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18 婚約って必要? 2

「イリス様……、申し訳ないのですが、これらはつけていかない方がよろしいかと思います。公爵様にも怪しまれる可能性がありますし、その……あまり見せない方がよいかと。それらの価値が分かったときにはつけられても問題はないと思うのですが……。」


なぜ?ああ、普通私がこんなもの持っていたら王家はまだしも両親に“盗んだ”とか言われるかもしれない。

しかもあの離れでこんな物が眠っていたと思われたらきっと父達は一度離れの中を全部ひっくり返すことくらいはするだろう。それだけは避けたい。

そこまで考えてなかった。危ない危ない。


「わかった、つけないけど持っておく」


そういって受けとると、ライラはほっとした様子でイヤリングとブレスレットを渡してくれた。



コンコンッ

ドアを叩く音が聞こえる。


「ああ、もう入ってもよろしいですよ」


「じゃあ失礼するね」


そんな言葉と同時にアル兄様が入ってきて……固まった。

……なにかおかしな所があったかな……?


「ほら、イリス様も困っておりますよ。声を掛けてあげればよいではないですか」


ナイスですカイル!!いつもこのツッコミをしてくれる人は不在なのでね。

やれやれといった感じでアル兄様の後ろでカイルが呟いている。


「あ、ああ。とてもよく似合っているよ、イリス。まるで天使みたいだ」


「ありがとうございます」


「それで悪いんだけど……、父上と母上がリビングで待っているんだ。嫌な思いをするかもしれないけれど僕と一緒についてきてくれるかい?」


「承知しました」


なんと!アル兄様がエスコートしてくれるらしい。アル兄様は「できるかな?」みたいな顔でこちらを見ているが……、ふっふっふ……見よ!この私の流れるような素晴らしき動作を!!

もう王妃教育は習得済みであるのだ!


案の定、アル兄様は少しビックリしたような顔をしたが……すぐに笑顔に戻った。


あ、あれ?思ってたよりも反応が薄い……。


そんな少し傷ついた私の気持ちはつゆとも知らず、アル兄様は歩きだす。



……しっかし広いなー。

ライラと一緒に歩いていたときも思ったけど、本館の端から端まで歩くのにたぶん数分はかかるだろう。

よくこんなところで生活ができるな。ちょっと尊敬するよ……。


「ついたよ」


おっ、ついたらしいぞ。

この部屋も広そうだなー。ラナンキュラスの花が細かく彫刻されている扉はどんと私たちの前にそびえ立っている。


「父上、母上、イリスをつれて参りました。入っても……」


「いや、入らなくていい。もう馬車は準備してあるからさっさと行け。くれぐれも失敗するなよ」


アル兄様が言い終わる前に、父と思われる人の声が遮り、返答した。その言葉を聞いている間、ずっと険しい顔をしてなにかぶつぶつと呟いている。

別に気にしなくてもいいのに……。


で、こんな調子で馬車に乗り込んだわけだ。残念ながらアル兄様はこのあと予定が入っているらしく一緒に行けないらしい。その代わりといってはなんだが、ライラがついてきてくれた。



やっぱり知っている人がいると心強い。


馬車が走りだし、私たちは揺れに身を任せながら王宮へと向かっていった。


◇◆◇


王宮に到着すると、あっという間に席に案内されて今、王太子とご対面の状態になっている。


もう一度言おう。誰か助けてほしい。


ヴィラクス様はにこにこと笑っているけれど、それが張り付けた笑顔だっていうくらいは見てわかる。毎回、私とあった後は裏で側近たちに悪口をいっているくらいなのだから婚約者変えればいいのに……。もっと釣り合う人がいるだろう。公爵家がダメなら侯爵家とか……。


「家では何をしているの?」


「……本を、読んでおります」


…………。


はい、会話終了ー。


さっきからこんな風に一言二言しか続かない。こんなのが将来の伴侶だと、嫌で仕方がないのだろう。ほら、笑みがだんだんとれてきているぞ。

まだまだ甘いなー。

まあ、だから話上手なマリアナ子爵令嬢にひかれていくんだろう。


どうしよう。アル兄様の時よりも気まずいぞ……。


「イリスは本当に僕の婚約者でいいの?」

「はい、光栄でございます」


今思えば、ここで断った方がよかったのかもしれない。私がそう答えた瞬間、ヴィラクス様の顔が少しひきつったように見えた。


そして、私たちのその言葉と同時にこの場はお開きとなった。


……疲れた……。

本当にこれでよかったのだろうか。でもここで断ったら父に殺される。


このまま婚約の話が続いて破棄されたら、ライティアやヨイの所に逃げるもよし。そもそも婚約の話がなくなればなおよし。

こう考えてみると結構上手くいっているんじゃないか、私よ。

次からもこのように上手くいってくれればいいが……。


今は考えても仕方がないことだ。とりあえずかえって寝よ!


たぶん今日はぐっすり眠ることができるだろう。

私は、揺れる馬車にそっと身を預けた。


光栄ですと言ってしまったのは反射的にでした。後々とても後悔するイリス。

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