非日常の始まりー2
殆ど何も分かっていない状態だが、判明した事も幾つかある。
『覇滅』を発現した事で分かったのだが、ル・リエーは色々と可笑しい、数えきれないほど存在する怪しい噂、そこそこの頻度で失踪者や死者が出でいるにも関わらず誰も気にしない状況、古本屋や古道具屋に売っている冒涜的な品物の数々。
今までは異常な程に気にならなかったが、気付いた時は背筋に冷や汗が流れ、寒気が止まらなかった。
とは言え個人的には古道具屋は助かってるのだ。
一部の魔術や儀式に必要な生贄や様々な劇物を極めて安く買えるのはあそこくらいだろう。
魔術の生贄には象サイズの動物の血とか必要だからあそこ以外じゃ基本手に入らないのだ。
それに魔術的な処理をされたガラス瓶に封じられた「ルリム・シャイコースの血」とか「アフーム・ザーの凍れる灰色の火片」とか「マグヌム・インノミナンドゥムの小霧」は切り札兼護身用具として重宝してるのだ。
使い方を誤れば吾輩が死ぬけど。
因みに「ルリム・シャイコースの血」は接触した存在に一般人なら即死または瀕死になる様な損害を与える。
「アフーム・ザーの凍れる灰色の火片」は接触者に瞬間的に極めて甚大な凍傷をもたらす。
「マグヌム・インノミナンドゥムの小霧」は霧に巻き込んだ生物の触覚以外の全ての感覚を消失させる。
「…【星の吸血鬼の召喚/従属】」
「クスクス…クスクス…」
吾輩が呪文を唱えてから少しして目の前に何も居ないにも関わらず笑い声が響いた。
クスクスと笑うこいつは”不可視の吸血鬼”或いは”星の精”と呼ばれる存在…星の吸血鬼だ。
因みに吸血鬼という名前だが吸血した時だけ浮き上がってくるこいつの見た目は”吸血器官の付いた無数の触手を持つ巨大なゼリー状の塊”一言で言うなら限りなく気持ち悪く卑猥にしたスライムだ。
「…部屋にいる全ての虫を食い殺しといてぇー…」
正直魔術が使える事になって一番嬉しいのがコレ。虫嫌いなんだよ。
「クスクス…」
取り敢えず学園に行くか。別に休みじゃないんだよね、今日。
いつも通り学園は賑やかだった。
クラスには様々な種族・人種がいる。
因みに一昔前までは居ないと思われていたが、異能持ちの増加に伴い、エルフやドワーフなども社会に進出して来たのだ。
余談だが吸血鬼も存在するが星の吸血鬼とは無関係な種族だ。
主人公達のラブコメを傍目に見ながら授業を終わらせ、吾輩の一人称をイメチェンとか言って揶揄ってくる知り合いを適当に捌きながら教室を出る。
廊下に貼ってある新聞部の記事は怪しい噂を調べるのにかなり役立った。
「…下水道に現れる怪しい影…ねぇ…」
いくか、下水道。