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妥協

 ハロルド様と出逢う時間は、日に日に減っていきました。

 学園ですれ違う事もなくなり……。


 忙しいというのは、どうも本当のようで。


 私はこの王立学園に来て、もう1年が経とうとしています。

 卒業、というモノに実感が湧くどころか、学園生活というものにさえ実感がないような感覚。


 ハロルド様に出逢えた事と、それから。それから。


(大切な思い出が……)


 たった1年の学園生活。貴族令嬢の末席に座り、過ごした日々。

 もっと、あった筈です。


 あった。あったんです。何か大事な事。ともすれば私の人生を変えるような事。


(でも、何が……)


 何もなかったんでしょうか? 努力してきた自分。

 この数か月は、自分を肯定できるような気がしたんです。


 私は成長した。考えられるようになった。その筈で。


「だけど、何も……」


 ハロルド様にお会い出来ないから、こんなに空虚な気持ちになるのでしょうか。

 不安と共に何かの期待を知っていた日々が、色褪せて。平坦になっていくように。


 激流のような私の『運命』が、ある日を境に緩やかな流れの川へと変じてしまったような。


 ときめくようなドラマチックな恋が、呆れるような平凡な恋に落ちてしまった感覚。



 鏡を見る度に、自分が何かを失った気がして。

 モヤモヤとしたその気持ちが晴れる事はありませんでした。


(ハロルド様。ハロルド様に会えば……あの頃のような気持ちに)


 今、彼と会えないから私は不安で、空虚なのでしょうか。

 分からない。分からない……。


 悶々と自問自答を繰り返す日々。

 シーメル様に交流会に呼ばれる事もなくなり、私は結局、学園に入った頃のように一人ぼっちで過ごすようになりました。


 孤独と不安を抱えながら、過ごす私は。それだけでなく、言い表せない喪失感で胸が苦しくて仕方ありませんでした。


(幸せに。幸せになるの。私は。私『も』。だからこれでいいの)


 ……そう自分に言い聞かせてきた日々は一体、何だったんでしょう。

 何が良かったのか。何故そう思っていたのか。


 『答え』があった筈でした。私は……私は一体?



「あら。殿下のお花さん。今日も水を掛けて貰えないのかしら? ふふ」

「……え?」


 以前、交流のあった……そう。シーメル様のご友人達から、私は声を掛けられました。

 交流会がなくなった事で会う事もなくなっていた令嬢達です。


「ふふ。私達が水を掛けて差し上げてもよろしいわよ? ああ、それとももう手遅れで枯れてしまった後かしら? うふふ」

「……何ですか」


 いつも何が言いたいのか分からないのに、なんだか嫌な気分になる人達です。

 私は、この人達が苦手でした。


「あらあら。ふふ。私達、貴方の為を思って良い事を教えて差し上げようとしているのに」

「はい……?」


 一体、何の話をと。そう首を傾げる私に彼女達は言ったんです。


「ハロルド殿下。婚約者候補を決めるお茶会を開かれたそうよ。ええ。婚約者のいらっしゃらない令嬢の中で、殿下の……未来の妻になる女を決めるお茶会よ? ふふ」

「え!?」


 ハロルド様の……妻? 候補? え、でも。


「私達、きっと貴方も呼ばれたのだと思ったの。なのにこんな場所でマリーアさんったら、ゆっくりしていらっしゃるから。ねぇ? だから時間はいいのかと聞いてみたのだけど。ええ? その反応、まさかハロルド殿下に呼ばれていらっしゃらないの? あのマリーアさんが!?」


 大げさなぐらいの態度で彼女は私に尋ねます。

 気遣うような言葉なのに、嫌な気配。そして、くすくすと笑う周囲の人間。


「まぁ。そんな。あのマリーアさんですもの。ハロルド殿下も、ついうっかりお手紙を出し忘れてしまっただけじゃないかしら? ねぇ?」

「そうよ。きっと。あんなに仲睦まじく過ごしていらっしゃったのだから。ハロルド殿下の妻、未来の妃になる為のお茶会にマリーアさんが呼ばれないなんてあるワケ……ないでしょう? うふ。うふふふ」


