19 夢
遅くなりました。少し忙しくて(言い訳)
今回はとても短いです。
もう一話夜に更新します。
『ねえ、次は鬼ごっこしよう!』
『いいよ、じゃあイリスが鬼ね』
その言葉と同時に少年が駆け出した。
あの子は誰だろう……。存在は分かるのに、顔や髪の色でさえも思い出せない。
確かによく、誰かと庭で遊んでいたのは覚えている。
『xxx、捕まえた!』
何で私は少年の名前を知っているの?
今はなにも分からないのに……。
景色が変わった。
私と男の子と、ライティアとヨイでお茶をしている。
『xxxの足は遅いから、すぐに捕まえることができるよ。鬼ごっこすぐに終わっちゃう』
『僕は動くことはあんまり得意じゃないから』
『あまりいじめるでないぞ、イリス。こやつは昔から運動だけはダメだ』
『わかってるよー』
みんなで笑っている。
あれ?4人でお茶会なんてしたことあったっけ……。それに少年はライティアたちとも親しいようだ。
また景色が変わった。
今度は私の5歳の誕生日会だ。ああ、この時初めて笑えたんだっけ。
私はみんなからプレゼントをもらっている。精霊たちはその場で花束に祝福をかけてくれた。すごく神秘的な光景だったことをよく覚えている。他のみんなからも色々ともらったな。
そうだ、あのくまのぬいぐるみは少年からもらったんだ。
あの時私、どうやって部屋に帰ったんだっけ。
みんなで話してて、それから…………急に眠くなったんだ。
『おやすみ、イリス。次会うときまで……』
少年の声がかすかに聞こえる。
自分が少年のことを忘れていっているのがわかる。
嫌だ!忘れたくない。
あなたはどこへいくの?次に会えるときっていつ?何で忘れさせたりするの?
……そうだった。眠りに落ちながらそんなことを考えていたんだ。
……ねえ、あなたは誰なの?いつか思い出せる?……誰か教えて……。
夢とわかっていてもどうしても少年を引き留めてしまう。彼がいなくなって、私の心はふたたびぽっかりと穴が空いたようだった。




