12 三柱
今日は蒼の泉に遊びに来ている。
ファルがよくここに来たがるのだ。でも今思うとここには精霊は一人も見当たらない。なにか理由でもあるのかな。
で、今はヨイとお茶を楽しんでいる。
今日はダージリンである。ヨイは異様に紅茶をいれるのが上手だ。王妃教育を受けていた私よりも上手だ。な、なぜ……?
「イリス、君はライティアに会ったことがあるのかい?」
あれ? 言ってなかったっけ。……聞かれるってことはたぶん言ってないな。
この前の突然訪問からヨイとは結構仲良くなった。それで気になって部屋の本から蒼龍のことを調べてたんだけど、ものすごく大量にあった。書いてたらいいなーくらいの気持ちで調べるにしては多すぎるくらいの量があった。まだまだ私の知識量不足を思い知らされたんだよね……。
まあ、結論から言うと結局ヨイもライティアも本当の神様だったってことなんだけど……。
さあ、ここで出ました!ちょっと役に立つ豆知識、エルアティナ国、三柱について!
この国、エルアティナには三柱というのが存在する。先にいっておくが、目撃されたのは1000年くらい前で、もうみんな伝説上の神様みたいになってる。
まず一人目。この方は皆さんお馴染みのライティア様である。三柱のなかでは「知恵の神」として一番知られている。
次に二人目。ここでビックリ、ヨイである。「創造の神」だって。私は知らなかったけど、常識らしい。
そして三人目が「癒しの神」メリアティス様。
この人についての記述が一番少なかった。
この三人がエルアティナ国の信仰対象になっている。
以上、解説終了!
その確認もふくめて今日はここにやってきたのだが…。質問がくるとは思わなかった。ちゃんとあなたたちの関係についても調べてきたのだよ! さすが私!
「うん。よく精霊の森には遊びにいくよ。ライティア様とは仲いいの?」
「まあそれなりにね。……ライティア様………ふっ」
ヨイは体を震わせて笑っている。
あら、何かにツボられてしまった。何かに変なこといったかな。
でもやっぱり二人は仲いいんだー。
「癒やしの神」のメリアティス様とも仲がいいのかな?
「ねえ、イリス。変なこと聞くけど君の顔に表情が見られないのはどうして?」
いきなりの質問。あ、笑いはおさまったのね。
「えっと、それはね……」
言い終わる前にフワッと風が吹いた。
これは……。
そっと後ろを振り返る。
………やっぱり。
そこにはライティア様が立っていた。なぜここに?ヨイに会いに来たのかな?
「ねえ、ライティア。いきなり現れるのはやめてもらってもいいかな?」
あら、珍しくヨイがちょっと不機嫌。
「よいではないか。そうツンツンするな。妾とぬしの仲であろう」
ふふふっとライティア様は笑う。
この二人の間に小さな火花が見えるのは私だけだろうか……。いつの間にか周りに誰もいなくなってるし。
「ときにイリス。なぜこやつと共にこの場所におるのじゃ?最近妾のところには来てくれぬというのに」
「えっと、それはね……かくかくしかじかで………」
そして私はヨイとの出会いや今までの経緯をライティア様に話した。
「なるほどの。こやつが抜け駆けしよったと。で、イリス。なぜこやつのことはヨイで妾はライティア様なのじゃ?」
なんか結論変なとこにいってるけど……。しかも私の話聞いててなぜ突っ込むところそこになる……。
「えーと……。ヨイはヨイで、ライティア様はライティア様だからで……」
そんなの私に聞かれてもわかるかーい。
……なんでそんな顔する? ほっぺを膨らませたライティア様も可愛らしいけれども。
と、そこですかさずヨイが言葉をつなげる。
「信頼度の違いだよ、ライティアさ・ま。」
「うるさい! 主には聞いておらぬは! イリス、妾は敬称なんていらぬ。ライティアがよい」
うん、もう一回聞いてもいいかな。
なんでそこなの?
この国の三柱ってこんなにフレンドリーでいいものなのかい…。
「……ラ、ライティア……」
しぶしぶ私は口にした。うっ、なんか恥ずかしい。
ライティアがフワッと微笑む。
あ、笑顔になった。これで本当にいいのか、三柱よ…。
そしてそれを横で見て笑っているヨイ。
いや、助けてよ!
「で、ライティアは何しにここへ来たの?」
やっとヨイが口を開いた。
やっぱりちょっと言葉に棘があるのは気のせいかな? あれ? 歴史上では仲いいことになってるんだけど……。
「だからそうツンツンするなただ遊びに来ただけじゃ! おぬしとイリスの二人きりの時間を邪魔したのは悪かったのう。……いや、ここは呼ばれぬ妾の方が不憫ではないのかえ……?」
「まあいいや。じゃあライティアもどうぞ。」
なにかぶつぶついっているライティアをヨイはお茶会の席にすすめる。
え、あ、普通にお茶会する感じ? 仲直りしたのかな? よかったよかった。