「……、……っ」


 胸が締め付けられる気持ちでした。


 頭の中がぐわんぐわんと揺れていて。

 嫌な汗が流れて、呼吸が苦しくなる。


 私は何も言い返す事が出来ずに、ただ固まってしまって。


 そんな私を彼女達は、嘲笑うように見つめている。

 でも、何の反応も起こさない私を見て、飽きてしまったように去っていった。



 遠巻きに私の姿が見られている。

 聞こえるかどうか分からない距離から私は、呆れられていました。


(どうして。なぜ。だって。だって、ハロルド殿下は)


 私と結ばれる筈なのだという確信があったんです。

 そんな根拠、まるでないのに。


 どうしてか私は、そう思い込んでいて。


「……!」


 居ても立っても居られず、私は王宮へと走り出していました。




 王宮に顔を見せ、ハロルド様に会いたいと言ってもすぐには会えません。

 一度、足止めされて待たされて。


 印象は薄いですが、私の顔を覚えていた兵士の方に私が来た事を伝えて貰いました。


 時間を置いてから……ハロルド様は顔を見せてくださいます。



「ハロルド様っ」

「マリーア。今日はどうしたんだい? あまり王宮に気軽に来るものじゃないよ。僕は怒らないが、良い事でもないからね」

「は、はい! で、ですが……その! 今日は居ても立っても居られなくて!」

「うん? 何かあったの?」

「何かって。だってハロルド様の婚約者を決めるお茶会が開かれるって聞きました!」

「……ああ」


(どうか嘘だと言って欲しい。だって。だって、そうじゃないと、おかしい)


 そうでなければ私は、何故。何かを。何を。


(何を……)


 したんだろう? 取り返しのつかない事をしたような気持ちがあるのに。

 それには思い至らない。


(私は。私は)


 ハロルド様が好きだから。この喪失感は、彼を失いそうになったから。


 違う。違うの? どう違うの?

 何がおかしいの? 何を間違ったの?


 私は何を後悔すればいいの……!?



「そうだけど、それが?」

「それが!?」


 ハロルド様が私を見る目には情熱の色がありませんでした。

 それに何よりも衝撃を受けて。


 すがるように彼に言葉を重ねます。

 惨めに、無様に。『捨てないで』と懇願するように……。


 そうして彼から出た言葉の数々は、より私を打ちのめしていきました。

 思い描いていた筈の未来。


 誰かに聞かされた、確定していた筈の『運命』などないと。

 そう突きつけられる絶望。



「信じられない……。どうして? ハロルド様っ」

「何がどうしてだか分からないよ、マリーア……」


 その後、私はどうしたのか分かりませんでした。

 ゼンク様が私をハロルド様の前から引き離して。


 色々と諭してくれていたように思います。


 でも。私は。私……は……。



◇◆◇



 ……ハロルド様には、婚約者が出来ました。


 王立学園の卒業を待たず、彼の婚約は発表され、周りの皆が彼女を祝福しています。


「…………」


 私は、抜け殻のようにその光景を見るしかなく。


(私は……一体、何なんだろう)


 卒業してから。私はどこに行くでもありません。

 学園を卒業する事が出来たので、王都での仕事があるかと……。


 本当に遅れに遅れて、未来の事を考えなければならなくなりました。


 お父様であるレント男爵は、私の婚約や結婚をまだ決めようとしていません。

 その理由は……疎遠になったとはいえ、未だ私とハロルド様の関係が切れていないからでした。


 今も私はハロルド様に守られてはいるのです。


 シーメル様のような貴族令嬢との繋がりをまともに作れず、保てなかった私は、惨めな気持ちになりつつも、ハロルド様や、その側近になるゼンク様、クロード様に頭を下げて頼りました。


 王都で暮らすだけの術がないかと。

 ……王立学園を卒業した生徒達のほとんどは将来をちゃんと決めていたそうです。


 私のように何になるのでも、結婚するのでもないような者はほとんど居ないらしくて。



 まだ、ハロルド様達とはお話をさせていただけて。


「仕事……。か。マリーアの最終成績は」

「殿下? 彼女を『愛妾』に据える予定は?」

「それは……」

「…………」


 愛妾。言葉の意味を説明されても納得できない言葉でした。


 それでも、ハロルド様の婚約者は私じゃなくて。

 だから、もしもまだ彼の傍に居たいなら。……私は、その『愛妾』になるしかありません。


(それでいいの? それで……。でも。それしか)


