23 私の部屋……
二人は笑顔で空き部屋の前に立つ。
ライティアが一歩前に出て何かをつぶやき始めた。これ……古語かな?
数秒くらいたっただろうか。
ライティアがつぶやき終わると、突然部屋が光りだした。ライティアと同じ髪の色、黄緑色の光が私達を心地よく包んでいく。
あまりの気持ちよさに眠ってしまいそうになりなっていると、徐々に光は消え始める。
ライティアの部屋が終わると、次に同じ部屋の前でヨイがライティアと同じことを始めた。唯一違ったところは光が蒼だったくらいだろう。
「…………よしっ、終わったよ」
時間で言えば数分だったのだろうが、とても長く感じられた。
いつの二人といると、時間の感覚がおかしくなってくる。
「入り方は森と一緒で、願うと入ってこれるようになってるから。いつでも遊びにおいで。僕達も時々遊びに来るよ」
「わかった。ねえ、中に入ってみてもいい?」
二人がうなずくのを見て、そっと扉を開ける。
そこにはなにもない……はずだった。
「…………!?」
「はっはっはっ、驚いておるのう。ファルたちがどうしてもイリスと離れたくなかったらしくてのう。道をつなげるついでにちょっと改造したのじゃ」
「ちなみに作ったのは僕だよー」
そこには小さな森が広がっていた。
その森の中には聖獣のファル、レイク、フィン、がいて気持ちよさそうに眠っていた。
この部屋、「離れ」にある私の部屋くらいの大きさだったのに……。
ちゃんと壁は見えるが……広さはパーティー会場くらい広い。しかもこの景色、見覚えが……。
「空間魔術を使って、精霊の森の一部を少しこちらに持ってきたのじゃ。ファルくらいの大きさのものなら4匹くらいは余裕で入るだろう。」
ライティアが満足そうにうなずいている。いや、嬉しいんだけどね?
ここでいきなり登場、イリスの役に立つ豆知識、三柱の魔術編ー。
まず魔術については覚えているだろうか。
一応もう一度確認すると、魔術は魔法の進化系であり発動させるには、使用者の魔力量と魔法で特化しているものが関係してくる。
これをふまえて三柱の魔術について説明していく。
まず「創造の神」ヨイ。
ヨイは空間魔術が使える。さっきこの部屋を作ってくれたみたいに、部屋の大きさを変えないで中だけ広くする……とか、何もない所に物を収納しておける……とか……。
簡単に言うと空間っていう概念がヨイにはない。
常識を超えていることはまあ予想できるであろう。
続いては「知恵の神」ライティア。
ライティアは意識に関する魔術が使える。人や物の意識の中に入り込んだり、記憶を見て操ったりすることができる……らしい。
使い方や使う人によっては混乱を招く可能性が非常に高い魔術だ……。
最後に「癒しの神」メリアティス。
この方の魔術はその名の通り、癒しの魔術である。人の傷を癒したり、回復させたりすることができるらしい。
ただその癒やしは水魔法からの派生なのか光魔法からの派生なのかはあまりわかっていないらしい。
三柱の魔術は特殊だから、本人か加護が与えられた人にしか使えないようになってるのだ。
たぶん限りなく多くの人がこんな常識の超えた魔術を使い始めるとこの世の理が崩れていくのだろうな……。
……あれ? 私、癒しの魔術使えるくね?
いつの間にかメリアティス様と出会って加護をもらっていたのかな?
もしくはこの力は癒しの魔術ではないのか……。そういえば水魔法や光魔法でたまに癒やしの魔術が使える人もいるとは聞いたけど……はたしてそれが私に当てはまるのだろうか。
後者のほうが可能性的には高いだろう。何てったて私、魔力ないもん。
まあどちらにしろこれは黙ってたほうが良いよね……。
……これで解説は終了!
……だからね、空間魔術を思いっきり使ったこの部屋、見つかったら結構めんどくさいのよ!大変なことになるのは目に見えてる……。
でも待て、私の部屋に入ってくる人いなくね?
あ、問題解決したかもしれない。
ま、ファルたちといつも一緒にいられるのは素直に嬉しい。
「ありがとう!」
私は二人に抱きつき、優しく頭を撫でてくれた。寝ているファルたちを起こさないようにそっと扉を閉める。
ライティアたちはお茶を飲んだら帰っていった。
明日からは学校だ。今日は早く寝ようと、広すぎるベッドに横になる。すると意外に疲れていたのかすぐに睡魔が襲ってきた。
◇◇◇
一方その頃、寮の前では一人の女性が考え込んでいた。
「あの光はまさか……!確かあの部屋は公爵家。公爵家の令嬢は今年入ってきたあの子しかいない…………」
小さな呟きは闇の中へと消えていった。
フィン、レイクは後ほど
今日もう一度更新します。




