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16 誕生会〈アルベルト視点〉

何にするべきか……。


最近僕が悩んでいることはイリスへの誕生日プレゼントの件だ。

昨年はフルールの羽を縫い込んだ毛布をあげた。あのときのイリスは本当に死にかけていたから、よかったと思う。見ていて痛々しい。


だが今年はどうだろう。やっぱりまだ軽すぎる気はするが、昨年と比べると、比べ物にならないくらい健康になっている。


僕もよく食べ物は持っていくが、毎日いけるわけではない。やはり毎日健康に良い物を食べてほしいのは変わらずなんだけど……どうしても状況が状況であるためどうすることも出来ない。僕にもっと力があればと悔やむ。


そんなイリスに今年はいったい何をあげるべきなのだろう……。


しかも難しいことに、イリスには全くといっていいほどに欲がないのだ。あのくらいの年だとかわいらしいドレスや、装飾品をねだってもおかしくない。


…………装飾品……。


僕ははっと閃いた。


そうだ、イリスに似合うものを送ればいいんだ! でも何が似合う?

僕は再び考え込む。



……イリスはかわいい。天使だ。

多分なんでも似合うだろう。だったらイリスをより引き立たせるものがいい。

そしてずっと使ってほしい。


ならばドレスはダメだ。サイズが変わってしまう。

ならばやはり装飾品か。

宝石のついたものを送りたいが、必ず親にばれてしまうだろう。


…………。


「カイル」


使用人を呼ぶ。彼はカイル。僕の専属使用人で、幼い頃から常に一緒にいる。唯一僕がラナンキュラス家で心を許せる存在だ。

ラナンスキュラ家のイリスへの扱いは思うところがあったらしく、よく僕の手伝いをしてくれる。


「どんな年齢でも使えるデザインのリボンを作るよう、職人に頼んでくれ。細かい刺繍もお願いする。一週間後までにここへ届けてくれ。もちろん父上と母上には言うなよ」


「かしこまりました」


さて、プレゼントは決まった。


ふうっと一息つき、ソファーに座り込む。

次はいつイリスの部屋へ行けるかなと考えていると、突然部屋に風が起こった。


「!?」


びっくりして思わず目をつむった。

そして恐る恐る目を開けると……そこには風と同時に現れた美しい女性と青年の姿があった。


この人たちは誰だ!?

いや、この圧、このたたずまい。まさか……、そんな……!


「ぬしがアルベルトかえ?」


透き通るような声が聞こえてくる。


「は、はい!アルベルト・ラナンスキュラでございます」


なんとか震える声で答えられた。

が、僕の頭の中は今真っ白になっている。

やはりこの方たちは……。


「ダメだよ、ライティア。いきなり現れて怖がらせている上にその聞き方は良くない。先に自己紹介しなきゃ」


「ふむ……、すまなかったな、アルベルトよ。妾はライティアじゃ」


「僕はヨイだよ」


や、やっぱりこの方たちは三柱の「知恵の神」ライティア様と「創造の神」ヨイ様だ。

なぜこんな方が僕に会いに来たのだろう。


……その答えはすぐにわかった。


「来月はイリスの誕生日なのは知っているかえ?そこで、パーティーを開きたいのじゃが、人間のことは妾たちには難しいからのう。そなたにも教えてほしいのじゃ」


なるほど、やはりそういうことか。やはり繋がりはイリスだ。




「イリスに仲の良い人間はいないかって聞いたら「アル兄様なら大丈夫」って返ってきてね。イリスも君には心をゆるしているようだから君を呼ぼうと思ったんだよ」


……正直、とても嬉しかった。

イリスが僕の事を大丈夫って思ってくれている。それだけで何でもできるような気がする。


「やってくれるかのう?」


「ぜひ、お願い致します!」



◇◇◇


あっという間に誕生日の当日になった。


イリスがくる前に最終チェックをみんなでしている。

しかし、この空間は凄い。さすがライティア様やヨイ様だと誰もが思うだろう。なにせ、この空間にだけ雪が入ってこず、とてもすごしやすい気温に調整されているからだ。


そうこうしている間に、イリスが3人の精霊たちと一緒にやって来た。


イリスにしては少し大きい手袋と帽子をかぶっている。

やばい、とてもかわいい……。

ここにライティア様とヨイ様がいなければ、確実に抱きついていただろう。


「なんじゃ、もうバレたのかえ?」


『『『ごめんなさーい』』』


どうやら、この精霊たちが足止めをしてくれていたらしい。

イリスはここの場所にすごく驚いていた。誰だってこんな場所を用意されていたらビックリするだろう。

すると、イリスが僕に気づいて大きく目を見開いた。


「アル兄様!?」


「ライティア様やヨイ様が呼んでくださったんだよ。イリスが信頼している人であれば誕生日会にぜひ、と」


イリスがバッとお二人の方を向く。


「イリスの兄なのであろう?それならばイリスも祝ってもらいたいはずじゃ」


「そうだね。人が多いと楽しいしね」


「「「誕生日おめでとう、イリス」」」


僕たちはイリスに祝いの言葉をかける。

喜んでくれているだろうか。イリスが嬉しければ僕もうれしい。


この言葉を聞いて、イリスは虹色の瞳に涙をためながら、呟いた。


「ありがとう。……うれしい」


「「「…………!!」」」


そして僕たちは信じられない光景を見た。

イリスが、微笑んだのだ。



『イリス笑ったー!』


「そなた、ようやく笑えたのじゃな」


「笑っている方がかわいいよ」



僕もなにか言葉をかけようとしたけど……言葉がでない。本当に女神のようだ。今まで辛いことがあって、誰からも虐げられて、自分を守るためにイリスは自分を殺したのだ。

そんなイリスをいつも救ってあげたかった。でもできなかった。


しかし、今こうしてイリスに笑顔が戻ってきた。……僕もなぜか泣きそうになってる。


「ほんとに……ありがとう!!」


その言葉と同時に、イリスの周りには聖獣が集まっている。


ああ、本当にイリスは女神なんじゃないだろうか。


その光景はとても神秘的で、ライティア様やヨイ様にさえ劣らない輝きがあった。



それから、みんなでイリスに誕生日プレゼントをあげ、誕生日パーティーはお開きとなった。

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