 夢を見ていたのかもしれない。

 そう思えてきました。


 自分が彼の妃になる。なれるのだと。幸せなお嫁さんに……なれるんだと。


 でも、彼は王子で。いつか王様になる人で。

 私は、彼の『妃』にはなれなくて。


「なぁ。前から考えてはいたんだが。……ゼンク。君がマリーアを娶るのはどうだろう?」

「………………は?」


 ハロルド様がそう言い出した時。

 私の中の何かが、ピシリとヒビ割れました。


「ゼンクは彼女の事を好きだったんだろう? なら、良い落としどころではないだろうか?」

「……一体、何を」


(何を言っているの……?)


 『愛妾』の立場さえ呑み込めない言葉でした。

 ですが。今の、それは。


 別の男の、妻になれと?


 好きな人から。お嫁さんになりたいのだと思った、その人から。そんな、言葉が。


「殿下。それは……ないでしょう」

「何故だ? ゼンクの気持ちは変わっていないんじゃないのか」

「いや、それは……。だから……」


 ゼンク様に問うハロルド様。

 違う。違います。


 問いかけるべきはゼンク様の気持ちじゃ、ない……。


「…………イヤ、です。そんなの」


 そう口にしていました。


 私は、あまりにも……惨めでした。

 だってハロルド様のその提案は、もう私には興味がないのだと。そう言ったのと同じ事でした。


 今あるのは学生時代の、友人としての情け。それだけで。


(彼の気持ちは……もう、私には、ない)


 崩れ落ちそうになる身体。

 溢れそうになる涙を……必死に堪えました。



(どうして。どうして、こうなったんでしょう。だって、あの頃は……あの頃は)


 王宮の部屋の一室があまりにも暗く。

 私達は、二度と元の関係には戻れない事を感じるばかりでした。



「…………ひとまず、レント男爵令嬢の住む場所については用意しましょう。まず殿下と話をします。その上で……後日、進退を決めるべきかと。ゼンクとの話は飛び過ぎかと」

「あ、ああ。そうだな。すまない。前々から考えていたから、つい」

「…………」


(以前から考えていた。私をゼンク様に押し付ける、事を)


 どれだけ前から彼の気持ちは冷めてしまっていたのか。


 抜け殻のようになった私は、クロード様に連れられて、狭い部屋に押し込められました。


 曲がりなりにもハロルド様の、王子殿下の……寵愛がある女性だと。

 そういう理由で、王宮の部屋を暫定的に与えられたのです。


「レント男爵令嬢。あえて言いますが……」

「……なんでしょうか、クロード様」


「このような部屋ではありませんが。こうやって部屋に押し込められ、他の男との接触を断つか、或いは今のように監視のある中。そうして過ごしながら……ハロルド殿下の訪れをひたすらに待つ。そういう立場が……この国の『愛妾』です」

「っ……!」


 そんな。


「『妃』の位を持つ事になる『側妃』様には職務と権限がございます。正妃の補佐をするような政務にも携わり、社交界にも顔を出す事があるでしょう。『愛妾』も社交界には顔を出せます。出せますが……」

「な……に?」


 出せる、けど?


「『愛妾』という立場は、王の寵愛あってこその立場です。妃とは違うけれど、王には愛されている。そういう立場の者が囲われるのです。そうであれば社交界でも貴族達は、貴方の事を無下には扱わないでしょう。だって貴方に聞かせる言葉は、やはり王に届く事になるのですから」

「…………」


「ですが。王に愛されない『愛妾』に……救いがあるとは思えません。閉じ込められ、外にも出ていけず、ひたすらに王の訪れを待つ日々。愛がなければ、その訪れすらも遠く、滅多にない事になるでしょう。社交界に出ていっても、王に愛されていない愛妾など嘲笑の的になりこそすれ、華やかなものなど何もない。苦痛しか感じないと思われます」


「……あ、あ……ああ……」


 そんな。そんなの。そんなのってない。

 だって、そんなの。私が居る意味は、なに? 生きている意味は?


