少し恥ずかしい……。

席まで送り、(送ってもらったといってもいいかも)私はソフィアナがとってくれていた自分の席へと移動する。ここからは私の仕事はほぼないため、ゆっくり入学式に参加する。





去年のアル兄様のような短すぎ事件が起こることもなく、無事終了し、私達は教室へと戻った。



1、2年はクラスが変わらないため皆見知った顔である。担任の先生も同じだ。だが様子がいつもと少し違う気がする。


「全員いますね。皆さん進級おめでとうございます。また1年間皆さんとともにいられることを嬉しく思います」


いつも通り挨拶を終え、普段ならここで業務連絡をして先生は教室をさる。しかし…


「さて、今年は転入生が1人入ってきました。入ってきてください」


やはり。前世までは一度もそんなことはなかった。隣国の使者か、もしくは去年事情により受けられなかった貴族か、と思い入ってくる人をぼんやりと眺めていた。

しかし次の瞬間、私の瞳はこぼれ落ちるのではないかと思うほどに開かれる。



「レオン•ファーネスです。体が弱いためあまり一緒にいられる時間は少ないですが、これからよろしくお願いします」


そういって頭を下げたのはブラウンの髪色をしたレオトール•サザルクだった。

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