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17 婚約って必要? 1

大輪のバラが咲き誇り、噴水の水は光を反射してキラキラと輝いている。

……うちの庭とは大違いだ。


もちろんここはラナンスキュラ家の「離れ」ではない。かといって本館の方でもない。

ここは王宮である。


そして私の目の前には一人の少年が座っている。金髪碧眼で誰もが一度は振り返るであろう美しさ。

6歳でこれなのだ。大きくなったらと想像するだけで恐ろしい……。


彼はヴィラクス・エルアティナ


この国の第一王子である。

そんな彼と現在お茶会をしている私。

正直に言おう。


誰か助けてほしい……。



少し時は遡る。


◇◆◇


今日は珍しく本を読もうと思っていた。

最近は精霊や聖獣たちと遊びすぎて、体がついていかず休ませようと思ったからなのだよ。



あの誕生日会から約一年がたった。

本館からの扱いは相変わらずだ。ライティアとヨイは遊びに来てくれたり、逆に私が遊びにいくことも多い。

アル兄様はいつも通りで私は変わらない日々を送っている。

ピチピチ? の6歳です。



一人きりで部屋にこもって鼻歌を歌いながら本のページを進めていると、どたどたと慌ただしい足音が聞こえてきた。

その音は私の部屋の前で止まり、同時に勢いよく扉が開く。

一瞬体がビクッと反応してすぐに扉の方に顔を向ける。


……そこには嬉々とした表情をした父がたっていた。


「おい、生きているか!?お前には良い話がきた!第一王子との婚約の話だ。早く準備して本館へ来い!」


それだけを言い残して父はまた本館へと戻っていく。


……………………。


せめてびっくりさせてよ。普通それだけ言い残されて帰ったら混乱するぞ!? ちょっとは考えろ!



で? 何の話? 第一王子と婚約?



……………………。



あーーー!!忘れてた、私今6歳だった!


王太子殿下との婚約って確か今くらいの時期だった気が……。最近平和すぎて頭の隅にもなかったよ……。

い、今から……?




……ところでさっきから私のとなりに立っている青年と女性は誰でしょうか?

いや、まじでこの人たち誰? こんな人たち今までの人生でも見たことがないよ? ……いや、青年の方はある気がする……。


記憶を辿っていると青年が喋りだした。


「私はアルベルト様の専属の使用人、カイルでございます。この度はアルベルト様の指示でこちらへ伺いました。私どもはお嬢様の味方なので安心してください」


……さすがアル兄様。

ああ! だからこの青年は見たことがあったんだ! 確かアル兄様よりも5歳上だったはず……。えっ、てことは今はまだ14歳?! しっかりしすぎではないか……?

私が前にカイルを見たときは二十代前半ぐらいだったから……あれ? 顔変わってなくね? 強いて言うなら灰色の髪が少し短いくらいか。


すると今度は、女性の方が前へ出てきた。

たぶん、どこぞの貴族だろう。動きの優雅さが違う。公爵家で働いているということは子爵家か伯爵家あたりかな?


「私はライラでございます。イリス様のお世話をさせていただくことになりました。どうぞよろしくお願いします」


「こ、こちらこそよろしくお願いします…」


私が勢いよく頭を下げると、少し苦笑した様子で、「それではいきましょうか」と言ってきた。どうやら私を本館まで案内してくれるらしい。


そこで私はふと、あの存在を思い出した。


「あっ、あの……!2つ持っていきたいものがあるのですが……。大丈夫でしょうか?」


思い出したのは、ライティアとヨイからもらったイヤリングとブレスレットだ。

困ったときに持っておくといい、必ず役に立つはずだ、っていってた。何があってもこれだけは持っておきたい。



「大丈夫ですよ。他にはもうありませんか?それはそうとイリス様。私たちに敬語はいりません。ライラでお願いします」


ふわりと女性……ライラが微笑んだ。


イヤリングとブレスレットを手に持ち、ふたたび「よろしくお願いします」と頭を下げ、ライラたちの後をついていった。


◇◇◇



し……視線がいたい……。


本館に到着すると、そこでカイルとは別れ、ライラに先ず湯浴みを進められた。

そこへ向かう途中、ずーっとすれ違う人に見られている気がする……。


「気にしなくても大丈夫ですよ。後できつく叱っておきます」


「でも、そんなことしたらライラが嫌われちゃうよ。私はなれてるから大丈夫」


「イリス様……」


なぜか悲しそうな顔をされた。このくらいの視線など、社交に出たときととは比べ物にならない。まだ紅茶やお菓子が降ってこないだけましだ。


さて、そんなことを話している間にお風呂に到着したようだ。もうお湯は張ってあるみたいで、ドアを開けるともわっと湯気がおそった。


「さあ、みがきますわよー!」


と急に気合いが入るライラ。

お……お手柔らかにお願いします……。





「ねえ、ライラは私のことが怖くないの?みんなと違う見た目なのに」


「まったく怖くありません。むしろなぜ皆がそこまでイリス様が嫌われているのかが理解できないのです。私とカイルがその事について話している際に「やっぱりそう思うよね」と突然入ってこられたアルベルト様には驚きましたね……」


へえ、そうなんだ。

今まではアル兄様をはじめとする、私が気持ち悪くないと言う考え方をする人はいなかった。ライラにも初めてこの人生で会った。

なにか……変化が起きているのかもしれないな。


「イリス様の髪はお綺麗ですね。髪も瞳もまるで…………のような……」


やばい、気持ちよすぎて眠ってしまいそう……。ライラがなにか言っていたような気もする。


そんな私に気がついたのだろう。ライラはクスリと笑った。





「……出来ましたよ!」


はっ、完全に意識飛んでた。

あれ?いつの間にか着替えてる。薄い青を基調としていて、動くとふわふわと揺れるようなデザインになっている。レースの部分がひらひらと舞っていて可愛らしい。


……これを着るのももう4度目だ。たぶんこの日のためだけに買ったのだろう。


「イリス様、これらはつけていかれますか?」


ライラにイヤリングとブレスレットを渡されて返事をしようとしたとき、急にライラの表情が険しくなった。


アルベルトが送ったリボンは今日はお休みです。

アルベルトが離れてきていることをバレると思ってイリスはつけていません。

父がいきなり入室してきたときは違う意味でも心臓バクバクしていました。

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