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4 何しに来たのですか……?

ふわっと体が浮き上がり、私の足はいつの間にか地面から離れていた。アルベルトに抱きかかえられていたのだ。


近い!! 顔がすぐ隣りにある!

もう心臓がバクバクいってて壊れそうなんだよ! キャパオーバーです!


そんなことはお構いなしにアルベルトは笑顔で顔を近づける。


「そうだよ、イリス! アル兄様だ! もう一回言ってみて」


「………………」


すみません。本当に無理です。

また何か期待外れなことを言ったらいつ放り出されるかわからない。

まだアルベルトを信用しているわけじゃないから。


……急にアルベルトの表情が暗くなった。

あきらかにがっかりしたような顔しないで!! 私顔を反らせないようにするだけで今必死だから!


だって怖いんだもん。

顔が怖いわけじゃない。お人形みたいな綺麗な顔だ。前は笑ったところなんて見たこともなかったから、動く彫刻とも言われていたけど、今はちゃんと人間らしい。

でもトラウマの方がやっぱり大きいからね。あの冷たい目で睨まれるのは、どうしても慣れることはなかった。

それから比べるとこのかわりようは戸惑います。



…………仕方ない。


「アル兄様、元気だちて」


ガバっとアルベルトが意気よいよく顔を上げた。そのブラウンの瞳はばっちりと私を捉えている。

うおぅ、びっくりした……。


急に元気になったねー。いつにもましてキラキラしておる……。



私は一度地面におろしてもらい、アルベルトに座ってもらった。

こんな誇り臭いところにずっといて大丈夫なのだろうか? 私はともかくとして、彼は公爵令息だ。こんな埃臭いところには慣れていないだろう。


……とりあえず、窓でも開けておくか。

私は立ち上がり、この部屋には少し大きすぎる窓を開け、もう一度アルベルトの前に座り直した。


静かに時は流れていく。物音一つさえしない。



…………気まずい……。


お茶とか出す? いや、でも出そうと思ってもそんなものここにはないな。

いつ帰るんだろう? ていうかなぜここまで来た? あの両親が反対しない訳がないが……。

むむむ、疑問しか浮かんでこんな。たぶん自分だけで考えてもわからないから考えるのはやめよう。


この状況で私は少しおかしくなったのかもしれない。今だったら何だってやるぞ! だから何かお願いだから喋って!!


そんな私の心の叫びに気づいたのかアルベルトが口を開いた。


「今日は僕の妹がどんな子か見に来ただけだからね、もう帰らなくちゃいけない。父上や母上には何も言ってないから今頃使用人全員で探しているだろう。名残惜しいけどまた来るね」


ちょっ、ちょっとまて。

なんて言った? また来るって? いや、もう来ないでください。この緊張感と気まずさ、次耐えられるか保証はできないからね! 今度こそ途中で泡吹いてひっくり返るかもしれない。


しかも、私は過去にアルベルトに見放されている。疑心暗鬼になるのは仕方ないと思うな。

信頼して、捨てられて、嘲笑われて、、

知ってますか? それが一番心にダメージ来るんですよ!!


そんなふうになるんだったら、初めから期待しないほうがマシだ。私は学んだのだ。


そんな私の心の声は聞こえているはずもなく、アルベルトは笑顔で部屋を出ていった。


急に静けさが部屋へと戻ってくる。


あ、嵐が去った……。

何だったんだ、今のは!?

ちなみに嵐が去ったというのは私の心の中の状態であって、アルベルトと言葉を交わしたのは一言、二言だけだった。たぶん、ものすごい時間の沈黙が流れていたと思う。誰が聞いても「え? これが兄妹の会話? 大丈夫なの?」ってなるくらいには。

そして私は新しいことを学びました!

二時間、気まずい雰囲気でいたら頭がおかしくなります! 私の限界は二時間だった。いや、もうちょっといけるか? 試したくはないけどね。


しっかし、また来るとか言ってたな。あの人。

こんなに散らかった部屋だとちょっと恥ずかしいかな。言っておくけど私が散らかしたわけじゃないからね! 本以外は何も触ってないよ!

掃除でもしておきますか。3歳の体の大きさだとちょっと苦しいけどね、どうせ毎日本読んでるか寝てるかだから暇なんですよ。



この静けさ。やっぱり一人だと気が楽でいいなー。

そういえば……アルベルトがこの部屋に襲来したとき、外が珍しく騒がしかった。ここと本館って意外と近いから結構聞こえるんだよねー。ここの音は外にはもれないけど外の音は聞こえてくるから。

騒がしかったの、今考えるとたぶん、いや絶対原因アルベルトだな。まさかの両親には何も言ってないって言ってたし。まあ言ったら100%反対されるからね。

ある意味正解?

でもアルベルトの側近はむちゃくちゃ怒られているだろうなー。目を離したから!! とか。

哀れ、側近。

私見たことないけどね。でも確かあの絶対零度のアルベルトが唯一心を開いて物事を頼んでいる存在だったような気がする。記憶の限りでは……。


こんな感じで、しばらくアルベルトが去った余韻に浸っていた。



……想定外のところから攻撃が来ているぞ……。

これはもう一度計画を立て直していかないといけないなと思い、私は自分の机へと向き合った。

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