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33 ご対面

やっぱり……。


そこには案の定と言うべきか、ヴィラクス殿下と腕を組んで可愛らしい顔を歪ませたマリアナ・ラスケルがいた。


「こんな結果おかしいわ! 何でヴィラクスが一番じゃなくてイリス・ラナンキュラスが一番なのよ!! そもそもなぜ貴方はミモザやソフィアナと一緒にいるの!?」


……どこから突っ込んだらいい?

マリアナってこんなキャラだっけ? なんかもっとふわふわしていて守ってあげたくなるような雰囲気を醸し出していたはずなんだけど……。

しかも何で初対面のはずのミモザとソフィアナまで呼び捨て? たしかマリアナって子爵令嬢だったよね。あ、そういえば一回目の人生ではよくミモザやソフィアナと一緒にいたっけ。でもそのことを知っているわけでもないし……。


「殿下、そのピンク頭どこかへ連れて行ってくださらない?  不愉快だわ。それに私達のことは百歩譲って爵位剥奪くらいで許して差し上げますけど私達の友人、仮にも公爵令嬢であるイリスを侮辱するなんてこっちが聞いてて恥ずかしいわ!! それにそのピンク頭に言わせていただきますけど、イリスが座学で一番なのは人一倍努力していたからよ。ただ殿下にくっついているだけの貴方に何ができるっていうの?」


ソフィアナ不敬罪ギリギリのところで戦ってる。これは……セーフなのだろうか?

それにピンク頭って……。さすがソフィアナというべきかいつも以上に毒舌が鋭い。しかも百歩譲っても爵位剥奪なんだ……。恐るべし!


「私からも言わせていただこうか。私はあまりこういうことは口出ししないのだけれど先程の発言は不愉快だ。マリアナ嬢、イリスを敵に回すということは私達を敵に回すということ、そしてアルベルト様を敵に回すということだ。よく覚えておくといい」


かっこいい……! しかも一番脅しに効くアル兄様が登場!! ほら、ヴィラクス殿下まで真っ青になってるじゃない。でもこれってやっぱり不敬罪とかで捕まったりしない? 一応エルアティナ国の第一王子の愛する人を侮辱したわけだよ? ソフィアナとか真正面で"ピンク頭"って言ってたし……。

というか私はもう慣れてるからさらさら気にしてないのにね。でも二人に言わせっぱなしも悪いし……。

ここで無理矢理にでも止めておかないと大変なことになりそう。しかもソフィアナとミモザ、なおかつアル兄様、ファルたちも加わったら余裕で学園破壊できる気がする。あ、こんなとこ見られたらライティアとヨイも絶対来るな。あ、やばい。学園崩壊どころかエルアティナ国崩壊になりそう。いや、絶対なる……。

すでにリーたちは報告しに行きそうになってるし。絶対やめてね!?


「マリアナ様、私がヴィラクス殿下の婚約者としてではなく忠告という形で今から言う言葉をお聞きください。もちろんヴィラクス殿下もです。まずマリアナ様、第一王子であるヴィラクス殿下を呼び捨てにするのはあまり良くありません」


「私が許可したぞ」


途端に周りのひそひそ声が大きくなる。

はあ、と小さく心のなかでため息をついた。


「知っております。ですが世間がそれを許さないのです。次に私達に対する言葉遣いです。自分よりも位が高い家の方々に許可なく呼び捨て、なおかつタメ口というのは許されないこと。私はもちろんミモザやソフィアナは侯爵、辺境伯と高い身分をお持ちです。この学園は身分を気にしていないことになっていますが、これは常識。成人し世の中に出て困るのは貴方です」


「でも貴方はミモザやソフィアナとタメ口じゃない!」


「……聞いてなかったのかしら? やっぱりピンク頭は頭が悪すぎてそんなんになってしまったんじゃないかしら……」


こら! ソフィアナ静かに!! 隣で静かに魔術を発動しようとしているソフィアナを必死で止める。

わー、ミモザまで剣を抜こうとしてるじゃん!! 誰かこの人たちを止めて!!

全身で二人を後ろに下がらせて話の続きをする。


「ミモザとソフィアナは私が許可しました。私はもちろん、ミモザもソフィアナも貴方には呼び方を許可していないはず。その方々に不快感を与えてしまったら普通ならば爵位剥奪くらいでは許されません。そして最後に、私の順位が気に入らないのならばヴィラクス殿下に頼らず自分で努力しなさい。残念ながら私は魔力にも武力にも恵まれておりません。見たらわかるでしょう。ですが貴方は違うはずです。順位だって点数だってそんなに悪くはない。もっと努力すれば何かが変わるはずですよ」


マリアナは顔を赤くしながらぷるぷるしている。これでどう変わるかはマリアナ次第だろう。


「イリスの言うとおりだわ! 私もミモザも貴方に許可した覚えはないし、気分を害された。よって不敬罪で捕まえることだってできるわ。でもイリスはそれを望んでいないでしょう。今日は許してあげるけど次はないと思いなさい」


「な!! ……も、申し訳ございません……」


おお、さすがソフィアナ。こんな悔しそうに負けを認めたマリアナ、生まれて初めて見た。

マリアナとヴィラクス殿下は居づらくなったのかすぐにこの場から立ち去った。

するとばっとソフィアナが抱きついてきた。


「大丈夫だった!? やっぱりさすが私のイリスねー。かっこ良かったわ!!」


さ、さっきの毒舌ソフィアナさんは一体何処へ……?


「違うぞソフィアナ。私達のイリスだ」


いやあなた達のってわけでもないんだけど。まあ別にいいけど……。





この出来事をきっかけに私達がより一層注目されることはまだ誰も知らない。

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