55 生徒会
生徒会室の扉をノックし、恐る恐る開く。初めてじゃないはずだけど妙に緊張した。
「イリス、いらっしゃい」
アル兄様が出迎えてくれる。そこには元生徒会役員とヴィラクス殿下、ミモザがもう揃っていた。
まだ少し早いと思ったが、私が最終とは思わなかったため、思わず謝罪を口にする。
「いいえ、むしろ早く集まっていただいて感謝します。それに比べてモーリスは……」
エレン様が呆れたようにいう。
本当だ。モーリス様がまだ来ていない。
「元生徒会役員は早めに集めたのですが……あの人のことなので、どうせ時間を間違えているのでしょう」
ちょっと呼んできます、とエレン様が椅子から立ち上がりかけたその時、生徒会室の扉が勢いよく開いた。
「こんにちはー、、って、あれ、もう皆揃ってるんですか?」
その言葉を聞いたエレン様がモーリス様に一つ拳を落とす。
「いったっ!何!?なんでいきなり殴るの!?」
「いきなりでもなんでもないでしょう!?あなた、今日の時間忘れたの?10分も遅刻してるじゃない!」
「嘘だ。だって俺は余裕を持って来た。ほら、約束の時間まであと20分もあるじゃないか!!」
「それは新しく入ってくる子達の集合時間よ! あなたは生徒会メンバーでしょう!?」
確かエレン様とモーリス様は同い年。前にもよくこうして口喧嘩をしているのを見た。けれど決して2人は仲が悪いわけではないことを私はよく知っている。
「ほら、その辺にしておいて、取り敢えず全員揃ったわけだから自己紹介といこう。俺達はもう卒業するけど、それまでの間引き継ぎとかで接する機会も多いから一応ね」
ルドフィル様が一度仕切り直す。
「じゃあアルベルトから」
「は? 僕からか?」
「普通は生徒会長からするでしょ」
「……生徒会長、アルベルト・ラナンスキュラだ。4年であるためもう卒業するが」
アル兄様、本当にこの生徒会でやっていけていたのだろうか。まあルドフィル様がいたし……いや、だいぶルドフィル様にも迷惑かけていたけどね!?
「じゃあ次俺ね。ルドフィル・リディ、4年。俺もアルベルトと一緒でもう卒業するけど、短い間よろしく」
にこりと笑顔を向けた先にはミモザ。ミモザの顔はうっすらと赤く染まっている。まだミモザとルドフィル様の婚約は発表されていないが、順調に進んでいるらしい。身分的にも大きな問題はないし、どうやらリディ公爵夫妻はミモザを連れてくるのを今か今かと待ち構えていたそうだ。何故かは知らない。ミモザも首を傾げていた。
しかし……とても甘い流れ弾が私にも降ってきそうなんだけど……、と思ってルドフィル様達を見ているとアル兄様が何を思ったか私に向かって微笑んできた。
瞬間生徒会のルドフィル様以外のメンバーが目を瞑る。
……何かおかしな現象が起こったような気もしたけど……、うん。見なかったことにしよう。
「じゃあ次は私がいこうかしら。会計のセリーナ・マドリットよ。私も4年生だから来年はいないけれど、短い間よろしくね」
ふわっふわな人だ。セリーナ様は確か伯爵令嬢だったと思うけど……眩しいくらい美しいイエローゴールドの髪でも名を知らしめている。彼女が使っている洗髪剤はなんだと一時期話題になったこともあるくらいだ。ただそれは多くの令嬢達が使っていたものだったため、洗髪剤が素晴らしいのじゃなくてセリーナ様の髪の毛が素晴らしいという結論に至ったのは記憶に新しい。
「……3年、書記のエレン・ベニスです。先程はお見苦しいとこをお見せしました」
エレン様はハープがお上手な方だ。冬祭でのハープの演奏も素晴らしかった。
ご令嬢でハープを弾く人は意外と少ない。それは何故か。見た目に反して指が恐ろしいほどに痛いのだ。他の楽器も難しいのだが、ハープは初めから直接的な痛みがくるため、一週間もすればやめてしまう人が多い。続けるためには根気と信念が必要ということを知っている者は少ない。
「同じく3年、モーリス・ウェスタン、議長やってます!よろしく!」
この常に元気な彼は入学式でも司会をやってた人だ。そしてここだけの話……エレン様とモーリス様はああ言い合ってるけど卒業する頃にはもう結ばれていたと記憶している。
……言い合えるほど仲がいいとはこういうことだね。
「庶務のトーマス・シュミット、2年です。その、男爵家の出なので皆様とは釣り合わない部分も多いとは思いますが……よろしくお願いします」
釣り合わないといいながらも2年、しかも男爵家の出で生徒会へ入るのは恐ろしく難しいことだ。確か……2年の中ではダントツで人気だったように思う。前世ではあまり話す機会はなかったが、悪い人ではなさそうなので今世では是非仲良くなりたい。
生徒会メンバーの挨拶が終わり、私達に回ってくる。
あ、やば。何も言うこと決めてなかった。