「そ、側妃、は? 側妃になったら……?」

「残念ながら貴方は側妃にはなれません」

「なぜ!? 足りない所があるなら私、頑張るから……!」


「…………今からですか?」

「えっ」


「今から頑張るのでしょうか?」

「そ、そう……じゃ。いけない、の?」


「……学園の卒業時の成績。レント男爵令嬢は、せいぜい平均的なものでした。たしかに頑張った形跡はあります。貴方は努力したのでしょう。地頭だって悪くない筈」

「な、なら!」


「ですが今からなのですか? 今から妃教育を詰め込んで。貴方が物になるのを待って。側妃に迎えて。そこまでする理由は?」

「え? え、だから」

「……落ち着いて。考えて下さい、レント男爵令嬢」


 クロード様は、いつになく真剣に。

 それでいて私を哀れむように。語り掛けてきました。


「貴方がこれから頑張って、頑張って『側妃』になって。そうして? 貴方は政務に関わりたくて『側妃』という役職を得るのですか? それが貴方の目的ならいい。だが」


 私の目的? 目的は、ハロルド様のお傍に……。


「仕事をするからと言って、殿下が貴方を愛するとは限りません。分かりますか? もしも、今。そして未来で。ハロルド殿下が貴方を愛しているというのなら……それは『愛妾』で構わないのではないですか? 厳しい妃教育など乗り越えずとも」

「…………」


「ですが『今の貴方は』『愛妾では暗い未来しか待っていない』と判断した。だから側妃になりたいと願った。……つまり貴方は『既にハロルド殿下には愛されていない』と認めています」

「っ!!」


 それは。それは、でも。


「側妃の座を努力で勝ち取った先に、貴方は何を得るのですか? ただ政務を公的にこなす立場。それだけ……では? 貴方は、それが欲しいと願った人間でしょうか」

「あっ……」


 私は、部屋の中で力が抜けて、崩れ落ちた。


 ……クロード様は哀れむように私を見下ろしたまま。



 私は、ハロルド様の愛を失ってしまった。

 なら、もう。『愛妾』も『側妃』もまるで、まるで意味がなくて。


「……レント男爵が王立学園に通える期間が1年にも満たないのに、強引に庶子の貴方を学園に放り込んだのは同情に値すると思っています。その状況で華々しい功績を上げられる人間などそうはいない。

 それでも貴方は、かつては(・・・・)ハロルド殿下の寵愛を得ていた。

 まるで無意味であったワケではありません。……現にこうして我々が目を掛けている。そうでしょう?」


「…………」


 私はレント家に帰る事なく。

 つまり、望まない政略結婚をする事なく。


 学園の寮を出た後も、こうして過ごせています。

 それは何よりもハロルド様達との縁があったからで……。


「ハロルド殿下から聞きたくはなかったでしょうが……。『部下』の婚姻を世話するのも、上に立つ者のすべき事の一つなのです。この場合は、貴方というよりはゼンクの世話ですね。彼にもまだ婚約者が居ませんから」

「……そう、なのですか?」


「ええ。王子の側近、近衛騎士となったゼンクは……まぁ、王子と恋仲であった貴方からすれば劣って見えるかもしれませんが。相応に『上』の男だと思いますよ?」


「…………」


 そんな事を……言われても。だって私は。


「ゼンクは、何故か今まで婚約者を決める事を渋っていてね。だからこそハロルド殿下から、彼の婚約者を推薦する、という……まぁ、儀式めいたやり取りがあれば。彼とその婚約者は『王子が推薦した』という箔がつきます。貴族達の間でも祝福される事でしょう。学生時代の出来事も、ゼンクが相手なら……まぁ、王の友人達の学生時の話だから、という程度の美談にすり替えられなくもない。少なくとも『王子に捨てられた女』として惨めな立場になるよりはマシでしょう」


「……、……それは」


「はい」

「ハロルド様は……、あれでも私の立場を、思いやってくださっている、と。そういう事、でしょうか……」

「そうです。我々も、貴方も、『貴族』ですから。政略結婚のひとつ、という事になります」


 政略、結婚。


 あれ程に忌避してきた、もの。



「愛妾のように、ハロルド殿下と男女の仲を深める機会は、もうないかもしれません。しかし、ゼンクの妻ならば……遠からぬ場所から殿下の姿を見続ける事も出来るでしょう。……その内に夫となった彼との関係も、深くなっていくかもしれません。政略結婚からだって愛は生まれるものですから」


「…………」


「殿下の情が尽きたワケでもないので。まだしばらくはレント男爵令嬢を囲う事は出来るでしょう。大きな問題を起こさなければ、ですが。……殿下の婚約者であるソフィア様には、けして無礼を働かないように。彼女は未来の王妃になる方ですから。事によっては死罪も免れません」


 そんな事……。しない。私は。


「言い方を選ばずに言えば。……『マシな』選択肢を選ぶよう、考えて下さい。貴方の人生だ。すべてを諦めてレント男爵の決断に身を委ねるのもいい。問題を起こさず、政略の流れに乗って。分相応の立場で頑張っていく。そういう人生を……貴方は思い描けますか?

