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48 私は恋のキューピッド

ウィステリア学園は日を追うごとにお祭り一色へと変化を遂げてゆく。

誰が力を入れているか。それはもちろん生徒たちもそうではあるが一番力が入っているのは商人達だ。

こんな稼ぎ時はないぞとみんな目を光らせて黙々と準備を進めている。


冬祭に出店することを許されている商人たちは学園の厳しい審査を経てここに今立っているため、ただでさえ素晴らしいものが揃っているのにそれにプラスしてみんな本気で売りに来ているから毎年クオリティは爆発的に上がる。これがプロの技かと思い知らされる、冬祭であったことは記憶に鮮明だ。


そんなきらきらと変化を遂げつつあるウィステリア学園の廊下を歩きながら、私達もまた冬祭の話題に花を咲かせていた。


「今年の冬祭も豪華ね」


「そうだね。みんなは誰か呼ぶの?」


冬祭はウィステリア学園の生徒以外でも誰でも入れるようになっている。出会いを見つけたり、友人と楽しんだり、皆それぞれに冬祭を楽しむ。


「私はザックが来るわ」


ザック? と首を傾げていると隣からソフィアナの婚約者だという補足が入った。


「イリスはどうなんだ?」


「私は……どうなんだろう。両親は、、たぶん去年までもずっと来ていなかったらしいから今年も来ないと思うし、ヴィラクス殿下はウィステリア学園にいるから……結局誰も来ないんじゃないかな」


たぶんヴィラクス殿下はマリアナと回るだろう。だから私はたぶん一人だ。前世までもずっとそうだった。


「なら私と回らないか? うちも両親は領地の方で少し忙しくしていて婚約者もいない。ちょうど一人だったんだ」


是非!! と食い気味に頷く。

冬祭を友達と一緒に回ることが出来るなんてどんなに夢見たことだろうか。私には一生縁のないものだと思っていた。


「えー、私も一緒に回りたい!」


「ザック様が来るんだろう? ソフィアナは私達と一緒に回るよりも彼と回るほうがきっと楽しい」


「イリスやミモザと一緒にいるときも同じくらい楽しいもん」


ぷー、と頬を膨らませているソフィアナはとてもかわいらしいが、婚約者は大切にしたほうがいい。私が言えることではないが。


「じゃあ来年一緒に回ろう? 今回は来ることが決まってるんでしょ? それにミモザも言ってたけど婚約者と回るのもきっと楽しいから」


「まあ、、それもそうね」


私のところとは違ってソフィアナのところは話を聞く限り相思相愛っぽい。あの扱いが難しいソフィアナが一緒にいて楽しいのであれば、きっとそれはもう合格地点に達していると言っても過言ではない。


「それに夜は私達学生しか入れないからそのときに一緒にいようよ」


冬祭りでは、学生以外の18時からのウィステリア学園への入場はほぼ制限される。ほとんどの一般人は入れないと言ってもいいだろう。なんせ私達の生徒会役員の発表があり、生徒は皆あのバカでかい大ホールにあつまるため、誰も学生は外に出ない。でもその間の数十分は生徒会の準備何かで時間があるため、学生だけが楽しめる時間ともなっている。


「なら私がザックと分かれたらイリス達を探すわね。私の探知魔法でも無理があるから出来るだけ一緒にいて欲しいし、あんまり遠くにもいかないでほしんだけど……」


「ああ、わかったわかった。ならば今ここにいる辺りに最後はずっといるようにする」


私は冬祭が初めて楽しみだと思えることに少し驚きつつも、この時間を大切にしようと心のなかでそう思った。

あとはアル兄様が生徒会役員の事を少しでもいいから気にかけてくれてるといいんだけど、、。





「イリス!!」


噂をすればなんとやら。向こうの方で見えた人影がすごいスピードでこちらへと向かってくる。


「アル兄様! どうしてここにおられるのですか?」


「冬祭のために見回りをしていたらイリスが視界に入ってね。少し声が聞きたかったから」


なんとまあ妹思いな兄だ。

そんな兄様の後ろから息を切らせながら走ってくるリディ様が見えた。え、もしかして今回もリディ様ほっていって自分は人間離れしたスピードで走ってきた感じ……?


「こんにちは、ルドフィル様。その……大丈夫ですか……?」


大きく息を吸って呼吸を整えている最中だったから話しかけないほうが良かったかな……。


「…………はあ、大丈夫、ごめんね。すごい勢いでアルベルトが走り出したと思ったら見えなくなって。一応見回り中だから連れ戻さないとと思って追いかけたら思いのほか遠かったから……」


やっぱり人並外れた脚力もそうだが今回はプラスして人並外れた視力もフル活用していたようだ。


ミモザがすっと隣からハンカチを取り出し、ルドフィル様に渡す。

あれ、そういえばミモザってルドフィル様の事ちょっと気になるとか言っていなかったっけ。え、じゃあ今ハンカチを差し出したのももしかして……と思い、ちらりとミモザを見てみると、微かにだがミモザの頬が色づいていた。なんて可愛らしい。


「アル兄様、生徒会の方々は冬祭は自由に回ることが出来るのですか?」


「自由に……まあ、ないことはないけど見回りのときに一応自由行動とはなってるね。ああ、そうだ。今回は一緒にイリスと回りたいなと思って声をかけたんだよ。イリスとのお祭りは最初で最後だしね」


アル兄様の言葉はとても嬉しいが、あいにく先にミモザと約束してしま……って、あれ? これはもしかして私の出番じゃないか?


「是非! と言いたいところなのですが、先にミモザと約束してしまって……。アル兄様がお仕事の間はミモザと一緒にいられるのですが私がアル兄様と一緒にいるときにミモザが一人になってしまいます。その間、一緒にいてくれる方がいたら……」


「私は一人でも大丈夫なのでお気になさらないでください」


ミモザがすかさず言うがあの優しいルドフィル様が見逃すはずなかろう。


「……じゃあもしよければだが、ミモザ嬢が一人になる頃に俺と共に回らないだろうか。ちょうど俺の見回りの時間がアルベルトと被っているから丁度よかった」


ほら見ろ。本当のことをいうと、ここまでうまく行くとは思わなかったが、うまく事が運んでよかった。


是非、と返すミモザのこれまでにないほど耳を赤くしている様子は真紅の髪に隠れて誰も見えなかった。

この世界観での大体の精神年齢は実年齢+2〜3で考えています。今更かもしれせん。すみません、すっかり補足を忘れていました。

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