46 彼と私
遅くなりました。
まだ不定期更新が続きますが、これからもよろしくお願いしますm(_ _)m
「…………っはあ。だめ、全然うまくいかない」
レオトールに教えてもらったとおりに魔力の流れをイメージして指先に集めるも、なかなかうまくいかない。でもたしかにはじめの頃は魔力なんてこれっぽっちも感じなかったけど最近は魔力の存在を探知できたことは相当な進歩だとは思う。
「イリスは力が入り過ぎなんだよ。もっとこうやってリラックスして」
隣では肘から先にはまるで力が入っていないかのようにヘナっとしている指の先から小さな水が生まれる。どうやったらそんなにうまく調節できるのだろう。彼の場合は魔力がなくてあんなに少ない水しか出ないのではなくて、膨大な量の魔力を絞ってあそこまで小さくしているところが余計にすごいところだ。
「まあいいか。一回休憩にする?」
頷くといつの間にか用意されていた椅子へ進められる。なんかこう……レオトールの魔法を見ているとライティアたちを思い出す。魔術とまではいかないけれど、無尽蔵にある魔力をうまく使って魔法を組み合わせて生活に便利なように工夫しているのがすごい。やはり思考回路が私達とはだいぶ違うのではないかなと思う。
「そういえば、ついこの間レオトールが大魔術師だって言うことを初めて知ったの。もしかしてやっぱりレオトール様とか、大魔術師様って言ったほうがいい?」
何回かここを訪れるうちにいつの間にか敬称が外れていたのだが、流石に大魔術師様を敬称なしで呼ぶのはいけない気がしなくもない。マナー的には大魔術師であるため王族ほど気にしなくても良い事にはなっているが、いかんせん大魔術師という存在がここ数百年で初めて出ているため常識が少し通じないところもある。
「ええ……イリス、僕が大魔術師だってこと知らなかったの!?」
……思ってたよりびっくりするじゃん。そうだよ、知らなかったのだよ。公爵令嬢としてどうかとも思うけど、私がそもそも夜会に参加しないし、(未成年の夜会への参加は保護者の同意が求められている)親と会話することもほぼないし……。大魔術師の情報を入手するという行為はとてつもなく難しいものである。
「知らなくてごめんなさい」
「いや、知らなかったのならそれでいいよ」
それに、と彼は付け足す。
「僕は一般市民であろうと大魔術師であろうと王族であろうと僕は僕であることには変わりないんだから今まで通りに接してほしいな」
「レオトールがそのままでいいんなら私はこのままを突き通す」
私も一応は公爵令嬢であるため、人によって態度を変えることは安易に可能である。だがしかし、私の中でのポリシーでは一度心を許した人の前で自分を偽ることはしたくない。この貴族社会を生きていくうえでは致命的なポリシーではあるが、5回目の人生のためある程度誰がどういう人なのかは把握しているつもりだ。今回はイレギュラー達も多いが。
「……それにしても、私が魔法を使える日は来るのかな」
「来ない日なんてないよ。……じゃあさ、ちょっとイリスが使える回復魔法もどきを見せてよ」
そう言うやいなやレオトールがいきなり手首を自分の魔法で傷つける。嘘だろう?と少し、いや、だいぶ驚きながらも言われたとおりに回復魔法もどきを展開させた。回復魔法もどきのことは一番最初にレオトールに話した。魔法を教えてもらう上でやはりこの回復魔法もどきは知ってて貰わなければいけないと感じたからだ。まあレオトールはふーんみたいな感じで腰が砕けるほど驚いた様子ではなかったけど。
「……これはさ、どういうふうに使ってるの?」
綺麗に治った手首を見てレオトールが私に問う。
「どうって言われても……治ってほしいなって思って手をかざすと治ってる」
私の返答にふたたび考える仕草をする。実際にこれがどうやって発動されているかも分からないし、本当に人に害がないものなのかもわからないから、めったに人には使わないようにしている。
「イリスはきっとこれと同じような感じで魔法を使おうとしてるんだよ。この回復魔法もどきは才能だと言っても過言ではないから一旦これとは切り離して考えてみて」
「いつも分けて考えてるよ?」
「たぶん無意識のうちにそうなってしまってるんだろうね。少し時間はかかるかもしれないけど、意識すればきっと治るから」
「そういえば……この回復魔法もどきってなんなの?私はいつの間にか使えるようになってたけど、実際に回復魔法……癒やしの魔法が使えるのは三柱のメリアティス様だけみたいだし、私、メリアティス様にはあったこともないし……」
大魔術師ならもしかして知っているんじゃないかなという淡い期待を元に、単純な疑問を尋ねる。
「…………イリスはさ、本当にメリアティス様と関わりがないの?」
「うん」
三柱の中で唯一会ってないが、ライティアもヨイも何も言わないからきっとあまり話しては行けない存在なのかなと密かに感じ取っていた。それに実際関わったことは本当にないし。
「……まあ今は仕方ないか。こっちでも調べておくからイリスは魔法使えるように頑張ろう」
最初のほうが聞き取れなかったが、大魔術師様が直々に調べてくれるのはありがたい。私も調べるが、魔法初心者の私が調べるよりも断然魔法プロフェッショナルが調べるほうが良いに決まっている。
「何から何まで本当にごめんね。ありがとう」
「いいよ。僕はずっと君の味方だから」
レオトールの言葉を聞いた瞬間、ザザッと頭の中にノイズが流れたような感覚がした。
『僕はずっと君の味方だから』
どこかで聞いたことがある。何回目のループだろう。そもそもループの中でこんな事を言われてことはあったっけ。レオトールからこの言葉を言われたということは、、私はどこかのループで彼にあっている……?分からない、けどレオトールの言葉は絶対にどこかで聞いたことがあるという自身はある。
「ねえ、レオトール。私、あなたに昔何処かであったことがある?」
彼は私の前できれいな笑みを浮かべて笑うだけだった。