 マリーア・レント男爵令嬢。……貴方は、けっして。

 王妃という華やかな立場が恋しかったワケでも。

 王の妻という身分が欲しかったワケでも、ないでしょう?」



 私が、私が求めたもの。

 憧れた姿。


 それは『王妃』になる姿? 貴族になった私。


 目指すべき姿があった。理想の姿があった。

 それは、たしかに王の妻だったのかもしれない。


 ……でも私が欲したのは……愛だった。


 それだけだった。


 身分が欲しかったんじゃない。

 彼が欲しかった。


 でも……もう、その愛は……なくなっていた。



「──貴方は、失恋(・・)しました。それだけの話です。後は貴族の一人として。レント男爵令嬢として。今ある選択肢から……人生を選択して下さい。まだ私達が手を差し伸べられる内に、ね」


 そう言い残してクロード様は去っていきました。



「……うっ……うぅ」


 私は、与えられた部屋で一人。泣き続けます。


 もう、二度とハロルド様が私を慰めてくれる事はないのだと、突き付けられました。



 泣いて、泣いて、泣いて。


(ハロルド様、ハロルド様……)


 抜け殻になるまで泣き続けて、まだ甘えて。


 何日も、何日も。



 ……学生時代の縁を頼り、こうして王宮で部屋を与えていただいて。

 その事に感謝して。


 そうして。


 改めて、彼等と『未来』について相談させて……いただきました。



 ゼンク様の婚約者にするには様子見という扱いで。

 王宮を出て、王都に住む場所を与えていただきました。


 ……これだって破格の扱いなんです。ハロルド様の『友人』だから。


 ハロルド様達の伝手を頼り、また……、騎士様の妻となるのに必要な勉強をさせて頂きました。

 王立学園を3年間、通えなかった分。

 そうでいながら成績を中位までは上げられた事を考え、王族の声もあって猶予をいただいたんです。


 学園を卒業してから1年経ち、2年経ち。

 どこかへ遠く遠征に出ていたハロルド様達が、王都へと帰ってきました。



「……マリーア。改めて。俺の妻になってくれるだろうか」

「ゼンク様……」


 いつか学生時代の彼に告白された事がありました。

 あの時は、断ったのに。


 今の私は、ほとんど彼に縋るような形で生きている。


「……はい。お受けします。私の方からお願いします。どうか、私を貴方の妻にしてください」


 私は、ゼンク様の求婚を受けました。

 それを見ていた彼等の知人や騎士達が祝福の拍手を送ってくれます。


 『良かったな』『学生時代からの恋がようやく叶ったな』と。


 まるで彼を主人公とした物語みたいに。

 ハッピーエンド、を。……私は迎えました。


 私は。


 ……私は、幸せに……なれるのでしょうか……。


 何か大事な事を見落してしまった人生の中で。

 何を後悔すればいいのかも分からないまま。


 それでも、前へ。前へと。歩み続けます。


 ……キラリ、と。目の端に映った『鏡』が怪しく光りました──




書くんだけど。

シャーロット視点を書かない方が、美学か……?

と思ったり。

作品としての完成度的に言うと蛇足かな……?

とか。

まぁ、書くんですけど。


その日のライブ感で書かれる群像劇。

現時点で作者にすらシャーロットの思惑が分からない──!

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― 新着の感想 ―
[一言] 2周目です!読み直してます。 やっぱりシャーロットとは、器が違いすぎる。 ハロルドのパートナーということは王妃になる、それはどういうことかということを理解してなくて、ただただ好きだからって。…
[良い点] 鏡の思惑とは?シャーの使い魔か?
[一言] ハロルドはホント生きてる価値ねーな
2023/08/21 12:15 退会済み
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